仏花と墓花の違いから選び方、避けたい花の種類、お供えのマナーまでをわかりやすく解説します。初めて花を用意する方でも迷わないよう、基本知識を整理しています。故人を想いながら、自分らしく花を選びたい方に向けた内容です。
仏壇やお墓に花を供えるとき「どんな花を選べばよいのだろう」と迷う方は少なくありません。仏花と墓花には飾る場所や仕立て方にも少しずつ違いがあります。
とはいえ、何より大切なのは形式よりも故人を想う気持ちです。花を選ぶ時間そのものが、静かに向き合う供養のひとときになるでしょう。
本記事では、仏花(ぶっか)と墓花(ぼか・はかばな)、人気の花の種類、避けたほうがよいとされる花、そしてお供えのマナーを解説します。初めての方でも安心して選べるよう、基本から丁寧にまとめています。
仏花と墓花の違いとは?知っておきたい基本の知識
仏花は、自宅の仏壇にお供えする花です。日々の手合わせや法要の際に供えるもので、室内に飾ることが前提になります。弔問が落ち着いた後は、家族が目にする時間が中心になるため、故人が好きだった花を選ぶなど、比較的自由に考えやすいのが特徴です。
一方で墓花は、お墓にお供えする花です。寺院や霊園の墓前に供えるもので、屋外に飾られます。お墓参りに訪れた親族や知人の目にも触れるため、落ち着いた印象の花を選ぶことが多くあります。
仕立て方の違い
一般的に花屋では、仏花は仏壇の花立ての深さを考えてやや短め、墓花はお墓の花立ての深さに合わせてやや長めに仕立てられています。
お墓の花立ては深く作られていることが多く、屋外で倒れにくいようにある程度の長さが必要です。
選ぶ花の種類に大きな違いはない
仏花と墓花で使われる花の種類自体に大きな違いはありません。価格にも明確な決まりはありませんが、墓花のほうが飾るスペースが広いため、本数を多く用意する場合には、仏花よりやや高くなることがあるでしょう。
仏花は室内に供えるため、風や雨の影響を受けません。そのため、花束だけでなく、かごや陶器の器に生けたアレンジメントを供えることもあります。一方、墓花は屋外に供えるため、風や動物などの影響を受けやすい環境です。そのため、基本的には花立てに挿す花束の形が一般的です。
仏花や墓花として人気がある花の種類
お供えの花は、落ち着いた雰囲気があり、比較的長く美しさを保てる種類が選ばれることが多くあります。仏花や墓花として定番とされる花を、特徴とあわせて紹介します。
菊
菊は、昔からお供えの花として広く用いられてきました。格式のある印象は、伝統的な仏壇や墓石ともよくなじみます。花びらが散りにくく、比較的長持ちする点も選ばれる理由のひとつです。
ひと口に「菊」といっても種類はさまざまです。大輪で重厚感のあるものから、丸みを帯びた可愛らしい「マム」と呼ばれる洋菊まで幅広くあります。仏壇や墓前の雰囲気に合わせたり、故人の人柄を思い浮かべながら選んだりすると、より心のこもったお供えになるでしょう。
スターチス
スターチスは乾燥に強く、水揚げがよいため花持ちの良い種類です。紫やピンクなどやわらかな色合いが多く、花束全体に彩りを添える役割を果たします。
色づいて見える部分は実は「がく」で、中心の小さな白い部分が花にあたります。時間が経っても色が抜けにくいため、日持ちを重視したいときにも向いているでしょう。墓花としても扱いやすい存在です。
カーネーション
カーネーションは、やわらかく上品な印象を与える花です。花びらが厚く、比較的長持ちすることから、葬儀や法要でもよく使われます。
特に白いカーネーションはお供え花として選ばれることが多く、落ち着いた雰囲気を保てます。赤や黄色などの明るい色もありますが、命日や故人の好みに合わせて選ぶのもよいでしょう。
色によって印象が変わるため、全体のバランスを考えながら組み合わせることが大切です。
トルコキキョウ
トルコキキョウは、清楚で上品な印象の花です。暑さにも比較的強く、花持ちが良いことから仏花や墓花として人気があります。
一重咲きはすっきりとした雰囲気で、控えめな花束を作りたいときに向いているでしょう。八重咲きやフリルのある品種は華やかさがあり、少し明るい印象を加えたい場合に選ばれます。故人のイメージに合わせて選びやすい花です。
カスミソウ
カスミソウは、小さな花がふんわりと広がる姿が特徴です。主役というよりは、他の花を引き立てる役割を持ちます。
花持ちが良く、枯れても大きく形が崩れにくいことから、お墓に供える花としても使いやすい種類です。全体をやさしい印象にまとめたいときに適しています。
ユリ
ユリは花が大きく、存在感のある花です。白いユリは清らかな印象があり、法要などの場でもよく用いられます。
ただし、品種によっては香りが強いものや花粉が飛びやすいものがあります。特に仏壇では、花粉が仏具や畳に付くと落ちにくいため、開花直後に取り除きましょう。
墓花として使用する場合も、周囲への配慮を考えて選ぶことが大切です。
胡蝶蘭
