エンゼルケアは故人のご遺体をきれいに整える処置です。故人の尊厳を保ち、遺族の悲しみを癒すために行われます。本記事ではエンゼルケアの流れや目的、注意点などを詳しく解説します。大切な方を見送る際に、どのようなケアが行われるのか知りたい方は、ぜひお読みください。
エンゼルケアは、故人の尊厳を保ち、遺族の悲しみを癒すための大切なケアです。医療機器の取り外しや清拭、死化粧などを行い、ご遺体を安らかな状態に整えます。
遺族は大切な人を亡くした悲しみの中、葬儀の準備をはじめさまざまなことを決めなければなりません。エンゼルケアについても「何から考えれば良いのだろう?」「どんなことに気を付ければ良いのだろう?」と不安に感じている方もいるかもしれません。
本記事ではエンゼルケアの流れや目的、注意点などを詳しく解説します。エンゼルケアの内容や費用、立ち会いについてなど、知っておくべきことがわかります。大切な方を見送るにあたって、エンゼルケアについて詳しく知りたい方、どのような準備が必要なのか不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
エンゼルケアとは
エンゼルケアとは、故人の尊厳を保ち、遺族の悲しみを癒すために行われる一連の処置です。故人の身体を清拭し、必要に応じて化粧を施し、安らかな表情を整えます。これにより、故人が生前の姿に近い状態で、家族とのお別れの時を迎えることができるようにします。
エンゼルケアは、故人の尊厳を守るだけでなく、遺族の心のケアにも重要な役割を果たします。悲しみの中にある遺族にとって、故人の穏やかな姿を見ることは、心の支えとなるでしょう。
湯灌との違い
湯灌(ゆかん)は、故人の身体を洗い清める儀式です。日本では古くから、故人の魂を送るために行われてきました。
湯灌では、故人の身体をぬるま湯で洗い、清めます。これには、故人の穢れを落とし、清らかな状態で送り出すという意味があります。エンゼルケアは清拭や化粧などを含めた、より広範囲な処置を指します。
湯灌が宗教的な意味合いを持つ儀式であるのに対し、エンゼルケアは故人の尊厳を保ち、遺族の悲しみを癒すことを目的としたケアといえるでしょう。湯灌はエンゼルケアの一部として行われることもあります。
エンバーミングとの違い
エンバーミングは、故人のご遺体を長期保存するための処置です。遺体の血液を保存液と交換し、防腐処理を行います。これにより、ご遺体の腐敗を遅らせ、長期間保存することが可能になります。
エンバーミングは、海外の土葬をする国では一般的な処置です。日本では、遠方からの親族が弔問に訪れるまでの時間をつくったり、故人との時間をゆっくりと過ごしたりしたい場合に行われます。
エンバーミングがご遺体の保存を目的とするのに対し、エンゼルケアは故人の尊厳を守ったり、遺族の心のケアをしたりすることを目的としています。
また、エンバーミングを行うには専門の資格が必要です。エンバーミングは専門の資格と技術を持ったエンバーマーと呼ばれる人の手によって行われますが、エンゼルケアを行うために必須の資格はありません。
エンゼルケアをする人
エンゼルケアは、故人の状態や亡くなった場所によって、さまざまな人が行います。病院では看護師が中心となり、自宅では葬儀社のスタッフや納棺師が行うことが多いです。介護施設では、介護職員がエンゼルケアを行う場合もあります。
遺族が自らエンゼルケアを行うケースもあります。遺族自身の手でエンゼルケアをしたり、立ち会ったりすることは、故人の死を受け止めるためのワンステップにもなるでしょう。
このように、エンゼルケアはさまざまな人によって行われます。エンゼルケアを行ううえで必須の資格はありませんが、それぞれの立場によって、エンゼルケアに対する役割や視点が異なります。
看護師
病院で亡くなった場合、エンゼルケアは主に看護師が行います。看護師は医療的な知識と技術を持っているため、口腔内の洗浄や便の処置など、医学的なケアを含めたエンゼルケアが可能です。このような処置は、感染症を予防するうえで大切です。
納棺師
納棺師は、故人の身体をきれいに整え、棺に納める人です。納棺師は故人の尊厳を重んじ、丁寧な手つきでエンゼルケアをしてくれるでしょう。特に、故人の表情を整え、安らかな顔に見せる技術に長けています。
