献杯とは、故人に敬意を表し、哀悼の意を込めて杯を捧げることです。献杯では、グラスをぶつけない、大きな声を出さないなど、いくつかのマナーに気を付けましょう。本記事では、献杯の意味やマナー、挨拶例などを解説します。
献杯とは、故人へ敬意を表し、哀悼の気持ちを込めて杯を捧げることです。喪主や代表者が挨拶をした後、参列者全員で杯を掲げ、故人を偲びます。
献杯は、お祝いの席で行う乾杯とは異なり、厳粛な場で行われます。「挨拶はどのようにすれば良いのか」「マナーがわからない」と、不安に思う方もいるかもしれません。
この記事では、献杯の意味や流れ、挨拶の例文、注意点などを解説します。献杯について知りたい方、挨拶を控えている方は、ぜひ最後までお読みください。
献杯(けんぱい)とは
献杯とは、故人に対して敬意を表し、哀悼の意を込めて杯を捧げることです。静粛な場にふさわしい、厳かな雰囲気の中で行われます。
献杯は、主にお通夜や葬儀後の会食、法事などの場面で行われます。故人を偲び、冥福を祈る目的で行われるものです。
乾杯との違い
乾杯は、主に結婚式のようなお祝いの席や、宴会・飲み会などの場で行われます。参加者同士で喜びを分かち合ったり親睦を深めたりするために、明るく声を掛け合いながら杯を交わします。
献杯は故人に対して捧げるものであり、喜びや祝いの気持ちを表す乾杯とは意味合いが全く異なります。場をわきまえ、故人を偲ぶ気持ちを大切にしましょう。
献杯の流れと基本マナー
献杯は故人を偲んで行う、厳粛な儀式です。いくつかの基本的なマナーがあるので、失礼のないように事前に確認しておきましょう。
会場に移動する
お通夜や葬儀、法要の後、会食会場へ移動します。会食の場所がわかっていたとしても、係員から案内があるまでは、勝手に移動しないようにしましょう。
席に座る
席順は、故人と関係が深い人や年長者が上座に座ります。僧侶がいる場合、僧侶が上座に座ります。喪主や遺族は参列者をもてなす側であるため、下座に座りましょう。一般的に、参列者の席次は決まっていないため、座席を自由に選びます。
飲み物を用意する
献杯で使用する飲み物は、自分で注ぐのではなく、人に注いでもらうのがマナーです。喪主や葬儀社のスタッフが注いでくれることが多いです。
挨拶と献杯
献杯の挨拶が済んだら、参列者一同で献杯を行います。唱和後、杯を胸の高さまで掲げますが、ほかの人と杯を合わせないように注意しましょう。
なお、献杯の際はグラスを右手で持ちます。左手は不浄という考え方があるためです。
会食
献杯が済んでから、会食を始めます。献杯の前に食事に手を付けるのはマナー違反なので、気を付けてください。
献杯の挨拶例
献杯の挨拶は、故人を偲び、参列者への感謝の気持ちを伝える大切なものです。状況に応じて適切な言葉を選ぶようにしましょう。
通夜振る舞いや葬儀後の会食
皆さま、本日はお忙しいところ、故〇〇(故人の名前)の葬儀にご会葬いただき、厚く御礼申し上げます。おかげさまで、滞りなく葬儀を終えることができました。故人もさぞかし喜んでいることでしょう。生前、故人が皆さまから賜りましたご厚情に、深く感謝申し上げます。ささやかではございますが、お食事をご用意いたしましたので、故人の思い出話などをお聞かせいただきながら、ゆっくりと過ごしていただければと存じます。献杯。
法事での会食
皆さま、本日は故〇〇(故人の名前)の三回忌法要にお集まりいただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、無事に法要を執り行うことができました。これもひとえに、皆さまのお力添えのおかげと深く感謝しております。早いもので、故人が亡くなってから2年が経ちました。本日は、故人の在りし日の姿を偲び、思い出を語り合いながら、お過ごしいただければと存じます。ささやかではございますが、お膳をご用意いたしましたので、ごゆっくりお召し上がりください。献杯。
献杯の挨拶の注意点
献杯の挨拶は、故人を偲び、参列者への感謝を伝える場です。いくつかの注意点を守り、失礼のないように挨拶をしましょう。
位牌に背を向けない
献杯の挨拶をする際は、位牌に背を向けないように立ち位置に注意しましょう。故人に対して失礼のないよう、位牌から見て正面もしくは斜め向きになるように立ちましょう。
挨拶は1分ほどで
献杯の挨拶は簡潔に、1分ほどにまとめるのが理想的です。長々と話すのではなく、故人への想いや参列者への感謝の気持ちを、端的に伝えましょう。
落ち着いたトーンで話す
献杯は故人を偲ぶ場であり、落ち着いたトーンで話すことが大切です。大声を出したり、早口になったりしないよう、ゆっくりと丁寧に話しましょう。
忌み言葉を使わない
葬儀や法事の場では、不幸が続くことを連想させる重ね言葉や、不吉な忌み言葉を使わないよう気を付けましょう。
重ね言葉とは「重ね重ね」「度々」など、同じ言葉をくり返す言葉です。忌み言葉とは、「4(死)」や「9(苦)」などの不吉な数字、「消える」「落ちる」などの不吉な言葉です。
「死ぬ」「死亡」などの生死に関する直接的な言葉も控えましょう。
宗教ごとの言葉の違いに気を付ける
宗教や宗派によって、献杯の言葉やマナーが異なる場合があります。たとえば仏教ではよく「ご冥福をお祈りします」という言葉が使われますが、「冥福」は仏教の概念です。神道やキリスト教では使いません。「成仏」という言葉も同様です。
たとえば神道なら「御霊(みたま)のご平安をお祈りいたします」、キリスト教では「永遠の安息をお与えください」のような言葉を使います。
事前に確認し、その宗教・宗派にふさわしい言葉を選びましょう。
献杯ではグラスをぶつけないよう気を付けよう
献杯とは、故人に対して敬意を表し、哀悼の意を込めて杯を捧げることです。喜びや祝いの気持ちを表す乾杯とは、意味合いが全く異なります。
献杯では、グラスをぶつけたり、音を立てたりしないのがマナーです。故人を偲び、厳粛な気持ちで行うことが大切であることを、改めて意識しましょう。
献杯の挨拶を頼まれた方は、忌み言葉や重ね言葉、宗教ごとの言葉遣いの違いなどに気を付けながら、1分ほどの端的な挨拶を考えましょう。こちらの記事では、故人との関係性に応じた挨拶の例文を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
献杯の挨拶例をタイミング、立場別に紹介|使ってはいけない言葉や基本マナー