香典の表書きは、宗教・宗派がわからない場合「御香典」と書くのが無難です。この記事では、香典袋の書き方、金額の相場、渡し方などの基本マナーを解説します。葬儀に参列する方、香典の準備が必要な方は、ぜひ参考にしてください。
香典とは、故人の霊前にお供えするお金のことです。線香や花の代わりに、故人への弔意を示すために贈られます。
香典は香典袋に入れて渡すのがマナーです。ただ、書き方や包み方など、細かな決まりごとが多くて複雑だと感じる方もいるでしょう。
この記事では、香典袋の書き方、金額の相場、渡し方などの基本マナーを解説します。お通夜や葬儀、法事に参列する方、香典の準備が必要な方は、ぜひ参考にしてください。
香典袋の書き方を画像で解説
香典袋の外袋には表書きと名前を書きます。内袋は表に金額を、裏に郵便番号・住所・名前を書きます。それぞれの詳しい書き方は、この後解説していきます。

香典袋の書き方例
香典袋の筆記具マナー
香典袋の書き方について解説する前に、まずは筆記具のマナーを押さえておきましょう。香典袋はどのような筆記具で書くのか、明確なマナーがあります。
外袋には筆または筆ペンを使う
香典袋の外袋に字を書くときは、筆または筆ペンを使いましょう。ボールペンや鉛筆を使うのはマナー違反です。
ただし、筆や筆ペンがないときは黒のサインペンで代用することもできます。
内袋は筆や筆ペンでなくてもOK
詳しくは後述しますが、内袋には住所や名前などを書き込みます。書き込む量が多いため、文字の大きさもその分小さくなるでしょう。
これらを筆や筆ペンで書くのは大変です。内袋はボールペンやサインペン、万年筆で書いても構いません。もちろん、筆や筆ペンで書いても大丈夫です。
薄墨と黒墨の使い分け
お通夜や葬儀で香典を出すときは薄墨を、法事では通常の黒墨を使いましょう。
薄墨には「涙で墨が薄くなった」という意味があります。故人を悼む気持ちを込めて、お通夜・葬儀では薄墨を選びましょう。
香典袋の外袋の書き方
一般的に、香典袋は中袋にお金を入れ、その中袋を外袋に入れて渡します。外袋には表書きと名前を書きます。ただ、地域によってやり方が異なることもあるので、不安なら葬儀社に確認しましょう。
上段
外袋の上段には表書きを書きます。表書きとは、香典を送る際の名目のことです。
一般的には御香典や御霊前、御仏前などを書きますが、宗教・宗派によって使える表書きが異なります。ここでは宗教別の「使える表書き」を紹介しますが、「相手の宗教がわからない」「細かい宗派がわからず不安」というなら、「御香典(または御香奠)」と書くのが無難です。
仏教
仏教では次のような表書きが使えます。
- 御霊前(四十九日まで)
- 御仏前(四十九日以降)
- 御香奠
- 御香典 など
なお、仏教の中でも浄土真宗では御霊前は使いません。浄土真宗では人が亡くなると、すぐに仏になると考えられているため、「霊」の概念がないからです。そのため、御仏前を使いましょう。
神道
神道では次のような表書きが使えます。
- 御霊前
- 御玉串料
- 御榊料
- 御神饌料 など
なお、神道では御仏前は使いません。御仏前の「仏」は「亡くなった人が仏様になったこと」を表し、神道では人は仏になると考えられていないためです。
キリスト教
キリスト教ではカトリックとプロテスタントで使える表書きが異なります。それぞれ、次のような表書きが使えます。
【カトリック】
- 御霊前
- 御花料
- 献花料
- 御ミサ料 など
【プロテスタント】
- 御花料
- 忌慰料
- 献花料 など
なお、プロテスタントでは御霊前は使いません。「異教の偶像を崇拝している」と捉えられてしまうためです。
無宗教
無宗教には特に表書きの決まりはありませんが、次のようなものが無難です。
- 御香典
- 御香料
- 御霊前
- 御供料 など
下段
外袋の下段には香典を出した人の名前を、表書きより少し小さい字で書きます。基本的には自分自身の名前を書きますが、夫婦など連名で出す場合は、次のように書きます。
夫婦で出す場合
右側に夫のフルネームを書きます。夫の名前の左隣に妻の名前を書きます。
3名以内で出す場合
3名以内の連名で出す場合、目上の人が一番右になるよう、右から順番にフルネームを書いていきます。上下関係がない場合は五十音順で書きます。
4名以上で出す場合
4名以上で出す場合は代表者の名前を中央に書き、その左隣に「他一同」と書きます。
会社・団体で出す場合
会社や団体として香典を出すときは、中央に代表者の役職と名前を書きます。「部長 山田太郎」のようなイメージです。その右隣に、1文字上げて会社名や団体名を書きます。
部署単位で香典を出す場合は、代表者の名前の代わりに「〇〇部一同」のように書きましょう。
香典袋の内袋の書き方
香典袋の内袋には、香典として包むお札を入れます。内袋の表には金額を、裏には差出人の名前や住所を書きます。
