冬場の葬儀・告別式での服装がフォーマルのマナーに反していないか不安な場合は、男性・女性・学生の喪服マナーやコート・インナー・防寒小物の選び方などの基本を押さえましょう。基本はシンプルなデザインのダークカラーですが、厳冬期でもマナーを守り暖かく参列するポイントを網羅します。
冬場に行われる葬儀や告別式では「寒い場合はコートを着てもいいの?いつ脱ぐの?」「ダウンジャケットやブーツは失礼にあたる?」など、気を遣うポイントがたくさんあります。また、男性や女性、学生や子供など、参列者の立場により必要な防寒対策やマナーが変わります。
この記事では、喪服の基本マナーに加えて冬用コートや防寒アイテム、喪服の下に着るインナーの選び方に関するポイントをまとめてご紹介。失礼にあたらない装いを押さえておきましょう。
お葬式に参列する際の服装マナー
「お葬式」という言葉の定義は、お通夜・告別式・出棺・火葬・初七日法要・精進落としなど、故人を弔うための一連の儀式をまとめたものです。
お葬式に参列する際の服装マナーは、冬場であっても基本的には他の季節で気を付けるべきマナーと変わりません。ただし、防寒のために着たり携行したりする冬場特有のアイテムも、やはり基本マナーに配慮して着こなす必要があります。
男性の喪服マナー
まずは、男性の基本的な喪服マナーをご紹介します。
ブラックスーツを着用する
男性は、黒色の礼服(ブラックフォーマル)が基本の服装です。濃灰や濃紺でも許容される場合がありますが、原則としては漆黒に近い色のスーツが望ましいとされます。
シャツやネクタイなどは白・黒で揃える
ワイシャツは白色の無地でレギュラーカラー、ネクタイやベルト、靴下は黒無地かつ光沢の少ないものを選びます。
小物類も黒で統一する
靴は光沢を抑えた黒の革靴が基本で、シンプルなデザインのストレートチップかプレーントゥが無難です。Uチップやウイングチップなどの装飾が目立つデザインのものは避けます。また、カバンやハンカチなども黒か白を基調とした装飾の少ないシンプルなデザインのものが基本です。
女性の喪服マナー
女性の基本的な喪服マナーをご紹介します。
ワンピースやアンサンブルが基本
女性は、膝が隠れるスカート丈のブラックフォーマルもしくはアンサンブルスーツが基本の服装です。季節にかかわらず肌の露出や透け感が過度でないデザインを選びましょう。
パンツスーツ着用も問題なし
近年、女性がパンツスーツを着用する場面が増え、広く受け入れられている傾向です。パンツスーツを選ぶなら、黒色でフォーマル対応のデザインとしてストレートシルエットで過度な装飾がないものを選ぶとよいでしょう。
ただし、フォーマルスーツの格式は「ドレス・ワンピース > スカートスーツ > パンツスーツ」であるため、喪主や遺族として参列する場合は着用しないほうがよいでしょう。
アクセサリーや小物は控えめに
アクセサリーは原則として身に着けません。ただし、パールのネックレスやイヤリング、シンプルなデザインの結婚指輪までは構いません。しかし、宝石が目立つ派手なデザインのものは避けるべきです。
学生や子供の喪服マナー
学生や子供の基本的な喪服マナーをご紹介します。
学校の制服が基本
学生は学校の制服を着用するのが基本の服装です。さらに、季節に合わせて上着やベスト、セーターなどで暑さ寒さに対して調整します。
私服ならダークカラーで統一
喪服がない場合は、漆黒や濃紺、濃灰など暗めの色味のものを選べば問題ありません。靴はスニーカーを避けて黒色もしくは濃色のフォーマル寄りを選びましょう。
冬場の葬儀・告別式に参列する服装のマナー
厳寒期に行われる葬儀では、礼服そのものは通常と同じものを着用しつつ、重ね着やコートなどで防寒性を高めます。とはいえ、見た目のフォーマル感を損ねないことが大切です。
男性の冬場の喪服マナー
男性の冬場の喪服マナーは以下のとおりです。
ブラックフォーマルまたはダークスーツ
夏用のスーツは生地が薄手のため避け、オールシーズン用もしくは少し厚手の生地になった冬用のものを選びましょう。
マフラーや手袋で防寒
室内はコートやマフラーを脱ぎますが、屋外での移動は黒色や濃紺などのシンプルなマフラーや手袋を使用するのは問題ありません。
シャツやインナーを工夫
保温性の高いインナーを着る際は、襟元や袖口から見えないデザインで、見えたとしても目立たないような色合いを選ぶとよいでしょう。
女性の冬場の喪服マナー
女性の冬場の喪服マナーは以下のとおりです。
ブラックフォーマルのアンサンブルやワンピース
裏地が厚手の喪服や毛織物のブラックフォーマルなら寒さ対策は心強いでしょう。
ストールやマフラーはシンプルな黒系で
ストールやマフラーは着脱がしやすいため持っておくと便利です。派手に見えないように装飾の少ない黒色で無地のものを選びましょう。
冬用パンプスやブーツの注意点
パンプスは黒色でシンプルなデザインが基本ですが、積雪量が多い地域では靴底が滑り止め加工されたものが安心です。葬儀においてブーツはカジュアル寄りであるため、履かないか会場へ入ってから履き替えるなどの対策をしましょう。
冬場の葬儀・告別式での冬用コートの基本マナー
