家族葬は身内だけの葬儀ですが、服装には最低限のマナーが求められます。喪服・平服の選び方、子どもや高齢者の服装の注意点まで詳しく解説します。
家族葬は、親族やごく親しい人だけで執り行われる小規模な葬儀です。「身内だけだから」と服装に気を抜いてしまうと、場にそぐわない格好になりかねません。特に喪主や近親者は、一般的な葬儀と同様にきちんとした喪服を着用する必要があります。
本記事では、家族葬にふさわしい服装の基本マナーから、子ども・高齢者の服装、略式にしてよいケースまで、状況に応じた選び方を徹底解説します。
家族葬とは
家族葬とは、一般的な葬儀に比べて規模を小さくし、親族やごく親しい友人などの身内だけで行う葬儀です。従来の葬儀では、近所の方や会社関係者など多くの参列者が訪れるのが一般的でした。しかし、近年は「本当に縁の深い人だけで静かに見送りたい」と考える方が増え、家族葬という形式が選ばれるようになりました。
故人との別れを落ち着いた雰囲気の中で行えるのが大きな特徴で、無理のない規模で準備できる点も支持されています。
一般葬との違い
一般葬は、親族だけでなく仕事関係者や近隣住民など、故人とつながりのあった多くの方が参列します。そのため参列者の数が多く、進行も形式的になりがちです。
その一方で、家族葬は参列者が限定されるため、形式に縛られず、比較的自由な形で進められるのが特徴です。例えば、読経の有無や献花の仕方などを柔軟に決められ、故人らしさを大切にできる点がメリットといえます。
ただし、身内だけとはいえ、親戚同士が集まる場であることに変わりはありません。服装や振る舞いについては最低限のマナーが求められます。
家族葬における服装マナーが重要な理由
「家族葬だから普段着でもよいのでは?」と考える方も少なくありません。しかし、葬儀は故人を弔う大切な儀式です。喪服を基本とするフォーマルな場であることには変わりありません。特に喪主や遺族は正しい服装で臨むことが必須となります。
もし服装を誤ると、「身内だけだからと気を抜いている」「故人に対して失礼」と受け止められる可能性もあります。小規模だからこそ参列者同士の距離が近く、一人ひとりの装いが目に入りやすいため、服装マナーがより重要になるのです。
家族葬では「落ち着いた雰囲気で故人を見送ること」が大切です。そのため、派手さや華美さを避け、控えめで品のある装いが求められます。
家族葬にふさわしい服装の基本マナー
家族葬にふさわしい服装は、葬儀に参加する際の立場でも変わってきます。葬儀の際の服装は喪服・準喪服・平服の3パターンに分けられます。どのような立場で参加するのかに応じて異なるので、それぞれ解説します。
喪主・遺族なら正喪服
家族葬は規模が小さくても、喪主や遺族は故人を送り出す立場です。そのため、一般葬と同様に正喪服を着用するのが基本です。
男性であれば、黒のモーニングやダークスーツに黒のネクタイ・黒靴を合わせます。女性は、ブラックフォーマルのワンピースやアンサンブルに黒のストッキング、光沢のない黒の靴が望ましいでしょう。
正喪服はもっとも格式の高い服装とされ、故人に対する敬意を表す意味があります。家族葬でも、喪主や遺族が正装をすることで、儀式全体の雰囲気が引き締まり、他の参列者にとっても安心感につながります。
近親者・参列者なら準喪服(礼服)
親族やごく限られた友人が参列する場合、準喪服(礼服)を着用するケースが一般的です。
男性は、黒のスーツに白いシャツ、黒のネクタイを合わせます。女性は黒のワンピースやスーツを選ぶとよいでしょう。アクセサリーはパールなど控えめなものに留め、華美な装飾は避けるのがマナーです。
規模が小さい家族葬だからといって、ジーンズや派手な色の服装などのカジュアルすぎる装いは不適切です。参列者も遺族への配慮を忘れず、落ち着いた服装を心がけましょう。
「平服で」と言われたときの解釈と注意点
案内状や連絡で「平服でお越しください」と伝えられるケースもあります。ここでいう平服とは、日常的なカジュアルウェアではなく、礼服ほど格式は高くないが喪に服する意識を示す服装を意味します。
男性なら黒や紺のスーツに黒のネクタイ、女性なら地味な色のワンピースやスーツを選ぶのが無難です。柄物や明るい色は避け、落ち着いた色合いを基本にしましょう。なお、このような服装は略喪服とも呼ばれます。
平服を普段着と勘違いすると、場にそぐわない服装になってしまうため注意が必要です。
家族葬の際の男女別の服装マナー
家族葬に参加する際、男女で服装のマナーは異なります。それぞれの服装マナーを解説します。
男性の服装
男性は、家族葬であっても黒を基調としたスーツが基本です。喪主や遺族は正喪服としてモーニングコートを着用する場合もありますが、多くの場合は黒無地のスーツで十分です。
- シャツは無地の白
- ネクタイは光沢のない黒無地
- ベルトと靴は黒で統一
- 靴下も黒一色で統一(柄やワンポイントは避ける)
