無宗教葬とは、宗教儀式を行わず自由な形式で故人を見送る葬儀のことです。本記事では無宗教葬の流れや準備、供養方法まで紹介。メリット・デメリットと、注意点も解説します。形式にとらわれず、故人らしい葬儀を考えたい方におすすめの記事です。
無宗教葬とは、宗教的な儀式にとらわれず、自由な形式で故人を見送る葬儀のことです。形式に縛られず、音楽や映像など、故人らしさを大切にした時間を過ごせます。
ただ、まだ一般的な葬儀形式とはいいづらく、親族や関係者の理解を得られるか不安に感じる方もいるかもしれません。「本当に無宗教で大丈夫?」「何をどう進めればいいの?」と戸惑うこともあるでしょう。
本記事では、無宗教葬の流れや演出の工夫、供養の方法、参列マナーまで詳しく解説します。宗教にとらわれず、故人を自分たちらしく見送りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
無宗教の葬儀(無宗教葬)とは
無宗教の葬儀(無宗教葬)とは、特定の宗教や宗派の形式にとらわれずに行う自由なかたちの葬儀です。僧侶の読経や神職の儀式を省き、故人を偲ぶための内容を家族で自由に決められます。
たとえば、故人が好きだった音楽を流したり、思い出の映像を上映したりと、故人らしさを大切にした時間を過ごせるでしょう。
無宗教葬は、信仰にとらわれない生き方をしてきた方や、親族間で宗教観が異なる場合などに選ばれます。また、形式にしばられず、自分たちの手であたたかく見送りたいという思いから、このかたちを選ぶ家族もいます。
通夜や葬儀といった宗教儀式を行わず、火葬のみを執り行う「直葬」も、無宗教葬のひとつと考えられています。こうした儀式の簡略化を希望する方が増えていることもあり、無宗教葬は少しずつ広がりを見せています。都市部を中心に、選ぶ方が増えてきている葬儀のかたちです。
無宗教葬の4つのメリット
無宗教葬には、宗教儀式にとらわれないからこそ得られるさまざまな利点があります。ここでは、代表的な4つのメリットを紹介します。
メリット1.内容や演出が自由
無宗教葬は宗教的な形式に縛られることなく、自由に内容や演出を決められるのが特徴です。たとえば、音楽や映像の演出、手紙の朗読など、思いおもいのかたちで故人を偲べます。
形式にこだわらず、故人らしい送り方をしたい方や、葬儀に個性を持たせたいと考えている家族には、無宗教葬が特に向いています。
メリット2.宗教者へのお布施が不要
無宗教葬では僧侶や神職など宗教者を招かないため、お布施などの謝礼費用が発生しません。これにより、費用面での負担を抑えられます。
お布施にかかる費用を抑えたい方や、宗教儀式を行う予定がない方にとっては、無宗教葬が現実的な選択肢となります。
メリット3.費用をコントロールしやすい
葬儀の進行内容や必要な項目を自由に選べるため、費用を調整しやすいのも特徴です。不要な儀式や装飾を省くことで、総費用を抑えられます。
費用を予算内に確実に収めたい方や、必要な部分だけを取り入れて無理のない葬儀を行いたい方におすすめです。
メリット4.宗教を問わず参列できる
無宗教葬は特定の宗教に基づかないため、宗教上の理由で他の宗教・宗派の葬儀に参列できない方でも参加しやすいという面があります。宗教的なしきたりに配慮する必要もありません。
家族や友人の宗教が多様である場合や、誰もが気兼ねなく参列できる場をつくりたい場合には、無宗教葬が適しています。
無宗教葬の3つのデメリット
自由な反面、無宗教葬ならではの注意点もあります。ここでは、無宗教葬を検討するうえで知っておきたい主なデメリットを紹介します。
デメリット1.準備が大変
無宗教葬では宗教儀式がない分、式の流れや演出をすべて自分たちで考えなければなりません。演出内容の決定や進行の段取りなど、準備の負担が大きくなりやすいのが難点です。
葬儀の準備に時間や手間をかけられない場合や、遺族が高齢で対応が難しい場合には、無宗教葬は負担に感じるかもしれません。
デメリット2.周囲の理解を得づらい
無宗教葬はまだ一般的とはいえず、高齢の親族や地域の習慣によっては受け入れられないこともあります。読経や焼香といった宗教儀式がないことに対して、違和感を抱く方も少なくありません。
参列者や親族のなかに、従来の形式を重んじる方が多い場合は、無宗教葬に対する理解を得るのが難しいことがあります。
デメリット3.菩提寺とトラブルになることも
