近年増加している家族葬とは、家族や親族をはじめとした限られた参列者のみで行う小規模の葬儀です。一般葬とは違う家族葬の特徴や、一般葬と比較して安い費用相場とその内訳などを解説します。本記事では家族葬とはなにかを理解し、検討すべきポイントを抑えるために、メリットやデメリットも合わせて家族葬の基本を紹介します。
家族葬は家族や親族、故人と親しい人に限って執り行われる新たな葬儀の形です。小規模の葬儀であり遺族の希望を反映しやすく、内容や費用などの自由度が高いことが特徴です。少子高齢化や経済的な理由から、現代の日本に適した葬儀の形といえます。
本記事では、一般葬との違いや費用相場、参列者の範囲など、家族葬ならではの特徴をメリットや葬儀の流れと合わせて解説します。
家族葬とは?
家族葬とは、家族や親族を中心とした小規模で行われる葬儀です。家族葬には明確な定義がなく、親しい友人や親しい知人など、故人が生前に深いかかわりを持っていた方を含めた葬儀も家族葬に含まれます。
比較的新しい葬儀の形であり、一般的には1名から30名程度の参列人数で行われるため、故人との別れの時間を静かに落ち着いて過ごせるのが特徴です。
密葬との違い
密葬は比較的古くから行われている葬儀の1つです。家族や親族、親しい友人だけで行われる点は家族葬と同様ですが、密葬は後日改めて弔問客を招いて本葬や告別式、お別れ会を行うことを前提としている点で異なります。
家族や親族だけの時間を過ごしたいが、故人の交流関係が広く、大勢に知らせなければならないという事情がある場合に行われることが多いです。
一般葬と家族葬・密葬の共通点と相違点
一般的に、家族葬・密葬の流れは一般葬と共通しています。
訃報を知らせる範囲においては相違点があり、一般葬の場合は親族や知人、会社関係など故人と交流のあった人には必ず訃報を伝えますが、家族葬・密葬の場合はごく一部の人に限って訃報を伝えます。家族葬・密葬で訃報を伝える際には、他者への口外を控えるよう合わせて伝えることが重要です。
家族葬が普及した背景
以前は身内だけで行う本葬がない葬儀も密葬と呼んでいましたが、密葬の案内を受けた人が本葬の有無を判断しづらいことから、呼び方を分けて本葬のない葬儀が家族葬と呼ばれるようになりました。
家族葬が普及した背景として、就職で故郷を離れる人が増えて葬儀に大勢の人を呼ぶことが少なくなっていることが挙げられます。少子高齢化の影響もあり、兄弟の少ない家庭は葬儀にかかる一人あたりの負担が大きくなるため、経済的な理由から盛大には行わない選択も増えています。これらの事情から、現代に合った家族葬が普及したといえます。
家族葬の費用相場
家族葬にかかる費用は人数・場所・宗教形式などによって変動します。家族葬にかかる費用の全国平均は、火葬料金込みで約110万円とされています。地域によって相場が異なる可能性もあるため、自身の地域の相場も把握しておくことをおすすめします。また家族葬を行った人のうち70.8%が100万円未満で葬儀を行っています。
小さなお葬式-【第1回調査】家族葬にかかる費用相場(全国編)
家族葬の料金の内訳は以下の通りです。
葬儀一式 (祭壇費・式場利用費・棺・返礼品・供花など) | 祭壇レンタル:5万円~50万円 式場利用費:無料~20万円 棺:3万円~10万円 返礼品:数千円 供花:1万円程度 |
寺院への支払い (読経量・戒名料・御膳料・お車代など) ※無宗派の葬儀の場合は料金がかからない | 読経量:約25万円 戒名料:約15万円 御膳料:約1万円 お車代:僧侶に支払う交通費 |
会食の料金 (飲食接待費) | 通夜振る舞い:2,000円程度(1人当たり) 告別式後の精進落とし:4,000円~8,000円(1人当たり) |
家族葬の料金の内訳
自身の選択によって家族葬を豪華にすることも、費用を抑えることも可能です。費用を抑えたい場合は、会食が必要かどうかや不要なサービスがないかどうかを検討しましょう。自治体によっては葬儀のための給付金・補助金制度が設けられている場合もあります。詳しい料金の詳細は、事前に葬儀社の資料を確認することが重要です。
家族葬の4つのメリット
家族葬を選択した場合のメリットを4つ紹介します。
準備や気遣いに追われずに葬儀が行える
大勢を招いて葬儀を行う際には、参列する方に対する準備や気遣いで、遺族の精神的な負担になってしまう可能性があります。少人数の家族葬であれば、家族や親族など限られた人達だけで故人のお見送りができるため、より充実した時間を過ごしたいという希望を叶えられます。
希望に沿った葬儀ができる
家族葬は家族や親族をはじめ、故人と親しい人など限られた人数で行われるため、自由な葬儀を実現できます。近年では、花祭壇や音楽葬など故人との思い出があるものなどを用いた自由葬を行う場合も増えてきています。世間の目を気にせず、家族の思いを尊重できる点も特徴です。
