葬儀一式費用は50万~100万円が最多で、150万円以内が全体の73.9%を占めます。本記事では一般葬や家族葬など、葬儀の形式別の費用や内訳、節約のコツまで解説。費用相場や負担の減らし方が知りたい方に役立つ記事です。
葬儀の費用は、形式によって大きく異なります。とくに仏式葬儀で宗教者にお布施を渡す場合、葬儀一式費用と合わせて200万円近くになることもあります。
できるだけ費用は抑えたいけれど、大切な人をきちんと見送りたい。その気持ちとのバランスに悩み、「どこまでお金をかけるべきなのか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、葬儀費用の相場や形式別の目安額、内訳、費用を抑えるコツまで詳しく解説します。葬儀にかかる費用の全体像を知りたい方、無理のない範囲で納得のいく葬儀を行いたい方に向けた内容です。
葬儀費用は150万円以内が73.9%
一般財団法人日本消費者協会の調査によると、葬儀費用の総額が150万円以内に収まったケースは全体の73.9%を占めています。なお、葬儀費用としてどのくらいのお金をかける人が多いのかは、次のグラフのとおりです。

費用には地域差や葬儀の形式による違いもありますが、近年は家族葬や直葬など、比較的費用を抑えた形式を選ぶ人が増えており、全体の相場も少しずつ下がる傾向にあります。
葬儀一式費用にお布施は含まれない
葬儀費用は大きく2つに分けられます。「葬儀一式費用」と「お布施」の2つです。
葬儀一式費用とは、祭壇や棺、搬送、火葬、進行スタッフなど、葬儀を執り行うために必要な基本サービスにかかる費用です。一方、お布施は僧侶など宗教者へのお礼として渡す金銭であり、葬儀社に支払う費用とは別に用意する必要があります。
つまり、葬儀社の見積もりの中にお布施は含まれていません。日本では仏式の葬儀が一般的で、葬儀の際には僧侶を呼んで読経してもらったり、戒名を付けてもらったりします。葬儀社の出す葬儀一式費用の見積もりに加え、お布施の分のお金が必要なことを覚えておきましょう。
なお、それぞれの詳細な内訳や金額目安は、後ほど紹介します。
葬儀費用を負担するのは喪主か施主
葬儀の費用を実際に支払うのは、喪主や施主と呼ばれる立場の人です。
喪主とは、葬儀全体の代表者であり、遺族を代表して参列者への対応やあいさつなどを行う役割があります。一方、施主は費用面の責任を持つ人で、葬儀代を実際に負担する立場です。
両者が同一人物であることもあれば、別々の場合もあります。例えば、喪主は配偶者が務め、故人の兄弟が施主となり費用を出す、というケースもあります。
葬儀の形式ごとの費用目安
葬儀にはさまざまな形式があり、それぞれ内容や費用に違いがあります。ここでは代表的な6つの形式について、概要と費用の目安を紹介します。
一般葬
一般葬とは、遺族や親族だけでなく、友人・知人・勤務先関係者など、幅広い参列者を招いて行う葬儀です。お通夜と葬儀・告別式の両方を執り行い、宗教儀礼を中心に進めます。
一般葬の費用目安は55万~150万円です。参列者が多いため、会場規模や接待費用がかさむ傾向にあります。故人が社会的に広く関係を持っていた場合に選ばれることが多い葬儀形式です。
家族葬
家族葬は、遺族や親しい親族・友人のみで静かに見送る小規模な葬儀です。お通夜と葬儀・告別式の両方を行いますが、参列者を限定することで、落ち着いた雰囲気のなかで故人とお別れできます。
家族葬の費用目安は45万~130万円です。規模が小さいため比較的費用を抑えられますが、基本的な葬儀内容は保たれるため、近親者だけで丁寧に送りたい場合に適しています。
一日葬
一日葬は、お通夜を省き、葬儀・告別式と火葬を1日で行う葬儀の形式です。時間的・身体的負担が少なく、近年需要が高まっています。宗教儀礼を取り入れるかどうかは希望により選べます。
一日葬の費用目安は40万~100万円です。お通夜を行わない分費用を抑えられ、参列者や遺族の負担も少なくなります。高齢の家族が多い場合や日程の調整が難しいケースに向いています。
直葬(火葬式)
直葬(火葬式)は、お通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみを行うシンプルな葬儀です。宗教者を呼ばないケースも多く、儀礼的な要素は最低限にとどまります。
直葬(火葬式)の費用目安は8万~30万円です。葬儀のなかでは最も費用を抑えられる形式です。経済的な事情や本人の意向により、形式にはこだわらない場合に選ばれることが多いです。
