神道とは?歴史や仏教との違いや新式葬儀(神葬祭)の注意点をまとめました。神道の起源や歴史、基本概念をはじめ、仏教との共通点・相違点や神社参拝マナー、神葬祭の基本的な流れを解説。記事末にはよくある疑問と回答もあります。
日本には古くから全国各地で神道が根付き、現在でも神社参拝や季節行事などを通じて私たちの生活と深く結びついています。しかし、身近にあるはずの神道の特徴や仏教との違い、神式葬儀(神葬祭)の流れやポイントなどを、系統立てて知る機会はそれほど多くありません。
本記事では、神道の概要や歴史的背景、仏教との共通点や相違点、神式葬儀における注意点などについてまとめます。最後までご覧いただき、神道についての理解を深めてください。
神道の起源と基本概念
神道が歩んできた歴史や神道における神の考え方について解説します。
神道の歴史概要
神道(しんとう)は、日本に古くから伝わる自然崇拝や祖先崇拝が中心にある信仰で、仏教のような特定の開祖や経典はありません。
縄文時代から弥生時代にかけて、稲作や農耕、海や山での狩猟など自然と関わりあう長い年月のなかで、日本人の生活の周囲にある物にはすべて神が宿るとして、自然発生的に生まれました。
日本最古の史書「古事記」や「日本書紀」では、天照大神(あまてらすおおみかみ)や須佐之男命(すさのおのみこと)など多くの神々が登場し、この世界のはじまりや神々の系譜が記されています。こうした神話が、神道の価値観やしきたりの基になっているのです。
その後の飛鳥・奈良時代に日本へ伝来した仏教との共存化・差別化のために神道という名前を付され、朝廷の祭祀や神社の普及によって神道独自の行事や祭礼が現在も形を変えずそのまま受け継がれています。
明治維新後には国家神道として政治体制と深く関わりますが、第二次世界大戦後は国家との分離が進みました。現在では全国に点在する神社とその地の氏子(うじこ)、地域住民などによって、伝統的な祭礼や行事や作法が継承されています。
神道の神と八百万の考え方
太古の日本人は自然を畏敬し、恵みに感謝しながら集団で暮らしてきました。農耕の伝播・発達とともに豊穣を祈願する祭りが催され、神が人間社会を導く存在として崇拝されたのです。
神道を語るうえで欠かせない概念に「八百万(やおよろず)の神」がありますが、これは「無数に多くの神が存在する」ことを意味しています。つまり、山や海、木、川、岩といった自然物だけでなく、人間生活の身近にある道具や建物、また祖先の霊などにも神が宿るという自然観や空気感を表現しています。
神道と仏教の共通点と相違点
仏教の伝来と神道との出会い、双方の共通点・相違点について解説します。
神仏習合のはじまりと現在
6世紀頃に日本へ伝来した仏教は、飛鳥時代以降に貴族や武家へと急速に広まりました。
一方、神道は日本固有の信仰であり、互いに対立するのではなく神仏習合と呼ばれる形で融合や共存が進みました。そのひとつとして、仏教の寺院の境内に神社(鎮守社)が併設されたり、神を仏の化身と見なしたり(本地垂迹説)など、多様な様式で並立共存してきたという特徴があります。
この習合の動きは明治時代の「神仏分離令(神仏判然令)」まで続きました。ただし、現代でも初詣や祈祷、お祭りなどで神社へ参拝することはよくあり、先祖供養はお墓やお寺へ行って仏式で行うなど、神仏習合はいたるところで見られます。
世界観・死生観の違い
神道と仏教では世界観や死生観において異なる部分があります。
世界観は、仏教では「輪廻転生」や「悟り(解脱)」など個人の内面の修行を重視する教えです。一方神道は、人や自然、社会、神々などとの共生を大切にして現世の繁栄や平穏を祈願する教えです。
死生観は、仏式の葬儀では「成仏する」「冥福を祈る」という表現で故人を偲ぶのに対し、神道では死を「穢(けが)れ」と捉えます。そのため、葬儀は神様を祀った神社を穢さないよう神社から離れた場所で行うのが一般的です。
また、仏教では人は死ぬと浄土へ旅立って仏になると考えられますが、神道では死者は守り神となって家族を守るためにこの世に留まり続けると考えられています。
神社参拝のマナーと手順
鳥居と参道の意味や二礼二拍手一礼の作法について解説します。
鳥居と参道の意味
