葬儀費用の補助金は、葬儀にかかる費用の一部を公的制度で支援する仕組みです。本記事では補助金制度の種類や申請方法、注意点をわかりやすく解説します。葬儀費用の負担を軽くしたい方や、申請の流れを知りたい方におすすめの記事です。
葬儀費用の補助金とは、葬儀にかかる費用の一部を公的に支援してもらえる制度です。国民健康保険や健康保険(社会保険)、生活保護など、加入している保険や状況によって受けられる制度が異なります。
葬儀の準備や手続きは、心身ともに負担が大きいものです。少しでも費用の不安を軽くしたいと考える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、葬儀費用を補助してくれる5つの制度と申請方法、注意点までをわかりやすく解説します。補助金を上手に活用して、経済的にも安心して故人を見送りたい方は、ぜひ参考にしてください。
【状況別】対象となる葬儀費用の補助金制度
葬儀費用を補助する制度は、大きく5つに分けられます。どの制度を利用できるかは、故人や遺族が加入していた保険の種類や生活状況によって異なります。条件を確認し、自分がどの制度に該当するのかを把握しておくことが大切です。
| 制度名 | 対象となる人 | 補助金の目安金額 |
| 故人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合、遺族が受け取る | 3万〜7万円 | |
| 故人が社会保険の被保険者であった場合、遺族が受け取る | 一律5万円 | |
| 故人が社会保険の加入者で、埋葬料を受け取る遺族がおらず、家主などが葬儀を手配する場合に受け取る | 上限を5万円とした実費 | |
| 社会保険に加入していた人(被保険者)の家族(被扶養者)が亡くなった場合、被保険者が受け取る | 一律5万円 | |
| 故人が生活保護を受けていて、かつ遺族も困窮している場合、または遺族以外の人(家主など)が葬儀を手配する場合 | 最大約20万円前後(故人が12歳未満の場合は最大約15万円前後)の実費 |
5つの葬儀費用の補助金
葬祭扶助を除く補助金の金額はおおむね3万~7万円程度です。葬祭扶助は最大で20万円前後まで実費が葬儀社に補助され、施主は費用負担なく、最低限の葬儀ができます。
5つの葬儀費用の補助金制度
葬儀費用を補助する制度には、主に5つの種類があります。加入している保険や故人の状況によって申請できる制度が異なるため、自分がどれに該当するのかは、先述の表で確認してください。
ここでは、それぞれの補助金制度の対象者や申請先、支給額の目安を順に解説します。自分が当てはまるものを確認してみましょう。
葬祭費
| 項目 | 内容 |
| 補助金の対象者 | 故人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合 |
| 申請者 | 故人と生計を同じくしていた遺族(喪主など) |
| 申請先 | 故人が住民登録していた市区町村の役所(保険年金課など) |
| 申請方法 | 申請書に必要書類を提出 |
| 支給額 | 3万〜7万円(自治体により異なる) |
| 支給の時期と方法 | 申請から1〜2ヵ月後に指定口座へ振り込み |
| 申請期限 | 葬儀を行った日の翌日から2年以内 |
| 必要書類 | 葬祭費支給申請書 死亡診断書の写し 会葬礼状または葬儀費用の領収書など(葬儀実施者と実施日を確認できる書類) 振込先口座がわかるもの 申請者の身分証明書 など |
葬祭費
葬祭費は、個人が国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入していた場合に対象となる補助金です。具体的には、個人が次のような人だった場合、この補助金の対象となります。
- 個人事業主
- フリーランス
- 無職
- 75歳以上
埋葬料
| 項目 | 内容 |
| 補助金の対象者 | 故人が社会保険(健康保険)の被保険者であった場合 |
| 申請者 | 故人と生計を同じくしていた遺族(主に配偶者) |
| 申請先 | 故人が加入していた社会保険事務所または健康保険組合 |
| 申請方法 | 指定の申請書に必要書類を添えて保険者(保険事務所や組合)へ提出 |
| 支給額 | 一律5万円 |
| 支給の時期と方法 | 申請から2~3週間程度で申請者の口座へ振り込み |
| 申請期限 | 故人が死亡した日の翌日から2年以内 |
| 必要書類 | 埋葬料(費)支給申請書 事業主による死亡の証明 死亡診断書(または埋葬許可証)の写し 健康保険証 会葬礼状または葬儀費用の領収書など(葬儀実施者と実施日を確認できる書類) 申請者の口座情報・身分証明書 など |
