香典には、新札ではなく使用感のあるお札を包むのがマナーです。この記事では、新札しかない場合の対処法や、金額の相場、香典袋の書き方など、香典に関するマナーを解説します。香典のマナーで迷いたくない、基本マナーをサッと押さえたい、と考えている方におすすめの記事です。
香典には、新札ではなく使用感のあるお札を包むのがマナーとされています。これは、新札だと「不幸を予期して用意していた」という印象を与えてしまうためです。
香典には新札を包まない以外にも、金額の相場、香典袋の書き方、お札の向きや包み方など、さまざまなマナーがあり複雑です。「香典のマナーって難しい」「急な訃報で、どうしたら良いかわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、香典に新札がNGな理由や、新札しかない場合の対処法を解説します。また、香典の金額相場、香典袋の書き方、お札の入れ方・包み方、渡し方まで、香典に関するマナーを端的に説明します。急な不幸で香典の用意が必要な方、香典のマナーをサッと確認したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
香典には新札を使わない
香典に新札を包んではいけません。古札（使用感のあるお札）を包みましょう。
香典に新札を包まないのは、葬儀（不幸）を予期し、前もって準備していたように感じられてしまうからです。新札を用意するには、銀行で新札両替をする必要があります。この一手間があるため、新札を包むと香典を前もって用意していた、不幸を予想し備えていたと捉えられかねないのです。
最近は気にしない人も増えてきていますが、お通夜や葬儀にはさまざまな人が集まります。このようなしきたりを重視する人もいるかもしれません。
どんな考え方の人に対しても、不快な思いをさせないよう、香典や葬儀に関する一般的なマナーは押さえておきましょう。
なお、ここでいう新札とは使用感のないきれいなお札、ピン札のことです。新しいデザインのお札のことではありません。新しいデザインのお札という意味での新札は、香典に包んでも構いません。
汚すぎるお札も避ける
古札なら何でもいいわけでありません。香典に包むお札には、ある程度きれいな古札を選びましょう。
たとえば何度も折られて端に切れ目が入っているお札、シワシワのお札、汚れが付いたお札など、汚すぎるお札は避けましょう。
新札しかないときの対処法
手元に新札しかない場合、縦に一度折り目を入れてからお札を包みましょう。このとき、「まだ少し新しい感じがするから」と、何度も折り目を入れたりお札をくしゃくしゃにしたりする必要はありません。
法事の香典も古札が無難
お通夜や葬儀の香典には新札を包んではいけません。訃報は突然くるものであり、新札を包むと不幸を予期し、準備していたと捉えられるためです。
これとは異なり、法事はあらかじめ日程が決まっています。そのため、新札を包んでも構わないと考える人もいます。
ただ、法事でも新札は避けた方が無難です。人や地域によって考え方は異なるためです。「葬儀でも法事でも、香典なのだから新札は良くない」と考える人もいるでしょう。
お布施は新札でも構わない
お布施はお通夜や葬儀で読経してくれた僧侶に渡すお金です。僧侶への感謝の気持ちを伝えるためのお金であるため、お布施は古札ではなく、新札で包むのが望ましいです。
ただ、お通夜や葬儀といった不幸はいつ来るのかわかりません。新札を用意するのが難しいなら、古札を包んでも問題ありません。その反対に、法事は事前に日程がわかっているため、新札を包むのが望ましいです。
香典のお金のマナー
新札を避ける以外にも、香典に関するマナーはあります。ここでは香典の金額相場やお札の入れ方、避けるべき金額など、香典のお金に関するマナーを紹介します。
香典の金額相場
香典の金額は相手との関係性や自分の年齢によって変わってきます。おおまかな目安は、次の表のとおりです。
| 20代 | 30代 | 40代～ | ||
| 親族 | 両親 | 3万～10万円 | 5万～10万円 | |
| 義理の両親 | 3万～5万円 | 10万円 | ||
| 祖父母 | 1万円 | 1万～3万円 | 3万～5万円 | |