表
内袋の表には、旧漢数字の大字で金額を書きます。「金壱萬圓也」「金参萬圓也」のように、「金〇〇圓也」と書きましょう。
旧漢数字(大字)一覧
旧漢数字の書き方は次の通りです。
数字 | 旧漢数字 |
一 | 壱 |
二 | 弐 |
三 | 参 |
五 | 伍 |
六 | 六 |
七 | 七 |
八 | 八 |
十 | 拾 |
千 | 仟 |
万 | 萬 |
旧漢数字の書き方
裏
内袋の裏には郵便番号、住所、差出人の名前を書きます。連名で出す場合は、全員分の郵便番号、住所、名前を、役職順または名前の五十音順で書きましょう。
4名以上の場合、内袋の裏には何も書かず、差出人の住所と名前を書いた別紙を入れます。なお、送る相手が同じ会社の場合、住所を省くこともあります。
香典袋の選び方
香典袋は金額により種類が異なります。また、香典袋に付ける水引も、宗教ごとに違います。
金額ごとの香典袋の選び方
金額ごとの香典袋の種類は次の表のとおりです。
金額 | 香典袋の種類 |
3,000~5,000円(一般参列者) | 水引が印刷のもの |
1万~2万円 | 白無地の封筒に白黒の水引 |
3万~5万円 | 白無地の封筒に白黒または双銀の水引 |
6万円~10万円未満 | 中金封の封筒に双銀の水引 |
10万円以上 | 大金封の封筒に双銀の水引和紙製の香典袋に双銀の水引 |
金額ごとの香典袋
宗教ごとの水引
宗教ごとに使える水引は次の表のとおりです。
宗教 | 水引 |
仏教 | 黒と白、銀と白、黄と白 |
神道 | 銀または白黒 |
キリスト教 | なし(付けても良い) |
宗教ごとの水引
香典の金額相場
香典の金額は故人との関係性や自分の年齢に応じて変わります。相手との親しさによっても異なり、親しい相手には相場より少し多めの金額を包むこともあります。
おおまかな目安は次の表のとおりです。
お通夜・葬儀の香典相場
20代 | 30代 | 40代~ | ||
親族 | 両親 | 3万~10万円 | 5万~10万円 | |
義理の両親 | 3万~5万円 | 10万円 | ||
祖父母 | 1万円 | 1万~3万円 | 3万~5万円 | |
兄弟・姉妹 | 3万~5万円 | 5万円 | ||
叔父・叔母 | 1万円 | 1万~2万円 | ||
従兄弟・その他の親族 | 3,000~1万円 | 3,000~2万円 | ||
親族以外 | 上司 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 |
上司の家族 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 | |
勤務先の社員 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 1万円 | |
社員の家族 | 3,000~5,000円 | 3,000~1万円 | ||
友人・知人 | 3,000~5,000円 | 5,000~1万円 | 5,000~1万円 | |
友人の父母 | 3,000~5,000円 | 5,000~1万円 | 5,000~1万円 |
お通夜・葬儀の香典相場
法事の香典相場
法事の香典は関係性だけでなく、会食に参加するかしないかでも変わります。会食に参加する場合は、その費用として多めの香典を包みます。
【関係性に応じた目安】
法要のみ参加 | 会食にも参加 | |
親族 | 1万~2万円 | 3万~5万円 |
親しい友人・知人 | 1万~3万円 | 2万~5万円 |
友人・知人 | 5,000~1万円 | 1万~3万円 |
関係性ごとの法事の香典相場
【法事の種類ごとの相場(会食に参加する場合)】
法要の種類 | 金額目安 | ||
親族 | 親しい友人・知人 | 友人・知人 | |
初七日 | 3万~5万円 | 2万~5万円 | 1万~3万円 |
四十九日 | 3万~5万円 | 2万~5万円 | 1万~3万円 |
一周忌 | 3万~5万円 | 2万~5万円 | 1万~3万円 |
三回忌以降 | 1万~5万円 | 1万~3万円 | 1万~3万円 |
納骨式 | 1万~5万円 | 1万~3万円 | 1万~3万円 |
法事の種類ごとの香典の相場
香典の基本マナー
香典袋の書き方以外にも、香典にはいくつかのマナーがあります。ここではお札の選び方や入れ方、避けるべき金額など、香典の基本的なマナーについて解説します。
新札を避け古札を使う
香典に包むお札は新札ではなく、古札を使いましょう。新札とは折り目のないきれいなお札、古札とは使用感のある古いお札のことです。ただし、シワシワのお札や汚れの付いたお札など、汚すぎるお札は避けます。
新札しかない場合は、一度縦に折り目を入れてから包みましょう。
