お通夜なしで家族葬をすることは可能で、近年は負担を減らしたい遺族に選ばれています。高齢化や生活スタイルの変化から注目が高まるお通夜なしの家族葬について、流れや費用、注意点をわかりやすく解説。お通夜を省いた葬儀を検討している喪主やご家族に向けた内容です。
お通夜なしの家族葬とは、お通夜をせずに葬儀・告別式を執り行い、そのまま火葬までを1日で完結させる葬儀のことです。夜間の負担を減らし、家族だけで静かに見送りたいという思いから、この形式を選ぶ方が増えています。
とはいえ、「お通夜をしないのは失礼にならない？」「流れや準備はどうすればいい？」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。慣れない葬儀の中で判断しなければならないことが多く、戸惑うのは当然のことです。
本記事では、お通夜なしの家族葬の流れや費用、注意点をわかりやすく解説します。お通夜を省いた形で葬儀を行いたい方や、家族の負担をできるだけ減らして見送りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
お通夜なしの家族葬とは
お通夜なしの家族葬とは、「お通夜をせず、葬儀・告別式と火葬を1日で執り行う葬儀」のことを指します。近しい家族やごく一部の親族のみが参列し、静かに故人を見送る形式です。お通夜を省くことで、夜間の準備や参列対応がなくなり、時間的にも体力的にも負担を減らせます。
お通夜をしないからといって、葬儀そのものが簡略化されるわけではありません。葬儀では読経や焼香などの儀式をしっかり行い、最後まで丁寧に故人を見送ります。
お通夜なし＝一日葬との違い
お通夜なしの家族葬は、一般的に「一日葬」と呼ばれる形式にあたります。ただし、すべての一日葬が家族葬というわけではありません。家族葬は「参列者の範囲」を示す言葉で、一日葬は「葬儀の日程・形式」を示す言葉です。
つまり、「お通夜なし家族葬」は、家族葬（小規模・近親者中心）かつ一日葬（1日で完結）という特徴を持つ葬儀といえます。
お通夜なしの家族葬が増えている背景
近年、お通夜なしの家族葬を選ぶ人が増えています。その背景には、社会の変化と生活スタイルの多様化があります。高齢化が進み、夜間のお通夜参列が難しい人が増えたことや、葬儀費用を抑えたいという経済的な理由も少なくありません。
また、コロナ禍をきっかけに「人を集めない」「身内だけで静かに見送りたい」という考え方が広まりました。お通夜を行わないことで、参列者の移動や滞在の負担を減らせる点も選ばれる理由の一つです。
さらに、葬儀に対する価値観の変化も大きな要因です。かつては儀式の形式を重んじる傾向が強かったものの、現在は「自分らしく」「家族の希望に沿って」見送ることを重視する人が増えています。お通夜なしの家族葬は、そうした新しい時代の葬儀の形として定着しつつあります。
お通夜なし家族葬の全体の流れ（ご逝去〜火葬まで）
お通夜なしの家族葬は、一般的にご逝去から火葬までを1～2日で行います。お通夜を省く分、各工程を落ち着いて進めるためには、全体の流れを事前に把握しておくことが大切です。ここでは、ご逝去後から火葬までの主な流れを順を追って説明します。
ご逝去
ご家族が亡くなられた際は、まず医師の診断を受け、死亡診断書を受け取ります。自宅で亡くなられた場合は、かかりつけ医や救急を呼ぶ必要があります。診断後は、安置場所や葬儀社への連絡を早めに検討します。
葬儀社への連絡・搬送
葬儀社へ連絡すると、スタッフが故人を安置場所まで搬送します。連絡の際には、亡くなられた場所や安置を希望する場所を伝えましょう。深夜や早朝でも対応してくれる葬儀社が多いため、慌てずに指示を仰ぐことが大切です。
ご遺体の安置
搬送後は、自宅や葬儀会館などにご遺体を安置します。安置中はドライアイスで体を保全し、枕飾りを整えます。宗派や慣習によっては線香やろうそくを絶やさないように配慮します。安置場所が自宅以外の場合は、面会時間などを確認しておくと安心です。
葬儀の打ち合わせ
