エンバーミングとは、ご遺体を長期間美しく保つための処置です。本記事ではエンバーミングのメリット・デメリットや必要なケース、流れを解説します。故人をきれいな姿で見送りたい方におすすめです。
エンバーミングとは、ご遺体を生前のような姿に整え、長期にわたって美しく保つための専門的な処置です。故人が感染症で亡くなった場合、ご遺体からの感染を防ぐために行われることもあります。火葬までの時間が空く場合や、安心して故人と触れ合いたいときに選ばれることが多いです。
大切な方との別れは突然訪れることもあり、どう見送るかで心の整理の仕方も変わってきます。最期の時間を、できるだけ穏やかに過ごしたいと願う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、エンバーミングの内容やメリット・デメリット、必要なケースについてわかりやすく解説します。故人をきれいな姿で見送りたい方や、お別れの時間をゆっくり取りたい方は、ぜひ参考にしてください。
エンバーミングとは
エンバーミングとは、故人のご遺体を衛生的に保全し、生前のような姿に整える処置のことです。具体的には、ご遺体の洗浄・防腐処置・化粧・着替えなどを行い、穏やかな表情や肌色を再現します。
処置によって腐敗の進行を防ぎ、一定期間、美しい状態で安置することが可能になります。火葬まで日数が空く場合や、ゆっくりとお別れの時間を取りたいときに選ばれています。
もともとは土葬文化のあるアメリカで広く行われてきましたが、日本でも需要が高まり、エンバーミングを希望するご遺族が増えてきました。
エンゼルケアとの違い
エンゼルケアは、ご遺体の清拭や着替え、簡単なメイクなどを通して、安らかな表情でお別れできるように整える処置です。看護師や介護職の方が行うことも多いです。
一方のエンバーミングは、より専門的で踏み込んだ内容になります。体の中に薬剤を入れて腐敗を防ぎ、感染症のリスクも抑えながら、生前に近い姿に整えることが目的です。
この処置は「エンバーマー」と呼ばれる資格を持つ専門家だけが担当します。ご遺体の姿をきれいに整えるという目的はエンゼルケアと同じですが、長期保全を目的としている点が異なります。また、その手法も大きく異なります。
エンバーミングのメリット
エンバーミングには、ご遺体を美しく保ち、安全に安置できるメリットがあります。
元気だった頃の姿でお別れできる
エンバーミングを行うことで、血色や肌の張りが整えられ、生前に近い穏やかな表情になります。冷たく硬直した印象がやわらぎ、ご遺族にとっても心穏やかにお別れしやすくなります。
事故や病気で外見に変化があった場合でも、できる限り元の面影を再現できるため、最期の時間をきちんと過ごしたい方におすすめです。
感染症の心配なく故人と触れ合える
エンバーミングでは殺菌・消毒の処置が行われるため、ご遺体からの感染リスクを大きく抑えられます。マスクや手袋を外して、安心して顔を近づけることも可能になります。
小さなお子さまや高齢のご家族がいる場合でも、安心して故人に触れられるのは大きな安心材料です。感染症で亡くなった場合、エンバーミングを検討してみましょう。
ご遺体を冷やさず保管できる
専門の処置を施すことで腐敗の進行を防げるため、ドライアイスや冷却装置に頼らずご遺体の状態を保てます。冷気による硬直や黒ずみもなく、自然な状態で対面できます。
火葬までに数日かかる場合や、自宅での安置を希望する場合におすすめです。落ち着いてお別れの準備を整えられます。
エンバーミングのデメリット
エンバーミングには多くのメリットがある一方で、費用や手間、心理的な抵抗感などの面でデメリットも存在します。
エンゼルケアに比べて費用が割高
エンバーミングは専門的な技術と設備を必要とするため、10万円〜20万円ほどの費用がかかるのが一般的です。エンゼルケアの費用は病院で施す場合は5,000~2万円ほど、葬儀社の場合で2万~210万円ほどです。これと比べて、数倍にあたる金額です。
限られた予算で葬儀を進めたい場合や、火葬までの日数が短く十分なお別れの時間が取れない場合は、費用対効果の面からも慎重に考えましょう。
