過去帳とは故人の戒名(法名)や生没年月日、享年などを記録して仏壇の近くに保管しておく帳面です。過去帳の概要および位牌や法名軸との違い、過去帳を綴る意味や歴史および利便性などを解説します。また、代書を頼んだ場合の費用相場についても触れています。
「過去帳の用意が必要らしいけど、何を書いてどう作ればよいかわからない」「位牌や法名軸との違いや作成費用?」と悩んでいませんか?
過去帳はすべての先祖の戒名(法名)や生没年月日、享年などが没年月の順で記録された記録帳。作成する際は、宗派や地域の風習などによって書き方や扱い方が異なるため注意が必要です。
この記事では、過去帳の基本的な意味や記載内容および作り方、書く人に応じた費用など、過去帳の理解に必要な情報を網羅しています。
過去帳とはどんなもの?
過去帳の概要や保管方法および役割は以下のとおりです。
過去帳とは?
過去帳とは、故人の戒名(法名)や生没年月日、享年などを記録して仏壇の近くに保管しておく帳面です。
仏壇付近で保管しておく家族の系譜
過去帳は仏壇の中もしくは仏壇近くの収納に保管することが多く「家族の歴史帳」のような意味合いがあります。
特に家族が亡くなったときや法要の際などに確認できるように、すぐに取り出せる場所に保管しておくと便利です。
先祖の戒名や生没年月日の記録帳
過去帳は、おもに戒名(法名)や生没年月日、享年などを記載します。また俗名も一緒に書いておくことで、誰がどの戒名に該当するのかがひと目でわかります。
位牌も過去帳と同様に故人の戒名(法名)と生没年月日、享年、俗名などが記載されていますが、一族全員が載る過去帳とは異なり区分は故人ごとです。
また、位牌は台座のうえに垂直に立つ木の札という形状をしており、帳面状の過去帳とは見た目も異なります。
過去帳が持つ意味
先祖代々から続く一族の系譜をまとめておくことで、家族が受け継いできた歴史を次世代へと伝え、供養の際に思いを巡らせてもらう役割を担います。
また、先祖がたくさんおられる家でも命日をわかりやすくするという意味もあります。
過去帳の歴史
過去帳の歴史は古く、鎌倉時代には類似の記録帳が存在したともいわれます。
本格的に各家庭で使われるようになったのは江戸期以降とされ、もとは寺院側が檀家の先祖情報を把握するために利用していたものが在家へと普及しました。
過去帳は2種類あり製本形式が異なる
無地の製本タイプは、和綴じでノートのように開いていく形状で、お寺で使用されページ数が多いのが特徴です。
蛇腹式の折本タイプは、長尺の紙が山谷で交互に折られていて両手の上でパラパラと開閉できる蛇腹形状で、在家でも扱いやすいものです。
過去帳に記載するタイミング
過去帳は家族が亡くなったタイミングで新たに追加記載します。
故人が戒名を授かったあとで、位牌や仏壇を用意する際に併せて作成するか、一族の先祖供養を改めて整理するタイミングでまとめて作成します。
過去帳の記載は宗派により異なる
仏教には以下の宗派がありますが、記載の形式や戒名(法名)の書き方が宗派によって異なります。
- 浄土真宗
- 真言宗
- 天台宗
- 臨済宗
- 曹洞宗など
また、浄土真宗では「法名」で臨済宗や曹洞宗では「戒名」など、故人に付けられる名前の呼び方や書式まで変わる場合もあります。
過去帳へのお布施やお礼
過去帳への戒名の追記や代筆をお寺へ依頼する場合には、お寺へお布施をおさめるのが一般的です。このときのお布施相場は5,000〜10,000円程度が目安とされています。
ただし地域やお寺によって異なるため、事前にお寺や詳しい檀家へ尋ねて相場を確認するとよいでしょう。
過去帳・位牌・法名軸の違いとは
過去帳・位牌・法名軸はいずれも記載内容に大きな違いはありません。
ただし、過去帳は帳面式の形状で、位牌は木製で垂直に立つ碑の形状、法名軸は掛け軸状の形状という違いがあります。
法名軸は浄土真宗系の宗派で用いられる仏具で、位牌の代わりに仏壇に掛けられます。仏壇に向かって右面の内側には両親および最近亡くなった方の法名軸、左側には先祖代々の法名を記した総法名軸を配置して飾るケースが一般的です。
過去帳は誰が書くもの?
過去帳の記載を依頼する先や費用について解説します。
まず、過去帳は誰が書いてもよく、また家族が書いても誰か(お寺や仏壇店など)に代書を依頼しても問題ありません。
記載を依頼する場合を解説します。
依頼先とかかる費用
まず、過去帳は誰が書いてもよく、また家族が書いても誰か(お寺や仏壇店など)に代書を依頼しても問題ありません。
記載を依頼する場合を解説します。
依頼はどこにする?かかる費用は?
過去帳の記載に関する依頼先は、お寺もしくは仏壇店です。
基本的には家族が書いても問題ありませんが、戒名の文字には正しい筆順や書式があるため、自信がない場合や間違いたくない場合はお寺や仏壇店に代書を依頼するほうが安心でしょう。
自分で書く場合
筆もしくは筆ペン、墨、文字や書き方の見本などをしっかり準備して、気分を落ち着けて書きましょう。
お寺へ依頼する場合
法要の実施とは関係ないタイミングで依頼する場合は、お布施として5,000〜10,000円程度が一般的な相場です。ただし、お寺や地域によって異なります。
仏壇店に依頼する場合
店舗によって筆耕サービスを用意している場合があり、その場合は1名あたりの記入費用や基本料金が明確に設定されていることが多いため、その店舗で確認しましょう。
過去帳の書き方(見本付き)
過去帳に記載する文字のレイアウトや書き方について、見本付きで解説します。
過去帳の一般的なレイアウト
過去帳は2行もしくは3行で書くレイアウトが一般的ですが、宗派や地域の風習などよって分割方法はさまざまです。
2行で書く場合
2行のレイアウト例