葬儀社と打ち合わせをし、日程や式場、宗教者の手配などを決めます。お通夜をしない場合は、葬儀・告別式を中心とした1日葬の進行になります。限られた時間の中で故人らしい式になるよう、家族の意向をしっかり伝えましょう。
納棺
納棺は、故人の体を清め、衣服を整えて棺へ納める儀式です。納棺師や葬儀社のスタッフが対応し、家族が手を添えて見送ります。故人の愛用品や思い出の品を一緒に入れることもあり、最期のお別れのひとときとなります。
葬儀・告別式の準備
打ち合わせの内容をもとに、祭壇や花の準備、僧侶への依頼などを行います。お通夜を省く分、葬儀・告別式が中心となるため、式の流れや時間配分を事前に確認しておくことが重要です。
お通夜なし家族葬の当日の流れと所要時間の目安
お通夜なしの家族葬は、葬儀・告別式から火葬までを1日で行うのが一般的です。以下は、10時に開式する場合のスケジュール例です。
- 10:00 開式・告別式（読経・焼香・弔辞など）
- 11:00 閉式・出棺の準備
- 11:30 出棺・火葬場へ移動
- 12:00 火葬開始（約1時間〜1時間半）
- 13:30 収骨
- 14:00 精進落とし・お斎（おとき）などの会食（約1時間）
全体の流れは午前中に葬儀・告別式を行い、午後に火葬・収骨・会食という形で進みます。所要時間はおよそ4〜5時間ほどで、半日程度を見ておくと安心です。精進落としは省略も可能で、状況や希望に合わせて柔軟に対応できます。
お通夜なし家族葬の費用と一般的な相場
お通夜なしの家族葬は、お通夜を行う場合に比べて費用を抑えやすい葬儀形式です。ただし、式場やプラン内容によって金額には幅があります。ここでは、お通夜ありとの違いや、費用を抑えるための工夫について見ていきましょう。
お通夜ありの家族葬との費用比較
お通夜なしの家族葬の費用は、一般的に30万〜70万円前後が目安です。お通夜ありの家族葬では、式場を2日間使用することや飲食費・人件費が増えるため、50万〜100万円ほどかかるケースが多くなります。
お通夜を省くことで、会場費や通夜振る舞い、宿泊費などを削減できます。ただし、祭壇や棺、火葬料金などの基本費用は同じため、単純に「半額になる」わけではありません。プラン内容をよく確認し、どの部分に差があるのかを把握しておくことが大切です。
費用を抑えるための工夫と注意点
費用を抑えたい場合は、必要なサービスを絞ったシンプルなプランを選ぶのが効果的です。会場の規模を小さくしたり、花祭壇を控えめにしたりするだけでも、全体の費用を減らせます。
一方で、安さだけを重視すると、希望の演出ができなかったり、家族の満足度が下がったりすることもあります。見積もりを比較し、プラン内容を丁寧に確認しながら、納得できる範囲で費用を調整することが重要です。
お通夜なしの家族葬のメリット
お通夜なしの家族葬には、遺族の体力的・精神的な負担を減らせるほか、費用面でも余裕を持てるというメリットがあります。また、一般参列者の対応に追われず、家族だけで穏やかに見送れる点も魅力です。ここでは、その主なメリットを具体的に見ていきましょう。
遺族や高齢の親族の負担を軽減できる
お通夜を行わないことで、夜間の準備や参列対応が不要になります。通夜振る舞いの準備や式場での待機もなくなるため、喪主や遺族の体力的な負担が軽減されます。
特に高齢の親族が多い場合や、遠方からの移動が必要な場合には、一日で完結する葬儀のほうが現実的です。家族が無理のないスケジュールで落ち着いて故人を見送れることは、大きな安心につながります。
葬儀費用を抑えやすい
お通夜をしない分、式場の使用料や料理代、人件費などを抑えられます。全体の費用を見直しやすく、限られた予算の中でも心のこもった葬儀を行うことが可能です。
ただし、費用が下がるのは「お通夜にかかる部分」だけであり、祭壇や火葬などの基本費用は変わりません。どの項目を省略できるかを確認し、納得のいくプランを選ぶことが大切です。
ゆっくりと家族中心で見送れる
