家族葬とは、身内や親しい人だけで執り行う小規模な葬儀のことです。本記事では家族葬の費用や流れ、注意点がわかります。参列者を限定して静かに見送りたい方におすすめの記事です。
家族葬とは、遺族やごく親しい人たちだけで執り行う小規模な葬儀のことです。一般葬と比べて形式にとらわれず、ゆっくりと故人と向き合える時間を持てます。
とはいえ、「誰を呼べばいいのか」「香典は辞退した方がいいのか」など、家族葬ならではの悩みや不安を抱えている方も多いでしょう。
本記事では、家族葬の基本的な流れや費用の目安、注意点などを解説します。家族葬を検討している方、小規模でも心のこもった見送りをしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
家族葬とはどんな葬儀か?一般葬との違い
家族葬とは、家族やごく親しい人たちだけで執り行う小規模な葬儀のことです。一般葬のように広く訃報を知らせて大勢を招くのではなく、限られた人だけで落ち着いた雰囲気のなか故人を見送ります。
一般葬では、会社関係や友人・知人・近隣住民なども参列するのが一般的です。これに対して家族葬では、遺族の意向により参列者を絞るため、準備や精神的な負荷を軽くできます。
規模が小さい分、費用が抑えられる傾向もあります。ただし香典の収入が少ないため、トータルでの費用負担は一概に安くなるとは限りません。一般葬との違いを理解したうえで、家族葬のメリット・デメリットを比較することが大切です。
家族葬が選ばれる背景と近年の傾向
家族葬が広く選ばれるようになった背景には、時代の変化や人々の価値観の多様化があります。形式よりも気持ちを重視したい、落ち着いて見送りたいという思いが広がるなかで、身内だけで行う葬儀のニーズが高まっています。
また少子高齢化や地域とのつながりの希薄化も一因です。参列者の多い一般葬にしても、故人との関係が薄い人が増えてしまうだけと考える人もいます。こうした事情を踏まえて、家族葬を選ぶ家庭が増えてきました。
近年では葬儀社各社も家族葬プランを充実させており、家族葬専門の式場も登場しています。費用や場所、人数の希望に応じて柔軟に対応できる体制が整いつつあり、今後も需要はさらに伸びていくと見られています。
家族葬の参列範囲は?誰まで呼ぶべきか
家族葬では誰を呼ぶか、どこまで声をかけるかが悩ましいところです。一般的には、故人の配偶者・子ども・兄弟姉妹などの近親者に限るケースが多く、親しい友人やごく限られた関係者だけが参列することもあります。
参列範囲に明確な決まりはありませんが、故人との関係性や家族の意向、参列希望の有無をふまえて判断します。生前に親しくしていた知人やお世話になった人がいれば、家族葬であっても声をかけることは珍しくありません。
注意したいのは、葬儀後に訃報を知った人から「なぜ知らせてくれなかったのか」と言われるかもしれない点です。家族葬にすることをあらかじめ説明したり、後日改めて挨拶の機会を設けたりすることで、そうした誤解を防げます。
家族葬のメリット・デメリット
家族葬は、小規模で落ち着いた形で故人を見送れることから、多くの方に選ばれるようになりました。一方で、注意すべき点や向き不向きもあります。
ここでは、家族葬のメリットとデメリットを整理したうえで、どのような人に向いている葬儀形式なのか紹介します。
家族葬のメリット|費用・時間・心の負担の軽減
家族葬には、一般葬と比べて次のようなメリットがあります。
- 葬儀全体の規模が小さくなるため、準備や当日の対応にかかる時間と労力を軽減できる
- 参列者が限られることで、対応に追われることなく、故人との時間をゆっくり過ごせる
- 香典返しや会葬礼状の準備も少なく済み、事後の手続きも比較的簡素にできる
