葬儀後は死亡届や相続など多くの手続きが必要です。この記事では時期ごとの手続きと流れをわかりやすく解説します。何から始めればよいか悩んでいる遺族の方に役立つ内容です。
葬儀が終わったあとも、遺族にはさまざまな手続きが待っています。年金や相続に関する届け出など、期限のあるものも多く、放置するとトラブルや金銭的な不利益が生じるおそれがあります。
ただでさえ心身ともに疲れている中で、複雑な手続きに直面すると戸惑う方も多いのではないでしょうか。何から手をつければよいのかわからず、不安を感じている方は少なくありません。
本記事では、葬儀後に必要となる手続きを時期ごとにわかりやすく整理し、進め方のポイントを解説します。やるべきことをひとつずつ確実に進めたいと考えている方、手続きに不安を抱えている遺族の方に向けた内容です。
葬儀後にやらなければならない手続きは多い
葬儀が終わると、気持ちの整理をつける間もなく、さまざまな手続きを進めなければなりません。手続きには期限があるものも多く、後回しにするとトラブルになるおそれがあります。スムーズに対応するためには、いつ・何を・どの順番で進めればよいのか、あらかじめ全体の流れを把握しておくことが大切です。
まずは期限が短いものから優先的に着手する必要があります。たとえば「死亡届」は死亡後7日以内の提出が法律で定められており、これを提出しないと火葬や埋葬もできません。その後も、年金や健康保険、税金、相続など、時期に応じた手続きが次々と控えています。
人によっては、生命保険の請求や住宅ローンの手続き、勤務先での退職手続きが必要になることもあります。こうした手続きはそれぞれに窓口や必要書類が異なるため、ひとつずつ丁寧に確認して進めていくことが大切です。
また、公共料金や携帯電話、各種契約の名義変更や解約など、日常生活に関わる手続きも忘れずに対応しましょう。手続きの数が多く負担に感じるかもしれませんが、落ち着いて順を追えば着実に終えられます。必要に応じて家族や専門家の力を借りるのもよい方法です。
【直後にやること】死亡届や火葬許可証などの役所手続き
葬儀後の手続きのなかでも、特に早く対応しなければならないのが市区町村役所での各種手続きです。これらは法律で提出期限が決められているものや、火葬・埋葬に必要な許可証の取得に関わる手続きが含まれます。
この段階では、主に「死亡届の提出」「健康保険証の返却」などをします。いずれも葬儀と並行して準備が必要になることもあるため、事前に家族で役割分担しておくとスムーズです。
死亡届の提出と火葬許可証の取得
死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります。提出先は死亡者の本籍地・死亡地・届出人の住所地のいずれかの市区町村役所です。提出できるのは親族や同居人など一定の関係者に限られます。
通常は、医師が作成する死亡診断書と一体になっている用紙を使用します。提出が受理されると、火葬や埋葬のために必要な「火葬許可証(埋火葬許可証)」が発行されます。この書類がなければ火葬はできないため、必ず忘れずに受け取るようにしましょう。
世帯主変更届
故人が世帯主であった場合には、新たに世帯主を指定する「世帯主変更届」の提出が必要です。提出期限は14日以内とされています。これをしないと、住民票や保険などの手続きにも支障が出る可能性があります。
【早めにやること】年金や健康保険、税金関係の手続き
葬儀後の慌ただしさが落ち着いたら、できるだけ早く着手したいのが年金や保険、税金に関する手続きです。これらは期限があるものが多く、放置しておくと過払いの発生や追徴課税などのトラブルにつながる可能性があります。
国民年金・厚生年金の手続き
故人が国民年金や厚生年金に加入していた場合、その資格喪失の手続きが必要です。受給中だった場合は、死亡後に年金が支給されることのないよう、速やかに「年金受給権者死亡届(報告書)」を提出します。
また、故人に未支給年金がある場合は、遺族による「未支給年金の請求」ができます。請求できるのは原則として配偶者や生計をともにしていた親族です。提出先は最寄りの年金事務所で、死亡の事実を証明する書類や本人確認書類などが必要となります。
健康保険の資格喪失手続き
健康保険についても、故人が会社員であれば勤務先を通じて社会保険の資格喪失手続きをします。国民健康保険の場合は、市区町村役所で手続きをします。
手続きとあわせて、葬祭費や埋葬料といった給付金を申請できる場合があります。給付には申請期限があるため、忘れずに確認しておきましょう。