また、納棺師は遺族の気持ちに配慮しながら、儀式の進行や作法について説明してくれます。故人を送るための儀式全体を通して、遺族をサポートする役割を担っているといえるでしょう。
エンゼルケアの目的
エンゼルケアは、故人の尊厳を保持し、遺族の悲しみを癒すために行われます。その目的は多岐に渡りますが、大きく分けると感染症の予防、ご遺体をきれいにする、遺族の心のケアの3つに集約されます。
感染症の予防のため
人が亡くなると、身体の免疫機能が停止し、腐敗が始まります。体液や血液などが漏れ出すことで、感染症のリスクも高まります。
エンゼルケアでは身体を清拭し、適切な処置を施すことで、これらの体液の漏出を防ぎます。これにより、遺族や葬儀関係者など、故人に接するすべての人の感染リスクを抑えます。
故人との最後の時間を安心して過ごすために、エンゼルケアは欠かせません。
ご遺体をきれいにするため
病気や怪我などによって亡くなった場合、故人の身体は生前の健康な状態とは異なっているかもしれません。エンゼルケアでは清拭や整髪、必要に応じて化粧を施すことで、故人の容姿を元気だった頃の状態に近づけます。
これにより、故人の尊厳を保ち、遺族が穏やかな気持ちで故人とのお別れができるようにします。
遺族の心のケアのため
大切な人を亡くした遺族は、深い悲しみの中にいます。エンゼルケアは故人の尊厳を保つだけでなく、遺族の心のケアという役割も担っています。
きれいになった故人の姿を見ることは、遺族の悲しみを和らげてくれるでしょう。また、エンゼルケアを通して故人の身体を労わってあげることは、遺族の心のケアにつながります。エンゼルケアは、遺族が悲しみを乗り越え、前へ進むための支えとなるでしょう。
エンゼルケアの流れ
エンゼルケアの流れは故人の状況や安置場所によって異なりますが、一般的には医療機器の取り外しから始まり、口腔ケアや清拭、死化粧へと進みます。これらの処置は、故人の尊厳を守るだけでなく、感染症予防の観点からも重要です。
医療機器を取り外す
病院で亡くなったご遺体は、点滴やチューブなどの医療機器が装着されたままの状態です。エンゼルケアの最初の段階として、これらの医療機器を取り外します。
口腔ケアや清拭
医療機器の取り外し後、口腔ケアや清拭を行います。口腔ケアは、口の中を清潔に保ち、乾燥を防ぐために行います。清拭は、全身を拭いて清潔にする作業です。アルコールに浸した脱脂綿で身体を拭きます。
死化粧
清拭後、必要に応じて死化粧を行います。死化粧は、故人の顔色を整え、生前の姿に近づけるための化粧です。ファンデーションや口紅などで顔色を整えたり、髭を剃ったりします。
エンゼルケアの注意点
故人の尊厳や遺族の心のケアのために、エンゼルケアは大切ですが、いくつか注意すべき点があります。スムーズにエンゼルケアを行うためにも、後悔しないためにも、次の2つの点に気をつけましょう。
立ち合いたい場合は早めに伝える
病院や葬儀社にもよりますが、エンゼルケアに遺族が立ち会うことは可能です。ただ、特に病院のエンゼルケアは死後すぐに行われることが多く、気づかない間に済んでいたということもあります。立ち合いたい場合は早めにその旨を伝えましょう。
保険適用外のため費用は全額負担
エンゼルケアは医療行為ではないため、健康保険の適用外です。そのため、エンゼルケアにかかる費用は全額自己負担となります。
費用はエンゼルケアの内容や病院・葬儀社によって異なりますが、病院の場合で5,000~2万円、葬儀社の場合で3万~10万円ほどです。
故人を安心して見送るために、エンゼルケアは大切
エンゼルケアは、故人の尊厳を保ち、遺族の悲しみを癒すための処置です。感染症を防ぐためにも、エンゼルケアは大切です。
大切な人を亡くした悲しみは深く、受け入れるには時間がかかります。エンゼルケアを通して故人のきれいになった姿を見ることは、遺族にとって心の支えとなり、故人の死を受け入れる手助けとなるでしょう。
あんしん祭典では、ご遺体の納棺時に湯灌(ゆかん)を行っています。この際、エンゼルケアも行います。ご遺体を沐浴させる湯灌を通して、この世での汚れを清めるとともに、故人を労わることができると考えています。
エンゼルケアや湯灌だけでなく、ご遺体を長期保存するためのエンバーミングも提供可能です。
大切な方をしっかりと労わってあげたい、故人様を余裕をもってお見送りしたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。