埋葬料
埋葬料は、故人が社会保険に加入していた場合に対象となる補助金です。故人が会社員または公務員だった場合、埋葬料の対象となります。
多くは勤務先の総務担当者を通して手続きを行うため、早めに会社へ連絡して必要書類を確認するとスムーズです。
なお、故人が勤務中や通勤途中に亡くなった場合は労災保険の対象となり、「葬祭料」が支給されるため、埋葬料の対象外となります。
葬祭料
故人が勤務中や通勤途中に亡くなった場合、労災保険の対象となり、埋葬料ではなく葬祭料が支給されます。葬祭料の計算方法は次のとおりです。
【下記どちらかの高い方を支給】
- 給付基礎日額×30日分+315,000円
- 給付基礎日額×60日分
給付基礎日額は次の計算式で求められます。
- 直前3ヵ月の総賃金(ボーナスなどは含まない)/直前3ヵ月の総日数
埋葬費
| 項目 | 内容 |
| 補助金の対象者 | 故人が社会保険(健康保険)の加入者で、埋葬料を受け取る遺族がいない場合に、故人を埋葬した人 |
| 申請者 | 故人を実際に埋葬した人(遺族以外の家主や知人でも可) |
| 申請先 | 故人が加入していた社会保険事務所または健康保険組合 |
| 申請方法 | 指定の申請書に必要書類を添えて提出 |
| 支給額 | 上限5万円の実費支給(葬儀にかかった費用に応じて支給) |
| 支給の時期と方法 | 申請から2~3週間後に申請者の口座へ振り込み |
| 申請期限 | 埋葬した日の翌日から2年以内 |
| 必要書類 | 埋葬料(費)支給申請書 事業主による死亡の証明 死亡診断書(または埋葬許可証)の写し 健康保険証会葬礼状または葬儀費用の領収書など(葬儀実施者と実施日を確認できる書類) 申請者の口座情報・身分証明書 など |
埋葬費
埋葬費は「故人が社会保険の加入者で、埋葬料の対象となるが、埋葬料を受け取るべき人(遺族)」がいない場合に、葬儀を手配した人に支給される補助金です。
遺族がいない場合、故人の葬儀(火葬)は家主や青年後見人、福祉関係者などが手配することになります。埋葬費はこれらの人に支給されます。
家族埋葬料
| 項目 | 内容 |
| 補助金の対象者 | 社会保険(健康保険)に加入していた人(被保険者)の家族(被扶養者)が亡くなった場合 |
| 申請者 | 故人を扶養していた被保険者(主に勤務先の本人) |
| 申請先 | 故人が所属していた社会保険事務所または健康保険組合 |
| 申請方法 | 指定の申請書に必要書類を添えて提出 |
| 支給額 | 一律5万円 |
| 支給の時期と方法 | 申請から2~3週間程度で申請者の口座へ振り込み |
| 申請期限 | 死亡した日の翌日から2年以内 |
| 必要書類 | 埋葬料(費)支給申請書 事業主による死亡の証明 死亡診断書(または埋葬許可証)の写し 健康保険証 会葬礼状または葬儀費用の領収書など(葬儀実施者と実施日を確認できる書類) 申請者の口座情報・身分証明書 など |
家族埋葬料
家族埋葬料は、社会保険に加入している人の扶養家族が亡くなった場合に支給される補助金です。勤務先を通じて申請するのが一般的で、支給額は全国一律で5万円です。葬儀後に行う手続きのため、会社の健康保険担当者に早めに相談しておくとスムーズです。
葬祭扶助
| 項目 | 内容 |
| 補助金の対象者 | 故人が生活保護を受けていて、次のいずれかに当てはまる場合 遺族も生活に困窮している家主など遺族以外が葬儀を手配した |
| 申請者 | 遺族、もしくは葬儀を手配した家主など(葬儀を実施した人) |
| 申請先 | 申請者の住民票がある市区町村の福祉事務所または役所の福祉課 |
| 申請方法 | 葬儀の前に必要書類を提出し、申請 |
| 支給額 | 最大約20万円前後(故人が12歳未満の場合は最大約15万円前後)の実費支給 |
| 支給の時期と方法 | 自治体から葬儀社へ直接支払われる(申請者に現金が渡るわけではない) |
| 申請期限 | 原則として葬儀前に申請(葬儀後の申請は原則として認められません) |
| 必要書類 | 葬祭扶助申請書 死亡診断書の写し 申請者の身分証明書 見積書や請求書など葬儀に関する資料 生活保護変更届 執行人の印鑑 など |
葬祭扶助
葬祭扶助は、経済的に困難な状況にある人が最低限の葬儀を行えるよう支援する制度です。他の補助金とは異なり、原則として葬儀社に直接費用が支払われるため、遺族が現金を受け取る形ではありません。
申請は葬儀前に行う必要があり、葬儀後に申請しても対象外となる場合があります。そのため、生活保護を受けている場合は、葬儀の準備段階で早めに福祉事務所へ相談することが重要です。
なお、葬祭扶助の対象となるのは最低限の葬儀に必要な費用で、たとえば次のようなものです。