お通夜を行わないことで、参列者対応に追われることがなくなります。その分、家族が故人と静かに過ごす時間を確保でき、気持ちを整理しながらお別れに向き合えます。
身内だけで語り合いながら過ごす時間は、故人との思い出を共有し、心を込めて送り出す貴重なひとときとなります。形式よりも「想い」を大切にしたい方にとって、お通夜なしの家族葬は適した選択といえるでしょう。
お通夜なしの家族葬のデメリット
お通夜なしの家族葬は、負担を抑えられる一方で注意すべき点もあります。お別れの時間が短くなったり、宗教的な制約や親族間の調整が必要になったりすることもあります。ここでは、あらかじめ理解しておきたい主なデメリットを紹介します。
お別れの時間が短くなる
お通夜を行わないため、故人と過ごす時間がどうしても短くなります。式の進行に追われる中で、ゆっくりとお別れをする余裕が持てないと感じる人も少なくありません。
お通夜は本来、故人と最後の夜を共に過ごす大切な時間です。その時間がないことで「もう少し一緒にいたかった」と感じる家族も多く、後悔につながる可能性があります。
親族や知人との調整・理解が必要になる
お通夜を省くことに抵抗を感じる親族もいます。「簡素すぎる」「失礼ではないか」と思われることもあり、事前に意向をしっかり伝えることが大切です。
また、弔問の機会を逃す人が出ると、不満や誤解が生じることもあります。お通夜を省く場合は、事前説明や事後報告の仕方にも気を配りましょう。
菩提寺や宗派によっては認められない場合がある
一部の宗派では、お通夜を故人の魂を慰めるための重要な儀式と位置づけています。そのため、お通夜を省くことを快く思わない寺院もあります。
特に菩提寺がある場合は、早めに相談して理解を得ておくことが欠かせません。無断で形式を変えると、今後の法要や供養に影響することもあります。
後日の弔問客が増える可能性がある
お通夜を行わない場合、参列できなかった知人や関係者が「後日お線香をあげたい」と訪ねてくることがあります。そのたびに対応が必要となり、かえって遺族の負担が長引く場合もあります。
特に仕事関係やご近所づきあいが多い家庭では、個別の弔問が続くケースも少なくありません。後日の対応方法をあらかじめ家族で話し合い、できる範囲で対応することが望ましいでしょう。
お通夜なし家族葬を行う際の準備と注意点
お通夜なしの家族葬を円滑に進めるためには、事前の準備と関係者への丁寧な説明が欠かせません。特に、家族や親族の理解を得ること、宗派や葬儀社との調整を行うことが大切です。ここでは、実際に準備を進めるうえで押さえておきたいポイントを紹介します。
家族・親族との相談と理解を得ることの重要性
お通夜を省く形式は、家族の中でも意見が分かれることがあります。「簡素すぎるのでは」「伝統を重んじたい」と感じる人もいるため、葬儀前にしっかり話し合っておくことが重要です。
全員が納得したうえで進めれば、葬儀後のトラブルや後悔を防げます。お通夜なしを選ぶ理由や、家族中心で静かに送りたいという思いを共有し、理解を得ることが第一歩となります。
菩提寺・宗派への確認事項
お通夜を省略する場合は、菩提寺や宗派に必ず確認しましょう。宗派によっては、お通夜を重要な儀式とする場合があり、許可を得ずに省略すると不快に思われることもあります。
特に僧侶への読経依頼や戒名の授与が関わる場合は、日程調整や儀式内容の変更が必要になることがあります。お通夜なしでの進行を希望する旨を早めに伝え、理解を得ておくことが大切です。
弔問希望者への対応
お通夜を行わない場合は、弔問を希望する人への連絡にも配慮が必要です。事前に「お通夜は行わず、家族のみで告別式を行う」旨を伝えることで、誤解を防げます。
また、葬儀後に連絡する場合は、落ち着いたタイミングで「故人を無事に見送ったこと」「お気持ちだけで十分ありがたいこと」を伝えると丁寧です。相手の気持ちを尊重しつつ、無理のない範囲で対応しましょう。
葬儀社との打ち合わせで確認しておくべきこと
打ち合わせの際には、「お通夜を省きたい理由」を明確に伝えることが重要です。たとえば「高齢の家族が多く、夜間の式が難しい」「静かに見送りたい」といった事情を説明すれば、葬儀社も適したプランを提案してくれます。