- 飾らない雰囲気で心を込めて見送れるため、精神的な負担が少ないと感じる人も多い
また、会場の選択肢が広がることや、スケジュールに余裕を持たせやすい点も魅力です。経済的な負担を抑えたい人にとっても、家族葬はおすすめです。
家族葬のデメリット|知らせ方や後日の対応に注意
一方で、家族葬には次のようなデメリットや注意点もあります。
- 訃報を知らせないことで、葬儀後に知った人が不快に思う可能性がある
- 香典も減るため、実質的な費用負担が大きくなることもある
- 故人と関係のあった人たちが別の機会に弔問することがあり、対応に追われやすい
- 式の内容が簡素になることで、周囲から「寂しい葬儀だった」と受け取られる場合がある
特に、参列を望んでいた人から後日連絡が入るケースも多く、フォローの仕方によっては人間関係に影響が出ることもあります。
家族葬に向いている人・向いていない人の特徴
家族葬が合っているかどうかは、家庭の事情や故人の人柄、交友関係によって変わります。以下は一つの目安です。
【家族葬に向いている人】
- 故人が生前に「身内だけで静かに見送ってほしい」と望んでいた
- 故人の交友関係が狭く、参列者が限られると見込まれる
- 地域とのつながりが少なく、呼ぶべき人が絞られている
- 葬儀の準備や対応にあまり人手をかけられない事情がある
【家族葬に向いていない人】
- 故人の交友関係が広く、参列希望者が多くなることが予想される
- 地域や親族の慣習として、一般葬を望む声が強い
- 仕事関係や知人への対応を後回しにしたくない場合
選びやすくなった家族葬ですが、周囲との関係性や気持ちの整理もふまえたうえで検討することが大切です。
家族葬の流れと当日のスケジュール
家族葬も一般葬と同じ流れで進みます。対応すべき手続きや儀式は多岐にわたるため、事前に流れを把握しておくと安心です。
ここでは、逝去から火葬後の会食まで、家族葬の一般的な流れを時系列に沿って紹介します。
逝去~安置
家族が亡くなった直後は、まず医師による死亡確認を受ける必要があります。自宅で亡くなった場合は、かかりつけ医や救急医が対応します。病院で亡くなった場合は、医師が死亡診断書を発行してくれます。
その後、遺体を搬送し、安置先へ移動します。安置先は自宅・葬儀会館・斎場の安置室などから選べ、状況に応じて柔軟に対応してもらえます。納棺までの間はドライアイスなどで遺体を保全する処置が行われます。
葬儀社との打ち合わせ
安置が済んだら、葬儀社との打ち合わせに入ります。家族葬の方針を伝え、葬儀の日程・会場・予算・式の内容などを細かく相談します。
宗教形式や参列者の人数、香典の扱いなどもこの段階で決めておくと、後の進行がスムーズになります。また、喪主を誰が務めるかといった役割分担も整理しておくと安心です。
死亡届や火葬許可証の提出
役所への死亡届の提出は、原則として死亡確認から7日以内とされています。提出には死亡診断書と必要書類を添え、自治体の窓口で手続きします。
葬儀社が代行してくれることがほとんどですが、火葬のためにはこの手続きによって火葬許可証を発行してもらう必要があります。火葬場の予約もあわせて進めましょう。
湯灌(ゆかん)・納棺
湯灌(ゆかん)とは、故人の体を清めて身支度を整える儀式です。宗教的な意味合いに加え、家族が最後にできるお世話として大切にされてきました。
その後、死後の旅支度や装束を整えた故人を棺に納める納棺が行われます。納棺の際には副葬品も一緒に入れますが、火葬場の規定により入れられない物もあるため、葬儀社の指示に従うことが大切です。
納棺の際、副葬品として入れられる物、入れられない物は、こちらの記事で紹介しています。
納棺に入れる物、入れてはいけない物を具体的に紹介|準備のポイントは?