- 1行目:戒名(法名)
- 2行目:没年月や俗名、兄弟構成、年齢など
3行で書く場合
3行のレイアウト例

- 1行目:没年月
- 2行目:戒名 没年月日
- 3行目:俗名や兄弟構成、享年など
過去帳の書き方(1)表紙(表装)
過去帳の表紙には「過去帳」もしくは「〇〇家先祖代々之霊位」などと書く場合がありますが、その家のしきたりや宗派などによっても文言が異なるため、わからない場合はお寺へ尋ねましょう。
毛筆で書く方法が伝統的かつ一般的ですが、毛筆書きに自信がない場合は筆ペンや万年筆を使う場合があります。
真言宗・天台宗・臨済宗・曹洞宗の場合
それぞれ戒名や梵字の有無など書き方が少しずつ違う場合があります。たとえば、真言宗や天台宗などの宗派によっては戒名の上に梵字を記載することがあるため、梵字の書き方についてはお寺に確認しましょう。
過去帳の書き方(2)ページ
ページには故人ごとに項目をまとめて記載します。
過去帳のページの記載例

ページに記載する項目としては、没年月日・戒名(法名)・冠字・俗名、享年などがあります。
1名ごとまとめて没年月日の順番に記載するのが基本ですが、先祖をまとめて書く場合は系譜がわかりやすいように並べ替える場合もあります。
自分で書く際の注意点
自分で書く際には以下の点に注意しましょう。
先に下書きをする
ペンや筆を入れる前に鉛筆で薄く下書きをして配置を確認しておいてから、筆などで清書します。
先の細い筆やペンで書く
過去帳は筆と墨を使って書くのが一般的ですが、文字の線が重ならず識別しやすくするために先の細い筆やペンで書きましょう。
間違えた場合は紙を貼って書き直す
書き方や文字を間違えて訂正が必要になった場合は、訂正部分の上から紙を貼って書き直す方法が用いられます。
過去帳に書く際に気を付けるべき内容とは
過去帳に書く際には以下のことに気を付けましょう。
- 宗派により記載する梵字
- 過去帳には書かない内容
- 没年齢の数え方
宗派により記載する梵字
真言宗や天台宗など、一部の宗派では梵字を戒名の上部または下部に添えることがあるため、詳しい書式や配置についてはお寺へ相談しましょう。
過去帳には書かない内容
基本的には、個人のプライベート情報や世俗的な役職および肩書き、故人と直接関係のない項目などは記載しません。
前述したとおり、先祖の供養に必要な戒名や生没年月日などを中心とした定型の情報をまとめるようにしましょう。
没年齢の数え方
没年齢を記載する場合は「満年齢」か「数え年」かで数字が異なる場合があります。
原則として、その家の習慣や宗派などのルールに合わせましょう。なお、現在では満年齢を記すケースが一般的になりつつありますが、地域によって数え年が一般的とされるケースもたくさんあります。
過去帳とは仏壇に保管する一族の系譜
過去帳とは、仏壇に保管しておく先祖から現在までの一族の歴史帳で、類似するものとして位牌や法名軸があります。
過去帳があれば先祖の戒名や生没年月日がひと目でわかるため、家族が先祖の供養や年忌法要をすぐに確認できて便利です。
書き方や記載内容は宗派や地域の習慣によって異なるため、お寺や仏壇店に相談すると安心ですが、お布施やお礼などの費用を抑えたい場合は自分で書いても問題ありません。
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