ビジネス用のスーツでも、濃紺や濃いグレーであれば略喪服として許容されるケースもあります。ただし、できる限り黒無地を選んでおくと安心です。時計やカフスなどの小物も、光沢を抑えたシンプルなものにしましょう。
女性の服装
女性は、ブラックフォーマルのワンピースやスーツが基本です。スカート丈は膝下からミモレ丈程度が望ましく、派手なデザインや露出の多い服は避けましょう。
- ストッキングは黒無地
- 靴は光沢のない黒のパンプス(ヒールは3〜5cm程度が目安)
- バッグも黒無地で布製または光沢を抑えたもの
アクセサリーは、パールのネックレスやイヤリングが定番です。ただし二連のパールやダイヤなど華美なものは避け、あくまで控えめにまとめましょう。
家族葬に参加する際の子どもや高齢者の服装
子どもや高齢者など、喪服の用意が難しい場合でも、一定のマナーは守りましょう。
子どもの場合
子どもが家族葬に参列する場合、学生は学校の制服を着用するのが基本です。制服が喪服の代わりとされるため、特別に用意する必要はありません。
未就学児や小学生の場合は、黒・紺・グレーなど落ち着いた色合いの服を選びましょう。男の子であれば白シャツに黒や紺のズボン、女の子であれば黒や紺のワンピースが無難です。明るい色やキャラクター柄は避け、シンプルな服装でまとめましょう。
幼児や乳幼児の場合
特に幼児や乳幼児の場合、完全な喪服を用意するのは難しいです。そのため、無理に正装をさせる必要はありません。幼稚園生の場合は、学生と同じく、幼稚園の制服を着用しましょう。
制服がない場合、黒や紺、濃いグレーを基調とした普段着に近い服でも問題はなく、靴下や靴を黒にするだけでも十分に弔意を表せます。小さな子どもにとっては長時間の葬儀は負担になるため、服装より体調や快適さを優先することも大切です。
高齢者の場合
高齢者は体調や体力を考慮したうえで、無理のない範囲で喪服に近い服装を選びましょう。女性の場合は、黒や濃紺のワンピースやスーツにカーディガンを合わせるなど、動きやすさと防寒を意識すると安心です。男性の場合も黒のスーツを基本に、サイズ感の合ったものを選ぶことで着心地がよくなります。
また、腰や膝への負担を減らすために、歩きやすい黒の靴を選ぶのもポイントです。
家族葬で服装以外で気をつけたい身だしなみ
服装以外にも、家族葬に参加する際には気を付けたい身だしなみのポイントがいくつかあります。
髪型や化粧
家族葬であっても、身だしなみは故人や遺族への敬意を示す大切な要素です。髪型は男女ともに清潔感を意識し、派手なアレンジや明るすぎる髪色は避けるのが無難です。女性はまとめ髪やシンプルなダウンスタイルがおすすめです。
化粧は控えめで落ち着いた印象が基本です。濃いアイシャドウや赤い口紅は避け、ナチュラルメイクを心がけましょう。男性も無精ひげは剃り、清潔感を意識しましょう。
アクセサリーや持ち物
葬儀の場では、アクセサリーは最低限にとどめるのがマナーです。女性はパールの一連ネックレスや小ぶりのイヤリング程度が一般的です。ダイヤやゴールド、華美な装飾は避けましょう。
バッグは小さめの黒で光沢のないものが基本です。男性も光沢の強い革製品は避け、落ち着いた黒のセカンドバッグを選びましょう。
靴は男女ともに黒で、女性は3〜5cm程度のヒールのパンプス、男性はシンプルな革靴を選びます。エナメルなどの光沢素材は避けましょう。
バッグの選び方やあると便利なアイテムなど、持ち物についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
葬儀で最低限必要な6つの持ち物とケース別のあると便利なアイテム
香水や派手なネイルはNG
家族葬は少人数で距離が近いため、香水や柔軟剤の強い香りは周囲に不快感を与える可能性があります。無香、もしくは極力控えるのが安心です。
また、派手なネイルアートや明るい色のマニキュアも不適切です。女性は透明または落ち着いた色合いに整えておきましょう。男性も爪を短く切り、清潔感を心がけましょう。
家族葬でも服装マナーを守り、故人への敬意を示そう
家族葬は、身内だけで行う小規模な葬儀です。しかし、故人を偲ぶ大切な儀式であることに変わりはありません。喪主や遺族は正喪服を着用し、参列者も準喪服を基本としましょう。場の雰囲気が整い、故人への弔意をしっかり表せます
また、「平服で」と案内された場合も、普段着ではなく落ち着いたスーツやワンピースを選ぶのがマナーです。子どもや高齢者は無理のない範囲で整えれば問題ありません。服装だけでなく、髪型・化粧・アクセサリー・香りといった身だしなみにも気を配ることで、より一層丁寧な印象を与えられます。
家族葬だからこそ一人ひとりの装いが目立ちます。そのため、控えめで清潔感のある服装を意識することが、故人や遺族への最大の礼儀といえるでしょう。
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