費用を抑えられる
家族葬は、人数や場所、宗教形式等によって費用が変動します。参列者が増えるほど費用がかさみますが、いただく香典の額も変動するため、バランスをとることがポイントです。できるだけ費用を抑えたい場合には料金やプランの内訳を確認し、必要なものと不要なものの判断や、こだわりたいものと費用を抑えられるものの判断をするために、じっくり検討しておくことをおすすめします。
返礼品の自由度が高い
葬儀では参列者の人数に合わせて返礼品を送る人数も変動します。参列者が少なければ返礼品の数も少なくなるため、返礼品の自由度が高くなります。一般葬の場合は、大勢の参列者に対しての返礼品を葬儀社に依頼することが多く自由度は低くなります。
家族葬の3つのデメリット
家族葬を選択するにあたって、デメリットも把握しておきましょう。
一般層と比べて受け取る香典が少ない
家族葬は一般葬に比べて参列者の数が少なくなります。参列者の人数によって受け取る香典も変動するため、参列者が少なければあまり香典を受け取ることができません。香典を葬儀の費用に充てたとしても家族の費用負担が大きくなってしまう可能性があるため、葬儀の内容を決める際に考慮しておくことが重要です。
葬儀後に自宅に弔問に訪れる人が多くなる
家族葬では、家族や親族をはじめ、故人と親しい関係にあった人のみが参列します。それ以外の人が後日、自宅まで弔問に訪れることも一般葬に比べて多くなる可能性があり、対応に追われてしまいます。葬儀の連絡とともに、弔問を辞退するということを伝えるのも1つの手段です。
親族から反対される可能性がある
家族葬は近年増加してきた葬儀の形であるため、特に高齢の方や伝統を重視する方にとって、まだ馴染みがないといえます。家族葬を執り行うことを反対された場合には、家族葬の詳細やメリットなどを十分に説明しましょう。互いの意向を尊重し、家族葬か一般葬かを考えることが大切です。
家族葬の流れ
家族葬を執り行うことを決めた場合、どのような流れで準備や葬儀を進めていくのかを把握しましょう。基本的な流れは一般葬と同様です。お通夜を行い、翌日に葬儀・告別式と火葬を行います。
1.葬儀社への依頼
ご家族が亡くなったあとに葬儀社に取引・安置を依頼する必要があります。葬儀社には「葬儀専門業者」「JA・生協などの協同組合系」「冠婚葬祭互助会」「葬儀仲介サービス業者」の4種類があります。依頼先の葬儀社を探すときには、予算や参列者の人数、葬儀を執り行う場所など、葬儀の内容を想定しておくことも重要です。
2.ご安置
ご安置とは、亡くなってから葬儀を執り行うまでの期間に、自宅や葬儀社で遺体を保管することをいいます。依頼する葬儀社が決まったら、葬儀社が専門車で遺体の運搬・安置を行います。
3.葬儀社との打ち合わせ
葬儀社と葬儀内容の打ち合わせを行います。喪主側は一般的に葬儀に対する深い知識がなく、家族を亡くした直後で精神的な負担を感じている状況です。だからこそ、どのような葬儀にしたいのか事前に要望を明確にしておくことが大切です。打ち合わせでは葬儀の日程や場所をはじめ、喪主の担当や式場のレイアウト、宗教者の手配などを決めます。
4.納棺
納棺とはお通夜の前に故人を棺に納める儀式で、家族や親族、親しい人のみの立ち合いのもと行われます。副葬品を入れることも多いですが、火葬の際に燃え残るものは禁止とされています。写真やたばこ、お菓子、花などが一般的です。その他副葬品として入れたいものが禁止されているかどうかは、葬儀社や火葬場に事前に確認しておきましょう。
5.お通夜
お通夜では、読経のあと弔辞や弔電が紹介された後に焼香に移ります。供花や弔電などのお礼を伝えられるよう、送り主を確認しておくとよいです。
6.告別式
告別式は最後に別れを告げる場です。喪主から順に焼香を行い、会葬者の焼香が終了すると告別式が閉式されます。
7.出棺・火葬
告別式が閉式したのち、喪主の出棺挨拶を行い火葬場へ出棺します。読経のあと火葬へ移り、火葬後は骨壺に納めます。
家族葬に呼ばなかった人やお知らせをしなかった人には、落ち着いてから訃報を伝えましょう。
家族葬の式場の選び方
家族葬の式場を選ぶ際に必ず重視するべき点は安置設備です。どのような環境や形でご安置されるのか、面会についても併せて確認しましょう。葬儀社によって家族葬の内容が異なります。どのような葬儀にしたいのかを考え、想いに沿った葬儀を実現させられる葬儀社を選ぶことが重要です。
遺族の想いを叶える家族葬を検討してみませんか
家族葬は、近年増加傾向にある少人数で行う葬儀です。精神面や費用面におけるメリットや、葬儀の形の自由度の高さなど、家族葬は遺族の希望を反映しやすい葬儀の形といえます。
ゆっくり静かに故人を見送りたい方やなるべく費用を抑えたいと考える方は、家族葬を検討してみてください。詳しい価格や内容などを知りたい方やご相談をしたい方は、こちらも合わせてご覧ください。