介護保険の資格喪失届
故人が介護保険の被保険者であった場合は、「介護保険資格喪失届」の提出が必要です。提出先は故人の住所を管轄する市区町村役場で、期限は死亡日から14日以内とされています。
介護保険被保険者証も一緒に返却します。高額介護サービス費などの還付を受けられるケースもあるため、窓口であわせて確認すると安心です。届出を怠ると、故人宛てに介護保険料の請求が届いてしまうこともあるため注意が必要です。
準確定申告と所得税の手続き
故人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得については、相続人が代わって確定申告する「準確定申告」が必要です。提出期限は、相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。
対象となるのは、事業所得や不動産収入などがある場合、2,000万円を超える給与がある場合、複数企業から給与がある場合などです。税務署に提出する書類は、通常の確定申告とほぼ同じですが、相続人全員の署名・押印が必要になります。申告が遅れると延滞税が発生することもあるため、早めに準備を進めることが大切です。
【落ち着いてからやること】遺産や相続に関する手続き
役所や保険、税金関係の手続きが一段落したら、次に進めるのが遺産や相続に関する手続きです。これらは期限があるものも含まれますが、短期間で急ぐ必要はなく、内容も複雑なため、しっかり確認しながら丁寧に進めましょう。
遺言書があるかどうかの確認にはじまり、相続人の確定、遺産の分け方の話し合い、名義変更や相続税の申告など、流れに沿って一つずつ対応していく必要があります。状況に応じて専門家のサポートを受けると安心です。
遺言書の有無の確認と家庭裁判所の検認
最初に確認すべきは、遺言書があるかどうかです。公正証書遺言であれば、公証役場に記録が残っているため確認が容易です。一方、自筆証書遺言が見つかった場合は、内容を勝手に開封せず、家庭裁判所で「検認」の手続きを経る必要があります。
検認は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるための手続きです。遺言の有効性を判断するものではありませんが、これをしないと相続手続きを進められません。なお、公正証書遺言に検認は不要です。
相続人の確認と遺産分割協議
遺言書がない、あるいは遺言書に記載のない財産については、法定相続人による「遺産分割協議」が必要です。その前に、誰が相続人となるのかを戸籍などから確認し、法定相続人を確定させます。
相続人全員の同意がないと協議は成立しないため、相続人同士で連絡を取り合い、誠実に話し合いを進めることが大切です。協議の内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、全員の署名と押印をします。書類は不動産や預貯金の名義変更などでも必要になります。
相続税の申告・納付
相続税がかかる場合は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納付を済ませる必要があります。基礎控除額を超える遺産がある場合にのみ課税対象となりますが、不動産評価や特例の適用などが複雑なため、税理士に相談する人も多く見られます。
申告先は税務署です。申告漏れがあると、後に追徴課税が発生する可能性があるため、遺産の全体像を正確に把握しておくことが重要です。
不動産や預貯金の名義変更
相続した不動産や預貯金の名義は、相続から3年以内に相続登記により変更しなければなりません。
不動産の名義変更(相続登記)は法務局で行い、必要書類には遺産分割協議書や戸籍謄本、固定資産評価証明書などがあります。預貯金については、金融機関ごとに異なる手続きがあるため、事前に確認しておくとスムーズです。いずれも手続きには時間がかかるため、余裕をもって進めていきましょう。
【忘れがちな手続き】公共料金・クレジット・ネット契約などの名義変更
葬儀後の手続きには、役所や税務署への届け出のほかに、日常生活で利用していた契約サービスに関する変更や解約も含まれます。これらは忘れられがちですが、放置すると無駄な請求が続いたり、名義が故人のままでトラブルになったりすることがあります。
ライフラインや通信契約、各種サービスの契約など、該当するものを一つずつ確認し、必要に応じて手続きを進めていきましょう。