寒冷地ではコートの着用が必須になるでしょう。式場に入る前にはコートを脱いで折りたたんだ状態で持つかクロークに預けるのが基本マナーです。
デザインはカジュアルでないもの
羽織るものごとに基本マナーが異なります。
ダウンジャケット
ダウンジャケットは保温性が高くて軽いため防寒着として頼りになりますが、弔事においては膨らみが目立つためフォーマル度は下がります。また、羽毛素材が殺生をイメージする場合があります。しかし、近年は価格が下がって普及が進んだため、弔事の服装として利用する方は増えています。
カーディガン
コートを着用するほど寒くない場合や室内でコートを脱いだ状況でのカーディガンは、黒系のシンプルなものであれば問題ありません。
和装の喪服には道行(みちゆき)コート
和装の喪服を着用する場合は、道行コートや道中着などの和装向けの防寒着を合わせるのが基本です。和装に洋装のコートを重ねるのはマナー違反や違和感につながる場合があるため注意しましょう。
生地は無地でダークカラーが無難
冬用コートはできる限り黒色や濃紺、濃灰などダークトーンで無地の落ち着いた印象のもので、素材はウールが無難です。このとき、光沢が強い素材や大きく目立つ柄、ファーや光沢ある金属などの華美な装飾が付いたものは避けましょう。
装飾は控えめでシンプルなもの
ボタンやベルトのバックル、ワンポイント装飾など、光を反射するようなものは好ましくありません。光る装飾がなくできるだけ控えめでシンプルなデザインを心がけましょう。
素材は殺生を連想しないもの
本革や毛皮の襟や袖口、裾などは、殺生を連想させるとして避けられる風潮です。同様にファーやダウン(羽毛)などもなるべく避け、ウールや化繊を選ぶのが無難です。
光沢を抑えた革をあしらったコートでも、は虫類・ダチョウなどの皮膚感が分かる加工のものも殺生を連想させるため好ましくありません。
冬場の葬儀・告別式の防寒用小物について
寒さが厳しいなら、コートやインナーに加えて小物類でも防寒対策を行います。
マフラー・ストール・手袋
マフラーやストールは、黒や濃紺、濃灰で飾りの少ないもので、フリンジや柄入りは避けましょう。手袋はスーツやコートと色を統一して、革製なら光沢を抑えたものにします。
タートルネック・セーター
タートルネックやセーターは首元が暖まり防寒にはよいのですが、襟元から見えるとカジュアルな印象になります。襟の開きの大きいセーターを選んで、下に隠れるよう調整するといった工夫が必要です。
喪服の内側に着るインナー
ユニクロのヒートテックのような発熱素材や起毛など、保温効果を高めた素材を用いたインナーがおすすめです。ただし、首元や袖口から見えないよう工夫し、色はダークカラーすると見えても目立ちにくくなります。
タイツ・ストッキング
冬には厚手の黒タイツを選びたくなりますが、極端に厚いものはフォーマルから外れるため避ける場合があります。デニール数(糸の太さを表す単位)でいえば「30~80」程度の黒タイツがよいでしょう。
履き物の基本ルール
ブーツなどの履き物に関する基本ルールも押さえておきましょう。
男性:フォーマルな黒色の革靴が基本
スーツに合わせた黒の革製で。装飾が少なく光沢を抑えたものを選びましょう。
女性:黒色のシンプルなパンプスが基本
ヒールは「3~5cm」くらい、幅広で安定感のあるものを選びます。ブーツはカジュアル寄りなので、できるだけ避けるか会場内で履き替える履き物を用意しておきましょう。
冬の葬儀の靴選びのポイント
雪や雨が多い地域では、防滑仕様のソールを選ぶなど、安全面での配慮も大切です。
携帯カイロの利用
コートやマフラーは会場で脱ぐため、厳寒期は携帯カイロを持っておくと助かります。使用する際は周囲に目立たないように配慮します。
冬場の葬儀・告別式で着込むインナーについて
寒い時期は、以下に気を付けてインナーで寒さ対策を工夫します。
寒さをしのげる保温性の高さ
保温性の高いインナーを選ぶなら、襟や袖、裾からはみ出さないよう注意します。
見えても違和感のない色
喪服がダーク系なので、インナーも黒色や濃灰、チャコールなどの同系色を選ぶと安心です。男性は、白いワイシャツから透けないように白色や灰色にするとよいでしょう。
主張しないデザイン
襟元や袖口にレースなどの装飾があると見えたときにフォーマルな印象を損ねるかもしれないため、無地でシンプルなデザインを選びましょう。
インナーの素材や機能性
起毛素材やヒートテック系の発熱素材は薄手でもしっかり暖かいので、冬の葬儀で重宝します。また、吸湿速乾性があると汗冷えしづらいため、屋外と室内の温度差にも自動的に対応してくれます。
冬場の葬儀・告別式はマナーに沿った防寒対策で参列しよう
冬場のお葬式や告別式では、厳しい寒さとマナーの両立が課題です。とはいえ、喪服の基本マナーは季節によってもそれほど変わらないため、ブラックフォーマルを中心に必要に応じてコートやマフラー、手袋、インナーなどで防寒性を高めましょう。
防寒アイテムは式場に入る前に脱ぐといった所作を守っていれば、周囲に失礼な印象を与えずに済みます。大切な人との最後の別れという大切な場面で体調を崩さないように暖かい装いを心がけましょう。