お札は裏向き、下向きでそろえる
肖像画のある面を表として、お札は裏向きで入れましょう。お札の向きは下向きでそろえます。肖像画が香典袋の底にくるよう、向きをそろえます。
お札の枚数は奇数に
割り切れる数字である偶数は「故人との縁が切れる」ことを連想させるため、香典に適していません。お札の枚数が奇数になるように調整しましょう。
たとえば2万円を包む場合、1万円札1枚と5,000円札2枚で計3枚になるようにします。このとき、お札の枚数は最小になるようにしてください。
たとえば6万円を包む場合は1万円札5枚と5,000円札2枚です。1万円札3枚と5,000円札6枚のような包み方はしません。
忌み数を避ける
香典の金額やお札の枚数が4や9にならないようにしましょう。4は死を、9は苦を連想させ、縁起が悪いためです。このような数字は「忌み数」と呼ばれます。
4万円など、「忌み数になるが、その金額を包みたい」という場合は、供物で調整すると良いでしょう。3万円分の香典と1万円分の供物、合計で4万円分という風に贈れば、失礼には当たりません。
香典袋は袱紗に包んで持ち歩く
香典は袱紗(ふくさ)に包んで持ち歩きましょう。袱紗とは、香典袋やご祝儀袋を包むための布です。
お通夜や葬儀、法事などの弔事では、黒や藍色、グレーなどの寒色系のものを選びます。紫の袱紗は慶弔両方で使えるため、1枚あると便利です。
袱紗の包み方
袱紗を使った香典袋の包み方は次の通りです。

- 上から見てひし形になるよう、袱紗を裏向きにして置く
- 袱紗の右角を持ち、香典袋の左端に合わせて中央に折る
- 同じように、下、上の順に上下を折る
- 同じように左角を持ち袱紗を折り、右端にはみ出した部分を裏面に折り込む
香典の渡し方
香典はお通夜や葬儀、法事などの受付で渡します。お通夜や葬儀ではお悔やみの言葉(この度は誠にご愁傷さまでございました。どうぞご霊前にお供えください など)を述べて渡します。
香典は先述の袱紗(ふくさ)に包んで持ち歩きます。渡す際は袱紗から取り出し、畳んだ袱紗の上に乗せて渡しましょう。
なお、お通夜と葬儀の両方に参列する場合は、お通夜でのみ香典を渡します。香典を二度渡すことは不幸が重なることを連想させるため、お通夜で渡しているなら葬儀では渡しません。
香典に関するよくある質問
香典に関するよくある質問・疑問に答えていきます。悩みがある方はここで解消しておきましょう。
一枚和紙の香典袋の折り方は?
10万円以上の高額の香典を包む場合、封筒タイプではなく、1枚和紙の香典袋を使います。お金を内袋に包んだ後、外袋に入れるのではなく、和紙で包みます。和紙の包み方は次の通りです。

- 外袋(一枚紙)の中央に、内袋を裏返して置く
- 外袋の右側を折る
- 2と同じ幅になるよう、左側を折る
- 内袋が折れないように気を付けながら、外袋の下側を折る
- 下から余りがはみ出さないように、外袋の上側を折る
- 外袋を表向きにし、水引を中央に付ける
葬儀に行けないときは郵送してもOK?
お通夜や葬儀に行けない場合、後日弔問して直接渡しましょう。弔問ができない場合、郵送しても構いません。
郵送の場合、現金書留で送ります。郵便局の窓口で香典を送りたいと伝えると、封筒が購入できます。お悔やみの言葉と、参列できないことへのお詫びを書いた、お悔やみ状も同封しましょう。
葬儀に間に合わず香典を渡せなかった
葬儀での遅刻は原則NGですが、やむを得ず遅れてしまうこともあります。まだ受付が開いているなら、到着した時点で受付を済ませ、香典を渡しましょう。
受付が閉まっていた場合は後日弔問するか、前述の方法で、現金書留で送ります。
香典を辞退されたら?
案内状に香典辞退の旨が書かれていたら、香典を渡す必要はありません。遺族の意思を尊重しましょう。
心配なら遺族に確認すると良いでしょう。香典の代わりに供物や供花を贈る方法もあります。ただし、遺族の負担にならないよう、何かを贈る場合も事前に確認しましょう。
香典返しを辞退したいのですが…
遺族の負担を考え、香典返しを辞退したいという方もいるでしょう。香典返しの辞退は失礼にあたりません。次の例文のように、内袋に香典返しを辞退する旨を書いておきましょう。
【例文】
誠に勝手ではございますが、お返しのご配慮は遠慮させていただきますようお願い申し上げます。
香典の書き方はややこしい…。葬儀・法事のたびに再確認を
香典袋の表書きは、相手の宗教や宗派によって使えるものが異なります。相手の宗教・宗派がわからない、わかるけど不安という方は、「御香典」と書くのが無難です。
香典袋の書き方から包み方、避けるべき金額まで、香典にはさまざまなマナーがあります。この記事を一度読んだだけですべて覚えるのは難しいです。後で確認しやすくなるよう、ぜひこの記事をお気に入り登録して、困ったときにチェックしてみてください。