花祭り(灌仏会)はお釈迦様の誕生を祝う仏教行事です。本記事では花祭りの由来や歴史、当日の過ごし方、甘茶やお釈迦様に関する豆知識を紹介。花祭りについて知りたい方、行事に参加してみたい方におすすめです。
花祭り(灌仏会)は、お釈迦様の誕生を祝う仏教の行事です。毎年4月8日頃に全国のお寺で行われ、花で飾ったお堂(花御堂)に誕生仏を安置し、甘茶をかけてお祝いします。春の訪れを告げる華やかな祭りとして親しまれています。
「花祭り」という名前は聞いたことがあっても、「具体的に何をするの?」「なぜ甘茶をかけるの?」など、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。お寺の行事と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
本記事では、花祭りの由来や歴史、当日の主な行事、そして知っていると花祭りがもっと楽しくなる豆知識まで、わかりやすく解説します。花祭りの意味や楽しみ方を知りたい方、今年はお寺に足を運んでみたいと考えている方は、ぜひお読みください。
花祭りとは
花祭りとは、お釈迦様の誕生を祝う仏教行事です。正式には灌仏会(かんぶつえ)と呼ばれます。これは仏教の宗派に関わらず行われる大切な日です。多くの寺院で、お釈迦様の誕生を祝う法要やイベントが開催されます。
花祭りの時期
花祭りは、お釈迦様が生まれたとされる4月8日に行われます。この時期は桜をはじめ多くの花が咲き誇る季節にあたります。そのため「花祭り」という名前で親しまれるようになりました。地域によっては5月8日に行う場所もあります。
花祭りのさまざまな呼び名
花祭りは広く知られた名称ですが、他にもさまざまな呼び方があります。地域や宗派によって、以下のような名前で呼ばれることがあります。
- 灌仏会(かんぶつえ)
- 仏生会(ぶっしょうえ)
- 浴仏会(よくぶつえ)
- 降誕会(ごうたんえ)
- 龍華会(りゅうげえ)
- 花会式(はなえしき)
花祭りの歴史
お釈迦様の誕生日を祝う習慣は、古くインドにもありました。しかし、現在のような花祭りの形式は、後に中国で始まったとされます。それが仏教の伝来と共に日本へ伝わりました。
日本で最初に花祭り(灌仏会)が行われたのは、西暦606年とされています。これは元興寺(がんごうじ)での記録に残っています。その後、平安時代には宮中の恒例行事となり、やがて鎌倉時代以降、民間にも広く浸透していきました。江戸時代には寺子屋の普及とともに、子どもたちが参加する行事として定着したようです。
花祭りが開かれる場所
花祭りは、全国各地の仏教寺院や、仏教系の幼稚園や学校で開かれます。宗派を問わず多くのお寺が、4月8日を中心に催しを行います。
大きな有名な寺院では、盛大な法要や稚児行列が見られることがあります。一方、地域の小さなお寺でも、心のこもった花祭りが営まれています。
寺院によっては、花御堂(はなみどう)を門前に設置し、誰でも甘茶をかけられるように配慮しています。また、お寺の周辺の商店街などで、関連イベントが開催されることもあります。
花祭りでやること
花祭りでは、お釈迦様の誕生を祝うためのさまざまな行事が行われます。これらは古くからの伝統を受け継ぐものです。代表的なものとして、誕生仏への甘茶かけや稚児行列などがあります。
誕生仏の安置
花祭りでは、まず花御堂(はなみどう)と呼ばれる小さなお堂を設けます。これは、たくさんの花で飾られた美しいお堂です。その中央に、お釈迦様が生まれた時の姿を表す誕生仏の像を安置します。像は右手で天を、左手で地を指すポーズを取っています。
誕生仏に甘茶を注ぐ
安置された誕生仏に、ひしゃくで甘茶(あまちゃ)を注ぎかけるのが、花祭りの中心的な儀式です。
これは、お釈迦様が生まれた時に九頭の龍が天から現れ、甘露の雨を降らせたという伝説に由来します。この甘露が甘茶に見立てられているわけです。甘茶をかける行為には、お釈迦様の誕生祝いと、子どもの健やかな成長への願いが込められています。
稚児行列
大きな寺院の花祭りでは、稚児行列(ちごぎょうれつ)が行われることがあります。これは、華やかな衣装を着た子どもたちが、お寺の周辺や境内を練り歩くものです。子どもたちの健やかな成長を祈願する意味合いがあります。色とりどりの衣装は、見る人の目を楽しませてくれるでしょう。
白象の模型を引き歩く
花祭りの行事の一つとして、白い象の模型を引くことがあります。これは、お釈迦様の母である摩耶夫人の夢に基づいています。夫人は、お釈迦様を身ごもる前に、白い象が胎内に入る夢を見たと伝えられます。
このような由来から、白い象は古来より吉兆のしるしと考えられているため、誕生を祝う花祭りで用いられるようになりました。
花祭りに関する豆知識
花祭りには面白い豆知識がいくつかあります。行事の背景にある伝説や言葉の意味を知ると、花祭りをより深く楽しめるでしょう。
花祭りと呼ばれる理由
花祭りという名称は、主に2つの理由から来ています。一つは、お釈迦様の誕生を祝う4月8日頃が、花々が咲き乱れる季節だからです。もう一つは、誕生仏を安置するお堂を多くの花で飾る「花御堂」に由来します。お釈迦様の誕生時に花が咲き乱れたという伝説もあります。
天上天下唯我独尊の意味
「天上天下唯我独尊(てんじょうてんげゆいがどくそん)」は、お釈迦様が誕生直後に唱えたとされる言葉です。これは「天上天下において、私はただ一人の、誰とも代わることのできない尊い存在」という意味を持ちます。
これは単なる自己賛美ではありません。他者との比較をする必要はなく、すべての命が持つ平等に尊いということを表しています。
お釈迦様が生まれてすぐ7歩歩いた意味
お釈迦様が生まれてすぐに7歩歩いたという伝説があり、これにも深い意味があります。
仏教では、私たちは六道(ろくどう)と呼ばれる6つの迷いの世界を輪廻転生すると考えます。その6つの世界(地獄道・餓鬼道・畜生道・修羅道・人間道・天道)を超えることを、7歩目で示したのです。これは迷いの世界からの解脱を象徴しています。
花祭りで振る舞われる「甘茶」とは
花祭りで誕生仏にかけたり飲んだりする甘茶は、ユキノシタ科のアマチャの葉を加工して作られます。砂糖を加えていないのに、自然な甘みがあるのが特徴です。
伝説ではお釈迦様の誕生時に甘露の雨が降ったとされ、それにちなんで用いられます。飲むと無病息災のご利益があると信じられてきました。カフェインは含まれておらず、抗アレルギーや鎮静などの作用もあるため、子どもや妊婦でも安心して飲めます。
花祭りに参加してみよう
花祭りは、お釈迦様の誕生を祝い、春の訪れを感じられる美しい行事です。4月8日頃に、お近くのお寺を訪ねてみてはいかがでしょうか。
花御堂に安置された誕生仏に甘茶をかける体験は、心に残るものとなるでしょう。お子さんがいるなら、稚児行列に参加してみるのもいい思い出になります。
なお、開催日時や内容は寺院によって異なるため、事前に確認してみましょう。