お通夜
お通夜は、故人と最後の夜をともに過ごす時間です。家族葬では、ごく限られた親族だけで静かに行われることが多く、読経や焼香の後に通夜振る舞い(食事の席)を設けることもあります。
最近では、お通夜を省略するケースや、1日葬といって葬儀・告別式だけを開くスタイルも増えてきました。
葬儀・告別式
葬儀は故人の冥福を祈る宗教的な儀式であり、告別式はお別れの場としての意味合いがあります。多くの場合は続けて同日に行われ、僧侶の読経や焼香、弔辞などが行われます。
家族葬では簡素な形式を希望することも多く、あらかじめプログラムをコンパクトに調整しておくとよいでしょう。参列者が少ない分、ゆっくりと故人を偲ぶ時間が持てます。
出棺・火葬
告別式の後は、参列者全員で棺を囲んで最後の別れを告げ、出棺となります。火葬場へ向かう際は、遺族や親族が同行するのが一般的です。
火葬には1〜2時間程度かかり、収骨(骨上げ)まで同席します。収骨後は骨壺に遺骨を納め、自宅や納骨先へ持ち帰ります。
精進落とし
火葬を終えた後に行われる会食が精進落としです。本来は四十九日法要の際、忌明けの区切りとしての意味合いを持ちますが、近年では参列者への感謝を込めてもてなす場として、葬儀当日に設けられることが多くなりました。
家族葬では、精進落としを簡素に済ませることも多く、食事を取らずに解散するケースもあります。
家族葬にかかる費用の目安と内訳
家族葬は一般葬と比べて小規模である分、費用を抑えやすい傾向があります。ただし、参列者が少ないことで香典収入が減り、実質的な負担額が変わらないこともあります。
ここでは、家族葬にかかる費用の相場や内訳を整理し、一般葬との違いや費用を抑えるための工夫について紹介します。
家族葬の平均費用はいくら?
家族葬にかかる費用は、地域や葬儀社、式の内容によって異なりますが、50万~150万円程度が目安とされています。
内訳としては、葬儀プラン(祭壇・式場使用料・人件費など)に加え、火葬料や飲食代、返礼品費用、僧侶へのお布施などが含まれます。
また、会場を自宅や小規模な施設にするかどうか、副葬品や装飾をどの程度用意するかによっても変動します。
一般葬と比べた費用差
一般葬では参列者が多くなるため、式場の規模も大きくなり、人件費や接待費用がかさみます。そのため、総額で200万円前後になるケースも珍しくありません。
一方、家族葬は人数が限られているため、食事・返礼品・式場規模にかかる費用を抑えやすく、結果的に総額が100万円未満に収まることもあります。
ただし、家族葬では香典収入が少ない分、費用の多くを遺族が負担することになります。一見安く見えても、負担感はさほど変わらないと感じる人もいるため、トータルでの収支バランスをふまえた判断が重要です。
葬儀費用を抑えるコツ
家族葬の費用を抑えるためには、いくつかのポイントをおさえておくことが大切です。
まず、事前相談や見積もりを複数の葬儀社に依頼し、内容と金額を比較しましょう。費用の内訳を確認し、不明瞭な項目があれば遠慮なく質問することがトラブル回避につながります。
また、パッケージプランを活用することで、単品での手配よりも費用を抑えられることがあります。無理にオプションを付けず、必要最低限の内容に絞ることで予算内に収めやすくなります。
さらに、自治体によっては火葬料の補助制度や葬祭費の支給制度を設けている場合もあります。国民健康保険・後期高齢者医療制度の被保険者であれば、葬祭費として3万~7万円程度の給付を受けられることがあるので、確認しておきましょう。
家族葬を成功させるための準備と注意点
家族葬は自由度が高い分、準備や周囲への配慮を怠るとトラブルにつながることもあります。形式が簡素であっても、進行や連絡体制をしっかり整えておくことが大切です。
ここでは、家族葬を円滑に進めるために事前に決めておきたいことや、周囲への伝え方、注意すべきポイントについて解説します。
事前に決めておくべきこと
家族葬を検討する段階で、まず信頼できる葬儀社を選ぶことが重要です。家族葬に対応した実績があるかどうか、費用やプラン内容が明確かどうかを確認しましょう。
会場については、自宅・斎場・葬儀会館などの選択肢があります。希望する式の規模やアクセスのしやすさをふまえて決めるのが一般的です。式場によっては家族葬専用のプランを用意しているところもあります。