社葬
社葬は、企業が主催して行う葬儀です。故人の家族と会社が合同で執り行う「合同葬」や、会社が単独で施主となる「単独社葬」などがあります。会場はホールやホテルなど、大規模になることが一般的です。
社葬の費用目安は120万~300万円です。費用は高額になりやすいですが、ほぼ全額を会社側が負担します。会社の対外的な責任や功労者への敬意を表す場として、役員や創業者などの葬儀に用いられます。
オリジナル葬(無宗教葬)
オリジナル葬は、一般的な形式にとらわれずに行われる葬儀です。音楽や映像演出、生前の趣味を反映させた空間づくりなど、自由なスタイルで行う葬儀です。無宗教形式で行われることも多く、演出に重点を置くのが特徴です。
オリジナル葬の費用目安は50万~140万円です。演出内容によって金額に幅がありますが、故人らしいお別れを演出したいと考える遺族に選ばれることが多いです。
葬儀費用の内訳と費用目安
葬儀費用は一括りに語られがちですが、実際にはいくつかの項目に分かれています。それぞれの費用がどのような目的で発生するのかを理解することで、全体の金額に対する見通しが立てやすくなります。
葬儀そのものの費用
葬儀そのものの費用とは、葬儀を実施するにあたり必要な基本的サービスや物品にかかる費用のことです。葬儀社が提供するプランの中心となる部分で、式場の手配から火葬までの流れを支えるために必要なお金です。
具体的に含まれる費用には、次のようなものがあります。
- 祭壇の設営費用
- 棺や骨壺などの葬具代
- 搬送車や霊柩車の使用料
- ドライアイスや保冷剤などの遺体保存費用
- 式場や火葬場の使用料
- 司会進行などのスタッフ人件費 など
飲食接待費
飲食接待費とは、葬儀の参列者への接待にかかる費用のことです。主に通夜振る舞いや精進落としなどの飲食代、さらに返礼品や香典返しなどの品物代もこの項目に含まれます。
具体的に含まれる費用には、次のようなものがあります。
- お通夜や告別式後に提供する料理代
- 通夜返礼品(会葬御礼)
- 香典返し(忌明け後に送る返礼品) など
※返礼品と香典返しの違い
返礼品は参列当日に手渡すもので、香典返しは四十九日以降に改めてお礼として贈る品です。いただいた香典の金額が多かった相手に対し、香典額の3分の1~半分の金額の香典返しを贈るのが一般的です。
宗教者へのお礼(お布施)
宗教者へのお礼とは、僧侶や神職、牧師など宗教者に対して感謝の気持ちとして渡す金銭のことです。仏式では「お布施」と呼ばれ、読経や戒名授与、火葬場での導師勤めなどに対して渡すのが一般的です。
具体的に含まれる費用には、次のようなものがあります。
項目 | 概要 | 金額目安 |
お布施 | お通夜や葬儀、枕経などの読経料 | 3万~5万円ほど |
戒名料 | 戒名を付けてもらったお礼。戒名のランクにより金額目安が変わる | 10万~100万円以上 |
御車代 | 宗教者の移動にかかるお金 | 5,000~1万円ほど |
御膳料 | 食事に代えて渡す金銭。宗教者が会食に参加しない場合に渡す | 5,000~1万円ほど |
宗教者へのお礼
実際の葬儀費用が見積もりと異なる理由
葬儀費用は事前に見積もりを出しても、実際の支払額と差が出ることがあります。その理由を理解しておくことで、想定外の出費を抑えやすくなるでしょう。葬儀に対する納得感も高まります。
オプション追加
葬儀には基本プランが用意されていますが、希望に応じて追加サービスを申し込めます。これが「オプション追加」です。故人や遺族の想いを反映するため、プラン外の演出を加えることも多く見られます。
具体例としては、故人の身なりを整える「湯灌(ゆかん)」、防腐処置を行う「エンバーミング」、遺影写真の特別加工や会場装飾の強化、BGMの演出などです。
費用面で納得感を得るには、追加したい内容が本当に必要かどうかを冷静に見極めることが大切です。事前にどのようなオプションがあるのかを確認し、希望内容と予算を照らし合わせて検討しましょう。
グレードアップ
「グレードアップ」とは、基本プランに含まれる備品やサービスを、より上質なものに変更することです。見た目や質感にこだわることで、より丁寧で立派な葬儀に仕上げたいという希望から選ばれます。
例えば、棺や骨壺の素材を高級なものにしたり、祭壇の規模や装飾をより華やかにしたりするケースがこれにあたります。また、会葬礼状のデザインや紙質を変更することも含まれます。