神社の入り口にある鳥居の大きな意味は「神域と俗世を分ける境界線」です。そのため、鳥居をくぐる際には「神聖な空間に入らせていただく」という気持ちで軽く一礼します。
鳥居から拝殿へと向かう道を「参道」と呼び、参道の中央部分は神様の通り道であるため、より正式な作法で参拝するなら参道の端を歩くことです。
二礼二拍手一礼の作法
神社の拝殿前では「二礼・二拍手・一礼」の作法が基本です。まずは軽く一礼して、賽銭箱にお賽銭を納めます。そして以下の手順で拝礼するのが基本マナーです。
※地域や宗派によって異なる場合があります
- 二礼 :深いお辞儀を2回
- 二拍手:両手を肩幅程度に合わせて2回拍手
- 一礼 :もう一度深くお辞儀
拍手には、神様へ感謝の気持ちや祈願の想いを伝える意味があります。リズムをゆったりと整えて打ち鳴らすことで心身が清められ、神と人が一体感を得ると考えられています。
神道の葬儀(神葬祭)の特徴
神道の葬儀(神葬祭)の流れや特徴について解説します。
神式葬儀の基本的な流れ
神道の葬儀は「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれ、仏式とは大きく異なる部分があります。代表的な流れは次の表をご参照ください。
臨終・帰幽奉告(きゆうほうこく) | 故人が神様の元へ帰ったことを、氏神様や神棚へ報告する |
通夜祭(つやさい) | 仏式のお通夜に相当し、遺体が安置された祭壇で神職が祝詞(のりと)を奏上し、遺族や親族は仏式のお焼香に荘乙する玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行う |
遷霊祭(せんれいさい) | 故人の御霊を「霊璽(れいじ)」という木の札に移す儀式を行う |
葬場祭(そうじょうさい) | いわゆる葬儀で、遺族や参列者が玉串奉奠をして故人の御霊を慰める |
火葬祭・埋葬祭 | 火葬場や墓地で簡略化した祭詞奏上を行う |
帰家祭(きかさい) | 自宅へ戻ってすべての儀式終了を報告する |
五十日祭(忌明け) | 仏式の四十九日法要に相当し、この日から正式に穢れが晴れて先祖神と合祀される |
神道では死を穢れと考えるために、汚れを神社に持ち込まないよう葬式は神社で行わないのが通例です。
「香典」ではなく「御榊料」
仏式の葬儀では「香典」という表書きですが、神道葬儀の場合は「御榊料(おさかきりょう)」や「御玉串料(おたまぐしりょう)」などと書きます。
また、香典袋の水引は黒白または双銀(銀一色)の結び切りを使用します。表書きを「御霊前」や「御神前」と表記する場合があるため、まず地域や家庭の慣習を確認し、それに従いましょう。
神道をめぐるよくある疑問
神道をめぐるよくある疑問に回答します。
神道は宗教ではない?
神道は宗教ではなく日本文化であるという意見があります。神道は日本各地で自然発生的に形成されたもので、開祖や教義、経典をはっきり定めない点は確かに宗教の定義と異なります。
しかし、神社で神々を祀って祭祀や儀礼を行うことからも、学術的には宗教に位置づけられます。日本各地の風土や文化に深く根ざし、日本人の精神性と密接につながった民間信仰でありながらも、宗教としての枠組みや特徴を併せ持った存在というのが実態です。
神道の行事と暮らしの関係
正月の初詣、お宮参りや七五三、夏祭りや秋祭りなど、私たちの生活は神社とともにあります。多くの日本人は神道や宗教行事などと深く意識せずに、慣行行事として神道の風習を受け継いでいます。
もともとこれらの行事は、家族や村などの集団全体で自然や祖先、地域社会への感謝を捧げ、五穀豊穣や家内安全、無病息災などを祈願する意味がありました。
神道も仏教も古来の日本から受け継ぐ宗教
神道は日本の風土と歴史のなかで、自然崇拝や祖先崇拝を基盤として伝播・発展してきました。仏教や儒教、キリスト教などの外来宗教と共存しながら、神社を拠点に独自の儀式や祭礼を行って心のより所になっています。
神道は遠い存在でなく私たちの暮らしの側に息づいています。神道への理解を深めることは、日本の伝統や精神性を再認識するきっかけになるでしょう。
また、神社参拝には意味や基本マナーがあり、神葬祭の流れや玉串奉奠および御榊料などの神道独自の儀礼があるため、ひととおり知っておくとよいでしょう。