数珠の持ち方は略式と本式で異なり、本式数珠は宗派によって作法が変わります。本記事では宗派別の数珠の持ち方やマナーを詳しく解説。葬儀や法要に初めて参列する方や、作法に不安がある方におすすめです。

数珠は、故人を供養する際に手に持って使う仏具です。合掌や焼香のときに用いられ、祈りの気持ちを形にして伝えるための大切な道具でもあります。

数珠には宗派を問わず使える「略式数珠」と、宗派ごとの形や作法に従って使う「本式数珠」があります。本式数珠は宗派ごとに持ち方が異なるため、正しい扱い方を知っておくと安心です。

本記事では、略式数珠と本式数珠の違いや、宗派別の持ち方、数珠に関するマナーまで、丁寧に解説します。お通夜や葬儀に参列する予定がある方や、数珠の扱いに不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

2種類の数珠

数珠には、大きく分けて「略式数珠（片手数珠）」と「本式数珠」の2種類があります。略式数珠は宗派を問わず使えます。輪が一重になっていて、房がひとつ付いているのが一般的です。ひとつ持っておけば、どの宗派の葬儀でも使えて便利です。

一方、本式数珠は宗派ごとに決まった形があります。珠の数や配置、房の付き方にも違いがあり、それぞれの宗派の考え方に沿って作られています。自分の宗派を大切にしたいときには、本式数珠を選ぶとよいでしょう。

お通夜や葬儀に参列する際は、基本的には略式数珠で問題ありません。ただ、自分の宗派がわかっているなら、それに合った本式数珠を持って行くのもいいでしょう。きちんとした気持ちを形にして表したいときには、本式数珠がしっくりくるかもしれません。

お通夜や葬儀での数珠の持ち方

お通夜や葬儀では、場面ごとに数珠の扱い方が少しずつ変わります。大切なのは、数珠を丁寧に扱う気持ちと、房の向きにも気を配ることです。ここでは、座っているときや移動するとき、焼香をしているときの持ち方について、それぞれ見ていきましょう。

席に座っているとき

席に座っているときは、数珠を左手に軽く持ちます。手のひらを下に向け、房が下に垂れるようにしましょう。膝の上にそっと置くように意識すると自然です。

なお、数珠を左手で持つのは、仏教では左手が「清らかな手」とされているからです

移動するとき

移動するときは、数珠を左手で軽く持ちます。房が下に垂れるように意識しながら、人差し指と親指の間に挟むように持ちましょう。

焼香するとき

焼香をするときは、数珠を左手にかけたまま、胸より少し下の位置まで持ってきます。このとき、左手が身体の中心よりやや左側になるよう意識します。ここでも、房が下向きになるようにしましょう。

略式数珠（片手数珠）の持ち方

略式数珠（片手数珠）を使う場合、合掌のときは両手の親指と人差し指のあいだに数珠をかけるように持ちます。輪の部分を軽く指にかけ、房が下に垂れるように調整しましょう。

数珠の輪を左手に通して合掌する方法もあります。この場合も、左手の親指と人差し指のあいだに数珠をかけ、房が下に垂れるように持ちます。

本式数珠の持ち方

本式数珠は、宗派ごとに持ち方が異なります。珠の数や房の位置、手にかける方法にもそれぞれの作法があります。ここでは合掌するとき、宗派ごとの本式数珠をどう持てば良いのか、房の向きにも触れながら紹介していきます。

禅宗

禅宗では、本式数珠を左手の親指と人差し指のあいだにかけて合掌します。珠の輪を手のひら側に通し、房が下に垂れるように整えましょう。

浄土宗

浄土宗では、本式数珠の持ち方に2通りの作法があります。ひとつめは、数珠の輪を両手の親指と人差し指のあいだにかけ、輪が親指の外側に垂れるように持ちます。房も親指の外側に、自然に下がるよう整えましょう。

もうひとつは、合わせた両手が数珠の輪をくぐるように持つ方法です。この場合、房は手の小指側で下に垂れるように整えます。

日蓮宗

日蓮宗の本式数珠は、輪が二重になるよう、8の字にねじって両手の中指にかけます。その状態で合掌し、5本ある房のうち2本を右手側に、3本を左手側に垂らします。

真言宗

真言宗では、数珠の輪を両手の中指にかけて合掌します。日蓮宗と異なり、数珠の輪はねじらず、そのまま両手を合わせましょう。房は右手側と左手側に2本ずつ垂らします。

天台宗

天台宗では、房が付いている大きな珠（親玉）を上にして、左手に二重巻きにしてかけます。かける位置は親指と人差し指のあいだです。房は親指の内側に垂らし、そこに右手を合わせて合掌しましょう。

浄土真宗

浄土真宗では、本願寺派と真宗大谷派で持ち方が異なります。

本願寺派では数珠を二重に巻き、合わせた両手に数珠の輪をかけます。輪をかける位置は人差し指と親指のあいだです。合わせた両手のあいだ、手首の位置に親玉（房が付いている大きな珠）がくるようにし、下に垂らしましょう

真宗大谷派でも数珠を二重にして両手にかけるのは同じですが、親玉の位置が異なります。親玉が人差し指と親指のあいだにくるようにし、房は左手の甲に垂らします。

数珠のマナー

数珠は仏具としての意味を持つ大切なものです。お通夜や葬儀の場では数珠の持ち方だけでなく、扱い方にも気を配りましょう。ここでは数珠にまつわる基本的なマナーを紹介します。

数珠は貸し借りしない

数珠の貸し借りはせず、それぞれが自分の数珠を持ちましょう。数珠には持ち主の念がこもるともいわれており、仏具としての意味合いを考えると、共有すべきではないとされています。

数珠を忘れてしまった場合は、無理に借りず、そのまま参列・焼香しても差し支えありません。葬儀場によっては数珠を販売していることもあるため、購入するのもひとつの方法です。

お子さまと一緒に参列する場合も、自分の数珠を貸すのではなく、子ども用の数珠を用意してあげましょう。

離席時に数珠を置き去りにしない

離席するときは、数珠をその場に置きっぱなしにしないよう気を付けましょう。先述のとおり、数珠は仏具であり、個人の大切な持ち物です。無造作に置くことで、粗末に扱っているような印象を与えてしまいます。

離席する際は、バッグやポケットにしまうか、身に着けたまま席を立つようにしましょう。

お通夜や葬儀ではブレスレットタイプの数珠はNG

最近ではブレスレットタイプの数珠も見かけますが、お通夜や葬儀の場にはふさわしくありません。カジュアルな印象が強く、正式な仏事の場では不適切とされています。

本式数珠は自分の宗派に合うものでOK

本式数珠は、自分の宗派に合わせて選べば問題ありません。参列する葬儀が別の宗派であっても、自分の宗派の数珠を持って参列して構いません。

自分の宗派がわからない、宗派の異なる数珠を持つのがためらわれるといった場合は、略式数珠を選ぶのも良いでしょう。略式数珠は宗派を問わず使えるため、どのような葬儀にも対応できます。

本式数珠は宗派に合った持ち方を

数珠には、略式数珠と本式数珠の2種類があります。本式数珠は宗派ごとに形や珠の数、持ち方に違いがあるため、それぞれの作法に沿って丁寧に扱うことが大切です。

本式数珠は、自分の宗派に合うものを持参すれば問題ありません。参列先の宗派に合わせる必要はなく、自身の信仰に基づいたものを持参します。

宗派がわからない場合や持ち方に不安があるときは、略式数珠を選ぶのも方法です。どの宗派にも対応できるため、ひとつあれば便利です。