電気・ガス・水道などのライフラインの変更
故人が一人暮らしだった場合は、電気・ガス・水道の契約を解約するか、継続して使う人の名義に変更する必要があります。同居していた場合でも、契約者が故人のままであることが多いため、名義変更の手続きをしましょう。
それぞれの事業者に連絡し、死亡の事実と名義変更の希望を伝えると、必要書類や手続き方法を案内してもらえます。
クレジットカード・携帯電話・インターネットの解約や名義変更
クレジットカードは故人名義のまま放置すると、年会費や引き落としが継続されることがあります。カード会社に連絡し、死亡による解約の手続きをしましょう。カードや利用明細が見つからない場合でも、氏名や生年月日などから確認してもらえることがあります。
携帯電話やインターネット回線も同様に解約手続きをします。これらの契約はオンラインや店舗で手続きできることが多く、必要書類は各社異なります。
サブスクリプション・各種ポイント・会員登録などの整理
動画配信サービスや新聞、クラウドサービスなど、サブスクリプション契約を結んでいた場合は、それぞれのサービスで解約手続きをする必要があります。放っておくと自動で引き落としが継続されるため、早めに対応しましょう。
また、ポイントカードや会員制サービスに登録していた場合も、退会やポイントの相続手続きが可能なことがあります。遺族が使える制度が用意されているケースもあるため、各サービスの公式サイトやサポート窓口で確認するのがおすすめです。必要に応じてIDやパスワードを確認し、アクセスできる状態にしておきましょう。
【必要に応じて】保険・ローン・勤務先関連の手続き
故人が生命保険に加入していたり、住宅ローンを組んでいたり、亡くなる時点で会社に勤めていた場合は、それぞれに応じた手続きが必要となります。
保険金の請求やローンの精算、会社への退職手続きなどは、それぞれ窓口や必要書類が異なるため、早めに確認しながら一つずつ進めることが大切です。
生命保険や死亡保険金の請求
故人が生命保険に加入していた場合、保険金を受け取るには「死亡保険金請求」の手続きが必要です。保険証券や契約者の情報をもとに、保険会社に連絡して請求の流れを確認します。
多くの保険会社では、請求の際に死亡診断書や戸籍謄本、保険証券、受取人の本人確認書類などの提出が求められます。請求には一定の期限があり、通常は死亡から3年以内とされていますが、契約内容によって異なることもあるため、早めの確認が重要です。
住宅ローンの名義変更や団信手続き
故人が住宅ローンを契約していた場合、名義変更やローンの清算が必要になります。契約内容によっては、団体信用生命保険(団信)が適用され、残りのローンが保険で完済されるケースもあります。
団信の適用には、金融機関への申請とともに、所定の書類の提出が必要です。ローンの残債や名義変更の要否については、金融機関に早めに相談しておくと安心です。
勤務先への退職手続きや未払い給与の受け取り
故人が亡くなった時点で会社に勤務していた場合、退職手続きとあわせて、未払いの給与や賞与、退職金の受け取り手続きが必要になります。まずは勤務先に連絡し、必要な書類や手続きの流れを確認しましょう。
会社によっては、死亡退職に伴う弔慰金や死亡退職金などが支給されることもあります。これらの受け取りには、相続人であることを証明する戸籍や印鑑証明が求められることが多いため、準備しておくとスムーズです。
葬儀後の手続きをスムーズに進めるために大切なこと
葬儀が終わった後も、遺族には多くの手続きが待っています。世帯主の名義変更といった期限の短いものから、相続のような時間をかけて進めるものまで、内容は多岐にわたります。いずれも大切な手続きであり、放置してしまうとトラブルや金銭的な不利益につながりかねません。
手続きをスムーズに進めるためには、まず全体の流れを把握することが大切です。何をいつまでにする必要があるのかを把握し、優先順位をつけて取り組むことで、精神的な負担を軽くできます。また、書類の準備や提出先の確認など、一つひとつ丁寧に対応することも忘れないようにしましょう。
中には、相続や税金、保険など専門的な知識が求められる場面もあります。そうした場合には、税理士や司法書士、行政書士などの専門家に相談するのも有効です。無理に一人で抱え込まず、家族や信頼できる人の手を借りながら進めていくことが、負担を軽減する大きな助けになります。
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