- 死亡診断書の作成にかかる費用
- 遺体の運搬費用
- 火葬や埋葬、納骨にかかる費用
- 安置施設の使用料 など
お通夜や葬儀・告別式などの儀式にかかる費用や寺院へのお布施などは対象外であることは覚えておきましょう。
葬儀費用の補助金に関する注意点
葬儀費用の補助金は、申請条件を満たせば経済的負担を軽くできる制度ですが、注意しておくべき点もあります。申請のタイミングや期限、支給の範囲を理解しておかないと、せっかくの制度を利用できないこともあります。ここでは、申請前に知っておきたい3つの注意点を解説します。
補助金を受け取れるのは葬儀後
葬祭費や埋葬料などの補助金は、葬儀を終えてから申請することで支給されます。実際の支給までには1〜2か月ほどかかるため、葬儀費用は一時的に自己負担する必要があります。
なお、葬祭扶助のみ例外で、葬儀の前に申請をしなければなりません。補助金の支給も申請者にではなく、自治体が葬儀社に直接費用を支払う仕組みになっています。
簡単にいえば、施主の代わりに自治体が葬儀社への支払いを済ませてくれる制度です。そのため、葬祭扶助を利用する場合、施主から葬儀社への支払いが発生することは基本的にありません。
補助金には申請期限がある
葬儀費用の補助金は、原則として葬儀を行った日の翌日から2年以内に申請する必要があります(葬祭扶助は葬儀前に申請)。期間を過ぎると権利が消滅し、後から申請しても支給されません。
葬儀後はさまざまな手続きが重なり、申請を後回しにしがちです。うっかり忘れて期限を過ぎると、補助を受けられないままになってしまいます。余裕を持って早めに準備を進め、必要書類を確認しておきましょう。
補助金だけで葬儀費用のすべては賄えない
葬儀費用の補助金は、あくまで一部を補うための制度です。支給額は3万〜7万円前後で、一般的な葬儀費用の全額をまかなうことはできません。
補助金をあてにしすぎると、実際の葬儀費用との差額に戸惑うかもしれません。葬儀社の見積もりを確認し、自己負担分をどう工面するかを事前に考えておきましょう。
葬儀費用の負担を抑える方法
葬儀費用の補助金を利用しても、すべての費用をまかなうのは難しい場合がほとんどです。そのため、家族であらかじめ支払い方法を検討しておくことが大切です。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
故人の預金から支払う
葬儀費用は、故人の預金から支払うことも可能です。ただし、金融機関では死亡届の提出後に口座が凍結されるため、相続人全員の同意を得て早めに引き出す必要があります。生前に本人から、葬儀費用として一部を預かっておくのも一つの方法です。
なお、故人の預金を引き出す際は、ほかの相続人の理解を得ておくことが欠かせません。独断で引き出すと「勝手に使った」と誤解され、相続トラブルに発展するおそれがあります。使途を明確にし、領収書も確実に保管しておきましょう。
生命保険から支払う
生命保険に加入していた場合、死亡保険金を葬儀費用に充てられます。ただし、保険金が支払われるまでには1〜2週間ほどかかることが多く、葬儀社への支払い期日に間に合わないケースもあります。
その場合は、いったん預貯金などから立て替え、後日補填する形が現実的です。早めに保険会社へ連絡し、手続きに必要な書類を確認しておくとスムーズです。
相続財産から葬儀費用を支払う
葬儀費用を相続財産から支払う場合、その金額は相続税の計算で控除対象となります。つまり、支払った葬儀費用分を課税対象から差し引けるため、結果的に税負担を軽減できます。
控除の対象となる項目と、対象とならない項目は次のとおりです。
【控除の対象となる項目】
- 葬儀一式の費用(お通夜・告別式・火葬など)
- 遺体の搬送費用
- 火葬場や霊柩車などの利用費
- 僧侶への読経料や戒名料(お布施) など
【控除の対象とならない項目】
- 香典返しや法要などの返礼費用
- 墓石や仏壇の購入費用
- 初七日・四十九日など葬儀後の法要費用 など
これらを明確に区分して領収書を保管しておくと、相続税の申告時にスムーズに控除を受けられます。
葬儀費用の補助金申請は早めに
葬儀費用の補助金は、申請期限が決まっており、必要書類の準備にも時間がかかります。葬儀後は手続きが重なりやすいため、できるだけ早めに確認と申請を進めることが大切です。
最近は葬儀社の中にも、補助金申請のサポートや葬儀後の各種手続きを代行してくれるところも増えています。慣れない手続きを自分たちだけで行うのは負担が大きいため、このような葬儀社に相談しておくと安心です。
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