菩提寺がある場合、無宗教葬を行ったこと(読経をしなかったり戒名がなかったりすること)を理由に納骨を断られるケースがあります。とくに、代々のお墓が寺院にある場合は要注意です。
菩提寺との関係を重視したい方や、将来的に寺院墓地への納骨を考えている方には、無宗教葬は慎重な判断が求められます。
無宗教葬の流れの一例
無宗教葬には決まった進行や形式がないため、葬儀の流れは遺族の希望にあわせて自由に構成できます。ここでは参考として、無宗教葬の流れの一例を紹介します。
参列者入場
参列者が会場に入り、指定された席に着席します。受付では、芳名帳への記入や香典の受け取りが行われるのが一般的です。無宗教葬ではBGMとして、故人が好きだった音楽を静かに流しながら参列者を迎えるケースもあります。
あらかじめ受付の手順や座席の案内を整えておくと、参列者が戸惑うことなく落ち着いて入場できます。
会式の言葉
開式にあたって、司会者や喪主が式の開始を告げます。宗教的な挨拶ではなく、故人への想いや見送りの意義を簡潔に述べる内容が良いでしょう。
たとえば「本日はご多忙のなか、〇〇を偲ぶ会にお集まりいただきありがとうございます」といった挨拶から始めると、自然な導入になります。
黙祷
式の初めに、故人への祈りを込めて全員で黙祷を捧げます。黙祷の時間は30秒から1分程度が一般的です。仏式での読経に代わる、厳粛な雰囲気を作る工程として位置づけられています。
司会者が「それでは、黙祷をお願いします。黙祷」と声をかけ、終了後には「黙祷を終わります」と静かに促すのが良いでしょう。
献奏や映像上映
黙祷のあと、故人の人柄や思い出を振り返る時間として、音楽や映像の演出を取り入れることが多いです。生演奏を依頼したり、故人の好きだったアーティストの楽曲を流したりすることもあります。
スライドや動画を上映する場合は、式の流れに沿ってタイミングを決めておき、参列者にも内容や長さを案内しておくと安心です。
お別れの言葉
喪主や家族、友人などが代表して、故人への想いを言葉にして伝える場です。内容に決まりはありませんが、故人との思い出や感謝の気持ちを率直に語ることで、会場にいる人々の心にも残る時間になります。
複数人が話す場合は、話す順番や持ち時間を調整しておくとスムーズです。目安としては、複数人なら1人につき1分ほど、代表1人が話すなら3分ほどが良いでしょう。
献花
参列者が1人ずつ前に進み、棺のそばに設けた献花台に花を手向けます。これは仏式の焼香にあたる工程です。無宗教葬では白い花(カーネーションや菊など)を使うことが多いですが、故人の好きだった色や種類の花を選ぶのも自由です。
献花の際は、係の人が順番を案内し、花の受け取り方や手向け方をさりげなく誘導すると、参列者も迷わず進められます。
閉式の言葉
すべての進行が終わったあとは、司会者や喪主から閉式の言葉を述べます。「本日はお忙しいなか、ありがとうございました。これをもちまして、〇〇のお別れの式を終了いたします」といった言葉で締めくくります。
あわせてこのあとの予定(出棺や火葬、会食の案内など)を簡潔に伝えると、参列者が混乱せずに移動できます。
出棺・火葬
出棺前には、親族や近しい方が棺のまわりに集まり、最後のお別れとして花や手紙を納めます。その後、霊柩車に棺を載せて火葬場へ向かいます。なお、出棺をしない場合もあります。
火葬に立ち会う方々には、火葬場までの移動方法や所要時間を伝えましょう。棺の蓋を閉めるタイミングも、あらかじめ確認しておくと安心です。
会食
火葬後に、親族や親しい方を中心に会食の場を設けることがあります。形式にとらわれない自由な集まりで、食事をしながら故人との思い出を語り合うあたたかな時間になります。
会食の冒頭では、献杯や感謝の挨拶を一言述べると場が引き締まります。内容に特別な決まりはなく、故人への感謝と参列へのお礼を伝えることが中心です。
献杯では挨拶が必要になります。挨拶は誰に頼めばいいのか、どのような内容にすればいいのか知りたい方は、こちらの記事をお読みください。
献杯の挨拶例をタイミング、立場別に紹介|使ってはいけない言葉や基本マナー
無宗教葬でできることの一例
無宗教葬は形式にとらわれないため、自由な発想でさまざまな演出を取り入れられます。ここでは、実際によく取り入れられている内容の一例を紹介します。
故人が好きだった音楽の演奏
無宗教葬では、式の中で故人が好んでいた音楽を流したり、生演奏を取り入れたりすることがあります。クラシックやジャズ、好きなアーティストの楽曲などを選び、式全体に故人らしさを感じられる雰囲気をつくることができます。音楽は、入場時や黙祷後、献花の場面で流します。