胡蝶蘭は、気品のある姿が特徴で、法要や節目の供養の場面で選ばれることがあります。花持ちが非常によく、長期間美しい状態を保てるでしょう。
鉢植えで供えられることが多いため、仏壇や室内での供養に向いています。墓前に供える場合は管理のしやすさも考慮し、状況に応じて選ぶのがおすすめです。
仏花・墓花の選び方
仏花や墓花に「絶対にこれでなければならない」という決まりはありません。基本を押さえつつ、故人やご先祖への気持ちを大切に選ぶことが何よりも大切です。迷ったときに参考にしたい選び方のポイントを紹介します。
故人の好きな色・種類の花
仏花も墓花も、故人を想ってお供えする花です。そのため、花選びに迷ったときは、故人が好きだった色や種類を基準に考えるのがおすすめです。
たとえば、いつも青い服を好んで着ていた、庭に咲く花を楽しみにしていた、記念日に贈っていた花があったといった思い出があれば、その花を選ぶのも自然なことです。
形式にとらわれすぎず「この花なら喜んでくれるかな」と想像しながら選ぶことも、供養のひとつといえるでしょう。
季節の花
日本には四季があり、季節ごとに咲く花が異なります。その時季ならではの花を供えることも、心のこもった選び方です。
春なら淡い色の花、夏は暑さに強い花、秋は落ち着いた色合い、冬は凛とした花など、季節感を取り入れることで、自然の移ろいを故人に伝えるような気持ちになります。また、墓前に立ったとき、季節を感じる花があるだけで場の雰囲気がやわらぎます。
「いつもと少し違う花を供えたい」と感じたときは、季節の花を取り入れてみるのもよいでしょう。
長持ちする花
お供えの花は、できるだけ長くきれいな状態を保ってほしいものです。特に墓花は屋外に飾るため、傷みやすい環境にあります。そのため、花持ちが良い、暑さや寒さに比較的強い、花びらが散りにくいといった特徴を持つ花を選ぶと安心です。
頻繁にお墓参りができない場合は、なおさら長持ちする花が適しています。花屋で購入する際に「お墓に供える花を探しています」「長持ちするものがよいのですが」と伝えれば、環境に合った花を提案してもらえるでしょう。
見た目だけでなく、供える場所の環境を考えることも大切なポイントです。
仏花や墓花として適さない花
仏花や墓花に好きな花を選ぶことは大切ですが、昔から避けた方がよいとされる種類もあります。理由を知っておくと、安心して花を選べるでしょう。
毒や棘がある花
毒性のある花や棘のある花は、仏花や供花として避けられています。
毒のある花は「仏様やご先祖に毒を供えることになる」と考えられてきました。また、棘のある花は「怪我を連想させる」「お参りする人が傷つく恐れがある」といった理由から敬遠されます。代表的なものには、彼岸花や水仙(毒性)、バラ(棘)などがあります。
ただし、バラは棘を取り除けば供えることも可能です。故人が特に好きだった花であれば、安全に配慮したうえで選ぶのもひとつの考え方です。
香りが強い花
ユリやキンモクセイなど、香りが強い花も注意が必要です。
香りが強いと、虫が寄りやすくなる、線香の香りと混ざる、周囲のお墓まで香りが広がるといった点が気になる場合があります。
特に墓地では他家のお墓も近いため、配慮が求められます。どうしても供えたい場合は、自宅の仏壇に飾るなど、場所を選ぶとよいでしょう。
ツルがある花
クレマチスや朝顔などのツル性の花は、成長すると周囲に絡みつく性質があります。墓前に植える場合、墓石や隣のお墓に絡んでしまい、トラブルの原因になりかねません。
花束として短期間供える分には問題ありませんが、植栽として扱う場合は注意が必要です。なお、自宅の仏壇に供える分には心配ないでしょう。
死を連想させる花
椿や彼岸花のように、昔から「死」を強く連想させるといわれる花は、お供えとしては控えられることがあります。
椿は、花びらが一枚ずつ散るのではなく、花の形のままぽとりと落ちます。その様子が「首が落ちる姿」を思わせるとして、縁起がよくないと考えられてきました。
また、毒を持つ彼岸花は、かつて土葬の遺体を動物から守る目的で植えられていた歴史があり、現在も「死」を連想させる花として供花には不向きとされる場合があります。
すぐに枯れる花
花びらが散りやすい花や、暑さに弱くすぐに傷む花は、墓花にはあまり向いていません。特に夏場は高温になりやすく、短期間で枯れてしまうことがあります。枯れた花をそのままにすると見た目の印象もよくありません。
供える場所や季節を考え、できるだけ花持ちの良い種類を選びましょう。
縁起が悪いとされる花の種類
お供えの花に厳密な決まりはありませんが、昔から「避けた方がよい」といわれてきた花もあります。こうした考え方は、花の姿や色、花言葉などに由来するものです。
椿
椿は、花びらが一枚ずつ散るのではなく、花の形のまま落ちる特徴があります。その様子が「首が落ちる姿」を連想させるとして、縁起がよくないとされてきました。