また、「どの範囲の人を招くか」「読経を依頼するか」なども併せて伝えると、準備がスムーズに進みます。要望を具体的に共有することで、無理のない形で希望に沿った家族葬を実現できます。
お通夜を行わない旨を伝えるときの言い回し例
お通夜を行わない場合は、親族や関係者への伝え方にも配慮が必要です。誤解を招かないように、丁寧で簡潔な言葉を選びましょう。ここでは、案内文の書き方のポイントと、実際に使える文例を紹介します。
連絡文・案内文での伝え方のコツ
お通夜を行わない旨を伝える際は、「家族葬で執り行うこと」と「お通夜を省くこと」を明確に書くことが大切です。「通夜をしない＝略式な葬儀」という印象を与えないように、「家族で心を込めて見送る」など温かい表現を添えると丁寧です。
また、香典や供花を辞退する場合は、その旨も一緒に記載します。「ご厚志はご辞退申し上げます」といった言い回しを使うと角が立ちません。
お通夜なしを伝える文例
このたび◯◯（故人の名前）が永眠いたしました。
通夜につきましては行わず 家族のみで葬儀・告別式を執り行うこととなりました
ご参列・ご香典等につきましては ご遠慮くださいますようお願い申し上げます
皆さまの温かいお心遣いに心より感謝申し上げます
「お通夜なし家族葬」という選択に後悔しないために
お通夜なしの家族葬は、負担を抑えながらも心を込めて見送れる葬儀形式です。ただし、準備や進め方を誤ると「もっとこうすればよかった」と感じることもあります。ここでは、後悔のない葬儀にするために意識しておきたいポイントを紹介します。
形式よりも「心を込めた見送り方」が大切
お通夜を省いても、葬儀の本質は「故人を想い、感謝を伝えること」です。儀式の有無よりも、故人への気持ちを大切にする姿勢が何よりも重要です。家族で故人の思い出を語り合ったり、好きだった音楽を流したりと、形式にとらわれない温かい見送りができます。
お通夜を行わない選択は決して“簡素”ではなく、“自分たちらしいお別れ”を選んだ結果でもあります。後悔のない見送りにするためには、どんな形であっても気持ちをしっかり込めることが大切です。
家族の想いを形にする工夫（お別れの演出など）
お通夜を省く場合でも、家族の想いを形にできる方法はいくつもあります。故人の写真を多く飾ったり、思い出の品を祭壇に添えたりすることで、温かみのある空間をつくれます。
また、家族が順番に故人への手紙を読む、好きだった花を手向けるといった演出も心に残る時間になります。大切なのは、派手さよりも「その人らしさ」を表現することです。小さな工夫でも、家族全員が納得できるお別れにつながります。
安心して選ぶために葬儀社へ早めの相談を
お通夜なしの家族葬を検討している場合は、早めに葬儀社へ相談することをおすすめします。希望を伝えることで、流れや費用、注意点などを具体的に確認できます。
特に、宗派の対応や式場のスケジュール、参列者数などは事前にすり合わせておくことが大切です。信頼できる葬儀社と一緒に準備を進めれば、当日も安心して故人を見送れるでしょう。
お通夜なしの家族葬は、無理のない見送りの選択肢
お通夜なしの家族葬は、形式にとらわれず、家族の気持ちを大切にできる葬儀の形です。体力的・経済的な負担を軽くしながら、故人を静かに見送りたいという思いを叶える方法として、多くの方に選ばれています。
ただし、家族や親族の理解、菩提寺への確認、葬儀社との事前調整など、準備を丁寧に進めることが大切です。流れを把握しておくことで、当日も落ち着いて故人を送り出せます。
もし「お通夜を行わない形で葬儀をしたい」と考えているなら、まずは信頼できる葬儀社へ相談してみましょう。専門スタッフに相談することで、自分たちに合った無理のないプランを提案してもらえます。家族の想いを大切にできる見送り方を、一緒に形にしていきましょう。
下記リンクからは、葬儀の規模や重要視したいことを入力するだけで、葬儀費用を簡単にシミュレーションできます。