演奏を依頼する場合は、事前に曲目やタイミング、演奏の長さを打ち合わせておきましょう。また、会場によっては音響設備の確認が必要になるため、使用する機材や音量にも注意が必要です。
スライドや動画の上映
故人の生前の写真やエピソードをまとめたスライドや動画を上映する演出も、よく行われています。家族や友人との思い出を振り返る場として、温かく感動的な時間になります。
準備の際は、再生機器やスクリーンの有無を会場側に確認し、映像の長さにも配慮しましょう。3~5分程度に収めると参列者も集中して見ることができ、全体の流れを損なう心配もありません。
僧侶による読経
無宗教葬であっても、家族の希望や故人の意向によって、僧侶を招いて読経を依頼することがあります。宗教色を抑えつつも厳粛さを演出したいときや、高齢の親族の理解を得たい場合に、読経を行うことが多いです。
読経を取り入れる場合は、僧侶に無宗教葬であることを伝えたうえで相談しましょう。最近は無宗教葬に理解を示し、読経してくれる僧侶も増えてきました。また、僧侶へのお布施の準備や、読経の内容・所要時間なども確認しておきましょう。
無宗教葬の供養方法
無宗教葬を行ったあと、故人をどのように供養するかも考えなければなりません。宗教にとらわれない葬儀だからこそ、供養の方法も多様です。ここでは代表的な5つの方法を紹介します。
先祖代々のお墓
菩提寺にある先祖代々のお墓に納骨する方法です。遺骨をお墓に納め、家族で定期的にお参りしながら供養していきます。一般的な仏式の納骨と同様の方法ですが、無宗教葬を行ったことで納骨を断られるケースもあります。
メリットは家族で代々受け継いできたお墓に一緒に納まることができ、継承のつながりを大切にできる点です。一方で、檀家であり続ける必要があるため、寺との付き合いが継続する負担や、無宗教葬に対して理解を得づらいというデメリットもあります。
家族の宗教観が近く、これまで通り先祖のお墓に納骨したいと考えている方に向いています。ただし、葬儀の前に菩提寺に相談し、理解を得ておくことが不可欠です。
永代供養
寺院や霊園に遺骨を預け、供養や管理をすべてお任せする供養方法です。一定期間個別に供養した後、合同墓などに合祀されることが多く、後継者がいない場合でも安心です。
管理の手間がかからず費用も比較的安価で、無宗教でも利用できる施設が多いのがメリットです。ただし、一定期間を過ぎると合祀され、個別のお参りができなくなる場合がある点は覚えておきましょう
お墓の継承者がいない方や、子どもに負担をかけたくないと考える方には、現実的で安心できる選択肢です。
永代供養の形式やお墓のタイプは、こちらの記事で紹介しています。
「永代供養とは?お墓の管理にかかる費用や手間を抑える方法、永代供養墓の選び方」
散骨
遺骨を粉末状にして、海や山など自然の中に撒く方法です。自然に還るという思想に基づいた供養方法で、宗教的な儀式を伴わない自由なスタイルです。
お墓そのものがないため、管理や維持も必要なく、費用を抑えられます。宗教色が一切ないのも、人によってはメリットに感じるでしょう。ただし、一度散骨すると遺骨は戻らず、形として残らないため、後からお参りの場が欲しくなる可能性があります。
自然に還りたいという故人の希望がある場合や、形式にとらわれずに送りたいという家族に適した方法です。実施には法律や地域のルールも確認しておくと安心です。
こちらの記事では散骨する場所やルールについて解説しています。ルールを守らず散骨すると法律違反になる恐れもあるため、散骨を検討している方は必ず確認してください。
「散骨したらお墓参りはどうする?トラブルや後悔を避けるために」
公営墓地
市区町村などの自治体が管理する墓地で、宗教や宗派に関係なく利用できる施設が多くあります。申請や抽選が必要な場合もありますが、管理費や使用料が比較的安価に抑えられるのが特徴です。
宗教不問で利用できる安心感と、費用の明瞭さがメリットです。一方で、立地や区画の選択肢が限られることや、空きがない場合もある点はデメリットです。
無宗教での供養を希望しつつ、きちんとしたお墓を持ちたい方に向いています。自治体によって条件が異なるため、事前に調べておきましょう。
宗教を問わない墓地
民間の霊園などで、宗教や宗派を問わず誰でも利用できる墓地です。デザインや立地の自由度が高く、永代供養と組み合わせたプランが用意されていることもあります。