費用面で後悔しないためには、希望と現実のバランスを意識することが大切です。グレードアップの内容が費用にどう反映されるのかを担当者に確認し、目的に見合った選択かどうかを冷静に判断しましょう。
参列人数に応じた変動
葬儀費用は、参列者の人数によっても大きく変動します。とくに飲食の提供や返礼品の準備など、人数に応じて単価が積み上がる部分に影響が出やすくなります。
例えば、想定よりも多くの人が参列した場合、通夜振る舞いの料理や精進落としの数を増やす必要があります。返礼品や香典返しも追加で準備しなければなりません。
事前にある程度の参列者数を見積もり、余裕を持った準備をしておくことが大切です。返礼品を多めに用意し、余った分は葬儀社に返すという対応もあります。また、追加が発生した場合は都度確認し、対応内容と金額を把握しておくようにしましょう。
状況に応じた変動
葬儀の状況によって、見積もりに含まれていなかった費用が発生することがあります。これは遺体の搬送距離や保全日数など、実際に葬儀を進めるなかで変化する要素があるためです。
例えば、故人が亡くなった場所が遠方だった場合には、搬送距離に応じた追加料金が発生します。また、火葬までの日数が長引くと、ドライアイスや安置施設の使用料が増えることもあります。
状況による追加費用が発生しうることを、事前に知っておきましょう。見積もりの際には、「変動の可能性がある項目」についても説明を受けておくと安心です。
葬儀費用の負担を抑えるコツ
葬儀には多くの費用がかかりますが、工夫次第で負担を軽くできます。ここでは、無理なく費用を抑えるための具体的な方法を紹介します。
複数社から見積もりを取る
葬儀社によって費用の設定やプラン内容には差があります。事前に複数社から見積もりを取ることで、相場を把握し、自分たちに合ったサービスを選びやすくなります。比較検討することが費用削減の第一歩です。
事前相談を活用する
生前のうちに葬儀について相談しておくと、希望や予算に合ったプランを冷静に選べます。とくに、本人の希望に沿った葬儀を実現できるので、遺族の納得感も高まります。急な手配に比べて不要なオプションを避けやすくなり、結果として無駄な出費を抑えられるでしょう。
事前相談に興味がある方は、こちらの記事をお読みください。事前相談ではどんなことがわかるのか、何を決めればいいのかを紹介しています。
葬儀の事前相談はいつする?今でしょ!わかることや大切な理由、決めること
規模縮小や簡略化を考える
参列者を絞って小規模にしたり、お通夜を省略して一日葬にしたり、葬儀の規模や内容を見直すことで大きく費用を抑えられます。宗教儀礼を重視しないなら、故人とのお別れの形にこだわりすぎず、実情に合った選択をするのも良いでしょう
飲食や葬祭用品のグレードダウンを考える
料理や返礼品、棺や骨壺などの葬祭用品はグレードによって価格が変わります。高品質なものを選ばなくても失礼にあたるわけではないため、過剰にならない範囲で内容を見直すのも費用削減の一つの方法です。
無宗教葬にする
宗教者を招かず、形式にとらわれない自由な葬儀とする「無宗教葬」を選べば、お布施などの宗教儀礼にかかる費用を節約できます。演出や内容も柔軟に決められるため、費用と希望のバランスが取りやすくなります。
ただし、無宗教葬は自由葬とも呼ばれ、形式に決まりがありません。そのため、自分たちで内容や信仰を考えなければならず、仏式葬儀に比べて準備の負担が大きくなります。自由であるため内容も千差万別で、相場というものもありません。
無宗教葬を選ぶなら、準備にどのくらいの時間と労力をかけられるのか、結果的に費用が安くなるのか、よく考えてからにしましょう。
葬儀保険を活用する
葬儀費用に備えるための「葬儀保険」を活用すれば、急な支出に備えられます。月々数千円から加入でき、万一の際にまとまった費用が受け取れるため、金銭的な不安を軽くできます。
香典を葬儀費用に充てる
参列者からの香典は、「お悔やみの気持ち」としてだけでなく、「残された家族を支えるため」に渡されるものです。当然、香典を葬儀費用に充てることも問題ありません。香典を受け取る方針にしておけば、実質的な自己負担を軽くできます。
補助金を活用する
公的制度の中には、葬儀にかかる費用の一部を補助してくれるものがあります。条件を満たせば申請可能なため、制度の存在を知っておくことが大切です。これらの補助金については、後ほど詳しく解説します。