現在ではそこまで気にしない方も増えていますが、ご年配の方の中には気にされる方もいます。供える場合は、事前に家族や親族の考えを確認しておくとよいでしょう。
彼岸花
彼岸花は、鮮やかな赤色と独特の姿が印象的な花です。墓地の周辺に自生していることも多く、昔から「死」や「あの世」を連想させる花とされてきました。
また、球根に毒性があることも理由のひとつです。こうした背景から、供花としては避けられることが一般的です。
ムクゲ
ムクゲは夏に咲く花で、やわらかな雰囲気を持っています。しかし、花が一日でしぼんでしまうことから、「はかなさ」や「短命」を連想させるといわれることがあります。
そのため、縁起を重んじる場面では控えられる場合があります。仏壇に短期間飾る分には問題ないと考える方もいますが、墓花としては慎重に選ぶことが多い花です。
クロユリ
クロユリは深い紫色をした個性的な花です。地域によっては「呪い」など強い意味を持つ花言葉が知られており、その印象から縁起がよくないとされることがあります。
色味が濃いため、供花としては重い印象を与える場合もあります。お供えとして選ぶ際には、周囲の受け止め方にも配慮すると安心です。
スノードロップ
スノードロップは、雪解けの時期に咲く可憐な花です。ただし、ヨーロッパでは「死」や「別れ」を連想させる花とされることがあり、日本でもその印象が広まっています。
日本では必ずしも一般的な供花ではないため、仏花や墓花としてはあまり選ばれません。花言葉や由来を気にする場合は、避けたほうが無難といえるでしょう。
仏花や墓花をお供えするときの4つのマナー
仏花や墓花は、ただ飾ればよいものではありません。形式に厳しすぎる必要はありませんが、基本的なマナーを知っておくと安心です。故人やご先祖への敬意を込めて、丁寧にお供えしましょう。
1.お供えの花は左右対称に飾る
仏壇やお墓には、左右に一つずつ花立てが設けられているのが一般的です。そのため、同じ種類・同じ本数の花束を二つ用意し、左右対称になるように飾ります。
左右対称にするのは、見た目を整えるためだけではありません。古くから「極楽浄土を象徴する形」ともいわれ、整った配置は場を清らかに保つ意味も持っています。仏壇の中には「三具足(みつぐそく・さんぐそく)」と呼ばれる形式もあり、その場合は花立てが一つのみです。三具足では、向かって左に花、中央に香炉、右にろうそくを配置します。
お供えする際は、まず周囲を掃除し、花立ての水を新しく入れ替えてから花を挿します。掃除してから花を供える流れが、基本的な作法です。
2.お供えする花は奇数で飾る
仏花や墓花に使う花の本数は、3本・5本・7本などの奇数がよいとされる慣習があります。
古くから、奇数は「陽の数」、偶数は「陰の数」と考えられてきました。割り切れない奇数は縁起がよいとされ、慶事のご祝儀が奇数金額であるのと同じ考え方です。現在では本数に厳密な決まりはありませんが、「4本」は「死」を連想させることから避けるのが無難といわれています。
花束を購入する際は、自然と奇数になることが多いものの、気になる場合は花屋に相談すると調整してもらえます。
3.故人の四十九日までは白を基調とした花をお供えする
四十九日までは、白を中心とした落ち着いた色合いの花を供えるのが一般的です。
白は清らかさや敬意を表す色とされ、故人を静かに見送る期間にふさわしいと考えられています。白菊や白いカーネーション、ユリなどは日持ちもよく、よく選ばれる花です。グリーンの葉ものを添えてまとめると、清楚な印象になります。
四十九日を過ぎた後は、徐々に色味を加えても差し支えありません。黄色や紫、淡い赤などを取り入れたり、故人が好きだった色を選んだりするのもよいでしょう。
節目までは控えめに、以降は想いを込めた色へと変えていく流れが一般的です。
4.造花をお供えする際には参拝者に配慮する
近年は、手入れのしやすさから造花を供える方も増えています。造花を供えること自体がマナー違反というわけではありません。
ただし、「供花は生花であるべき」と考える方もいます。特に寺院墓地や親族が多く訪れるお墓では、周囲への配慮が必要です。
造花を選ぶ場合は、できるだけ自然に近い落ち着いたものを選び、事前に家族や親族と相談すると安心です。また、色あせや汚れが目立つ場合は交換するなど、手入れを怠らないことも大切です。
自分らしい仏花・墓花選びで、優しい供養の時間を
仏花や墓花には、左右対称に飾る、本数は奇数にする、四十九日までは白を基調にするなど、いくつかの基本的な考え方があります。
しかし、それらは厳しい決まりではなく、故人やご先祖への敬意を表すための目安です。
故人が好きだった色の花を選ぶこと、季節の移ろいを感じられる花を供えること、長持ちする花を選び、丁寧に手入れすること。どの選び方も、想いが込められていれば十分に意味のある供養になります。
迷ったときは、花屋や家族と相談しながら、無理のない形で選びましょう。自分らしい花を供える時間が、穏やかで優しい供養のひとときにつながります。