宗教にとらわれずに、個別のお墓を持てる点が最大のメリットです。ただし、民間霊園は公営墓地より費用が高めで、霊園によっては管理体制に差が出る場合もあります。
無宗教でも個別のお墓でしっかり供養したい方や、将来的に家族で同じ墓に入りたいと考える方には適した選択肢です。
無宗教葬の参列マナー
無宗教葬では宗教的な儀式は行いませんが、参列する際の服装や香典の扱いには、仏式葬儀と同じようなマナーがあります。形式にとらわれないとはいえ、故人や遺族への敬意を表す姿勢が大切です。
服装は略式喪服が一般的
無宗教葬では、仏式ほど厳格な服装のルールはありませんが、基本的には略式喪服(黒や濃紺、ダークグレーのスーツやワンピースなど)を着用するのが一般的です。過度にカジュアルな服装や派手な色は避け、落ち着いた装いを心がけましょう。
服装の指定がある場合は案内に従うことが大切です。迷った場合は、一般的な葬儀と同様に準喪服を選ぶと失礼にあたることはありません。
一般的な喪服の選び方はこちらの記事で解説しています。男女別、子どもの場合に分けて、わかりやすく解説しています。
「葬儀・告別式の服装と持ち物、アクセサリー【男女別・子ども】」
香典は辞退されなければ持参する
無宗教葬でも、香典を持参するのが基本的なマナーです。ただし、無宗教葬では「香典辞退」と記載されていることもあるため、案内状や事前の連絡内容をよく確認しましょう。
香典を持参する場合は、宗教色のない白無地の香典袋を選ぶのが適切です。表書きは「御霊前」や「お花料」とするのが無難で、宗教に特化した表現(「御仏前」など)は避けたほうが良いでしょう。
香典の金額は下記の表を参考にしてください。
20代 | 30代 | 40代~ | ||
親族 | 両親 | 3万~10万円 | 5万~10万円 | |
義理の両親 | 3万~5万円 | 10万円 | ||
祖父母 | 1万円 | 1万~3万円 | 3万~5万円 | |
兄弟・姉妹 | 3万~5万円 | 5万円 | ||
叔父・叔母 | 1万円 | 1万~2万円 | ||
従兄弟・その他の親族 | 3,000~1万円 | 3,000~2万円 | ||
親族以外 | 上司 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 |
上司の家族 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 | |
勤務先の社員 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 | |
社員の家族 | 3,000~5,000円 | 3,000~1万円 | ||
友人・知人 | 3,000~5,000円 | 5,000~1万円 | 5,000~1万円 | |
友人の父母 | 3,000~5,000円 | 5,000~1万円 | 5,000~1万円 |
香典の金額目安
なお、香典にはお札の入れ方や枚数、包んではいけない金額などの細かいマナーがあります。これらのマナーは仏教に由来するものではなく、日本ならではの文化のため、無宗教葬とはいえ守りたいものです。
香典の基本マナーや包んではいけない金額については、こちらの記事で解説しています。
無宗教葬の経験がある葬儀社に相談しよう
無宗教葬は、近年少しずつ選ばれるようになってきた葬儀のかたちです。ただ、いまだ一般的とはいいづらく、親族や故人と親しかった友人・知人の理解を得られるとは限りません。また、菩提寺との関係にも配慮が必要な場合があります。無宗教葬を希望する際は、家族や関係者とよく相談しながら、慎重に判断しましょう。
また、無宗教葬はまだ施行例が少ないため、葬儀社によっては不慣れなこともあります。仏式とは異なり、式の構成や演出を遺族側で考える場面も多いため、自由度が高い反面、準備の負担も大きくなります。
だからこそ、無宗教葬に理解があり、過去の実績がある葬儀社に相談することで、安心して故人らしい見送りを実現できます。
あんしん祭典にはオリジナル葬のプランがあり、無宗教葬に対応可能です。特に都内では菩提寺がなく、お墓があっても霊園を選択する方も増えています。そのため、無宗教葬、僧侶を呼ばない葬儀が増えており、対応実績も多数あります。
あんしん祭典の強みは自社式場を多数保有しているところです。プロジェクションマッピングを使って故人さまとの思い出を大切にする葬儀を、自由な形式で執り行えます。
詳しい費用や式までの流れについては、こちらのページをご確認ください。