互助会に入会する
葬儀費用の積み立て制度である「互助会」に入っておくと、必要なときに会員価格でサービスを受けられます。月々の掛け金で備える仕組みのため、急な出費を抑えることもできます。複数のサービス内容を比較して選ぶのがポイントです。
葬儀費用に使える補助金
経済的な負担を軽減するために、葬儀費用に充てられる公的・民間の補助制度を活用する方法があります。ここでは代表的な2つの制度をご紹介します。
加入保険に応じた給付金
故人が生前に加入していた健康保険から、葬儀費用の一部を補助する給付金が支給される場合があります。受け取れるかどうかは保険の種類や自治体、葬儀の内容によって異なります。
例えば、国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた人が亡くなった場合、葬祭費として1万~7万円の支給を受けられるケースがあります。また、民間の生命保険に加入していた場合は、保険金を葬儀費用に充てられます。
公的な保険の給付金の申請期限は、基本的に死亡した日もしくは葬儀を行った日から2年です。早めに確認・申請しましょう。
生活保護で利用できる「葬祭扶助制度」
生活保護を受けている方や、遺族に収入がなく遺族以外が葬儀を手配する場合は、「葬祭扶助制度」という公的支援を受けられる可能性があります。これは最低限の葬儀を行うために必要な費用を、自治体が負担する制度です。支給金額は最大20万円ほどです。
火葬や搬送、棺、骨壺など最低限の内容が対象となり、一般的な葬儀よりも簡素な形式となります。利用するには福祉事務所への事前相談が必要なため、まずは地域の担当窓口に問い合わせましょう。
なお、支給されたお金は福祉事務所から葬儀社に支払われます。申請者が直接お金を受け取ることはありません。
葬儀費用が払えないときの対処法
急な葬儀でまとまった費用を準備できない場合でも、いくつかの対処法があります。ここでは現実的な選択肢として検討できる2つの方法を紹介します。
分割払いができる葬儀社を選ぶ
葬儀費用の支払いが難しい場合は、分割払いに対応している葬儀社を選ぶことで、経済的負担を軽減できます。支払い回数や金利、審査の有無などは葬儀社によって異なるため、事前に条件を確認しましょう。
この方法は、今すぐにはまとまった現金を用意できないが、将来的に分割で返済していける見込みがある人に向いています。ただし、無理のない返済計画を立てることが大切です。後になって返済に困らないよう、契約内容をよく確認してから利用しましょう。
親族にお金の相談をする
費用の工面が難しいときは、親族に事情を説明して援助をお願いする方法もあります。必ずしも一人に全額を頼むのではなく、複数人に少しずつ協力してもらう形で相談するのが現実的です。
この方法は、親族関係が良好であればおすすめできます。ただし、金銭が関わるため、無理なお願いや不透明な使い方は避けるべきです。感謝の気持ちを忘れず、後日の返済や報告の仕方も含めて誠実に対応することが、信頼関係を保つうえで大切です。
葬儀費用を積み立てられる「互助会」とは
近年は家族葬を選ぶ人が増えており、葬儀費用の最多層は「50万~100万円(28.3%)」です。全体では150万円以内に収まったケースが73.9%となっており、多くの方が比較的コンパクトな形式を選んでいます。
ただし、これらはあくまで葬儀一式費用の目安であり、仏式で僧侶に読経をお願いしたり、戒名を授かったりする場合には、別途お布施が必要となります。
葬儀一式費用に加えてお布施も含めると、実際の支払額は200万円近くに達することも珍しくありません。
こうした高額な出費に備える手段として、「互助会」への加入を検討する価値があります。月々の掛け金を積み立てておくことで、いざというときにまとまった費用を負担せずに、葬儀を行うことが可能になります。
互助会とは、一定額を月々積み立てていくことで、将来の葬儀や関連サービスを会員価格で利用できる制度です。葬儀だけでなく、結婚式にも利用できます。急な出費に不安がある方や、将来の備えを計画的に進めたい方、会員価格で葬儀や結婚式をしたい方に向いています。
費用の負担を抑えながらも安心して準備を進めたい方には、互助会への入会が心強い選択肢となるでしょう。
あんしん祭典(ごじょいる)でも、冠婚葬祭に活用できる互助会を提供しています。ごじょいるのメリットや利用できるプランは、こちらのページで紹介しています。