また、参列者を誰まで呼ぶかもあらかじめ決めておく必要があります。人数によって会場の広さや食事・返礼品の準備内容が変わってくるため、想定される規模を早めに把握しておきましょう。
ご近所・親戚への伝え方とマナー
家族葬を開く際は、周囲への知らせ方にも注意が必要です。特に親族や近隣との関係が深い場合、訃報を伝えないことで不快に思われるケースがあります。
「家族だけで静かに送る意向であること」「参列はご遠慮いただきたいこと」を丁寧に説明すれば、多くの場合は理解してもらえます。後日、挨拶状や電話で感謝の気持ちを伝えるのも良い方法です。
親戚に対しては、声をかける範囲に配慮しながら、対応に差が出ないようにしましょう。一部だけを呼ぶと不公平感が生まれることもあるため、全体のバランスを見ながら判断することが大切です。
トラブルを防ぐためのポイント
家族葬は小規模だからこそ、後から知った人が驚いたり、不満を抱いたりすることがあります。そうしたトラブルを防ぐには、事前の説明と事後の対応が欠かせません。
親しい知人や会社関係者などには、葬儀の後で改めて訃報を伝え、供花や香典を辞退した理由も丁寧に添えるとよいでしょう。
また、親族間で家族葬に対する考え方が分かれることもあります。準備段階で意見をすり合わせ、できる限り全員が納得できる形を探ることが、円滑な進行につながります。
家族葬に関するよくある質問
家族葬は一般葬と異なる点も多いため、不安や疑問を感じる方も少なくありません。特に香典や服装、挨拶などのマナーについては事前に確認しておきたいものです。
ここでは、家族葬に関してよく寄せられる質問に対して、わかりやすく答えます。
家族葬に香典は必要?辞退の伝え方は?
家族葬では香典を受け取る場合と辞退する場合があります。参列者が限られていることから、香典を受け取らず、その分気軽に参列してほしいと考える遺族も多く見られます。
香典を辞退する場合は、招待の段階でその旨をきちんと伝えることが大切です。「ご厚志はどうかご辞退申し上げます」といった文言を案内状に添えたり、事前に口頭で伝えたりすると丁寧です。
ただし、辞退の意向があっても香典を持参されることがあります。受け取るかどうかは状況に応じて判断し、辞退する場合は丁重にお礼を伝えたうえで返すようにしましょう。
家族葬でも喪主は必要?挨拶はどうする?
家族葬であっても、喪主は必要です。葬儀の中心となって進行を取りまとめる役割があり、葬儀社とのやりとりや関係者への対応、挨拶なども喪主が担います。
挨拶の場面としては、お通夜や告別式の締めくくりに一言添えるケースが多く、短くても気持ちのこもった言葉があれば十分です。「本日はご多用のなかお越しいただき、ありがとうございました」といった感謝の言葉が基本になります。
形式にとらわれすぎず、故人を想う気持ちを自分の言葉で伝えることが大切です。
家族葬の服装マナーは一般葬と同じ?
家族葬であっても、基本的な服装マナーは一般葬と同じと考えておくのが無難です。男性は黒の礼服に白シャツ・黒ネクタイ、女性は黒のワンピースやアンサンブル、黒のパンプスなどが一般的です。
小規模な葬儀だからといって、カジュアルな服装での参列は避けましょう。家族葬であっても、宗教的な儀式を伴うことが多いため、礼を尽くす姿勢が求められます。
家族葬でも法要はするの?
家族葬を選んだ場合でも、葬儀後の法要は従来通り行われます。四十九日や一周忌などの節目の供養は、宗派や家族の考え方に応じて実施するのが一般的です。
法要も家族だけで簡素に行うスタイルが増えており、自宅や納骨先の寺院で静かに営まれることが多くなっています。参列者を限定することで、故人を偲ぶ時間を大切にできるのも家族葬と通じる特徴です。
大切な人を自分らしく見送るために
家族葬は、形式にとらわれず、ゆっくりと故人と向き合える葬儀のかたちです。大勢の前で取り繕うことなく、親しい人たちだけで穏やかに故人を見送れます。
一方で、家族葬には独自のマナーや配慮が求められる場面もあります。誰に知らせるか、どこまで呼ぶか、後日の対応をどうするかといった点を丁寧に考えることで、後悔のない見送りができるはずです。
あんしん祭典は家族葬への対応実績も多くあります。あんしん祭典の家族葬は故人さまとの思い出を大切に、心温まるひと時を共有するアットホームな葬儀です。家族葬のできる葬儀社をお探しの方は、こちらから費用や規模などの詳細をご確認ください。