処置に時間がかかる
エンバーミングには数時間かかるうえ、専門施設への搬送や準備を含めると、全体で1日以上かかることもあります。すぐにお通夜や葬儀を行いたい場合には不向きです。
時間に余裕がないケースや、すでに葬儀のスケジュールが決まっている場合、タイミングによっては利用が難しいこともあります。
ご遺体にメスが入る
エンバーミングでは、体内に薬剤を循環させるために動脈や静脈を切開する必要があります。ご遺体にメスを入れなければならず、抵抗を感じるかもしれません。
宗教的な理由や遺族の気持ちによってはおすすめできません。「体に手を加えないでほしい」という思いがあるなら、それを大切にしましょう。
エンバーミングが必要なケース
エンバーミングはすべての方に必須というわけではありませんが、特に適しているケースもあります。ここでは、エンバーミングが適しているケース、必要なケースを4つ紹介します。
感染症により亡くなった場合
HIVや結核、肝炎など、感染症が原因で亡くなった場合、ご遺体からの二次感染を防ぐための対応が求められます。葬儀の場に高齢者や体力の弱い方が参列する場合は特に注意が必要です。
エンバーミングでは殺菌や消毒の処置が徹底されるため、ご遺体に触れることがあっても感染のリスクを最小限に抑えられます。
ご遺体を空輸する場合
故人が遠方で亡くなった場合、飛行機でご遺体を運ぶこともあります。特に海外からの搬送や、離島から本土へ移すケースがこれに当たります。
空輸の場合、ご遺体をドライアイスで冷やすことはできません。搬送に日数がかかることもあり、エンバーミングが必要になることも多いです。
火葬までに時間がかかる場合
火葬までに数日以上の間が空く場合、ご遺体の状態維持が難しいです。親族の到着を待つ場合や、日程調整で葬儀までに時間がかかる場合などがこれに当たります。
エンバーミングをすれば、長期間にわたってご遺体を美しく保てます。ドライアイスに頼らず自然な姿で安置できるのが大きな利点です。
ご遺体の損傷が激しい場合
事故や火災、病気の影響などで、外見に損傷がある場合は、ご遺体の処置に高度な技術が求められます。外見が大きく変わってしまったとき、面会をためらう遺族も少なくありません。
エンバーミングでは、必要に応じてご遺体の修復も行います。生前に近い姿に整え、穏やかな表情でお別れできます。
エンバーミングの流れ
エンバーミングはどのように行われるのか、いくつかの工程に分けて流れを紹介します。
ご遺体を整える
まずはご遺体を洗浄し、髪や爪の手入れ、体の清拭などを行います。必要に応じて、鼻や口、目を閉じる処置もここで行われます。
この工程は、次に行う処置を清潔な状態で進めるための準備であり、安らかな表情や姿勢を整えるためにも大切です。
保全処置を施す
次に、動脈や静脈から専用の薬剤を注入し、腐敗の進行を防ぎます。体内の消毒も必要に応じて行われます。
この処置によって、長期間にわたってご遺体を清潔で美しい状態を保てます。感染症を予防するためにも、この処置は重要です。
着替えと死化粧
処置が終わったあとは、故人の愛用していた服や死装束に着替え、死化粧を施して生前に近い姿へと整えます。
最後の対面が穏やかなものになるように、ご遺族の希望をもとに細やかな配慮をしながら仕上げていく工程です。
感染症や事故でのお見送りにはエンバーミングを
エンバーミングは、ご遺体を清潔に保ち、生前に近い姿に整えるための専門的な処置です。洗浄や消毒、体内への薬剤注入、死化粧などを通して、美しく穏やかな状態でのお別れを可能にします。
感染症による死去や事故、ご遺体の長距離搬送が必要な場合など、特別な事情があるときには特におすすめです。安心して故人に触れ、心を込めて見送りたい方は、エンバーミングを検討してみてください。
あんしん祭典では、ご遺体の納棺時にエンゼルケアも行いますが、ご希望に応じてエンバーミングも提供可能です。
事故や感染症で大切な人を亡くした方、故人様を余裕をもってお見送りしたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。