| 兄弟・姉妹 | 3万～5万円 | 5万円 | ||
| 叔父・叔母 | 1万円 | 1万～2万円 | ||
| 従兄弟・その他の親族 | 3,000～1万円 | 3,000～2万円 | ||
| 親族以外 | 上司 | 5,000円 | 5,000～1万円 | 1万円 |
| 上司の家族 | 5,000円 | 5,000～1万円 | 1万円 | |
| 勤務先の社員 | 5,000円 | 5,000～1万円 | 1万円 | |
| 社員の家族 | 3,000～5,000円 | 3,000～1万円 | ||
| 友人・知人 | 3,000～5,000円 | 5,000～1万円 | 5,000～1万円 | |
| 友人の父母 | 3,000～5,000円 | 5,000～1万円 | 5,000～1万円 | |
香典の金額相場
相場を大きく超える金額は避ける
親しい相手には相場より少し多めの金額を包む、というのはよくあることです。たとえば相場なら5,000円を包むところを1万円を包む、5万円が相場だが親しい相手だからと6万円を包むということもあるでしょう。この程度なら、相場より多い金額を包んでも構いません。
しかし、相場を大きく超える金額を包むのは避けましょう。相手に気を遣わせてしまうだけでなく、香典返しの負担も大きくなるからです。
香典返しとは、受け取った香典に対するお礼の品を贈ることです。一般的に、受け取った香典の3分の1～半分ほどの金額の品物を贈ります。
このように、香典返しの金額は受け取った香典の金額により変わります。相場を大きく超える額を渡すと、かえって相手の負担になることもあります。
お札の向きに関するマナー
香典を包むときは、お札の裏表、上下にも気を配りましょう。表裏は、肖像画がある面を表として、お札は裏向きになるように包みます。上下は、肖像がある方が香典袋の底に来るように包みます。
お札の枚数は奇数に
香典では偶数を避けるべきだとされています。割り切れる数である偶数は、故人との縁が切れることを連想させ、縁起が悪いためです。6,000円や2万円、10万円など、いちばん大きな位が偶数になる金額は避けましょう。
ただ、「1万円だと少ないが、3万円だと多い。だから2万円を包みたい」という場合もあるでしょう。このような場合、お札の枚数が奇数になるように調整します。
たとえば2万円なら1万円札1枚と5,000円札2枚、10万円なら1万円札9枚と5,000円札2枚というイメージです。このように、お札の枚数が最小かつ奇数になるように、5,000円札を使って調整しましょう。
金額は忌み数を避ける
香典の金額が忌み数にならないように気を付けましょう。忌み数とは「4（死）」や「9（苦）」などの縁起の悪い数のことです。たとえば9,000円や4万円、9万円などの金額は避けます。
ただ、「3万円だと少ないが、4万円だと多い」のように、忌み数の金額が最適に思える場合もあるでしょう。このような場合、供物で金額を調整します。たとえば4万円なら、香典に3万円を包み、1万円分の供物を贈ることで、忌み数を避けられます。
香典袋の書き方・選び方
香典袋には「外袋と中袋があるもの」と「中袋がないもの」の2種類があります。外袋と中袋があるものでは、それぞれの袋に次のようなことを書きます。
【外袋】
- 表書き
- 差出人の氏名
【中袋：表】
- 金額
【中袋：裏】
- 郵便番号
- 住所
- 氏名
中袋がないものは、外袋に次のように書きます。
【外袋：表】
- 表書き
- 差出人の氏名
【外袋：裏】
- 郵便番号
- 住所
- 金額
このように、香典袋の書き方は内袋の有無によって変わります。連名で香典を出す場合はさらに細かいマナーがあり、正しい対応をするのは難しいです。
香典袋の細かな書き方、連名で出す場合の対処法は、こちらの記事で解説しています。特に香典を連名で出す方は、ぜひ一度お読みください。
宗教ごとに使える表書き
次の表のように、香典に使える表書きは宗教ごとに異なります。ただし、宗派や地域によって使える表書きが異なることもあります。不安なら葬儀社に確認しましょう。
| 宗教 | 表書き |
| 仏教 | ・御霊前 ・御香料 ・御香奠 など ※浄土真宗は御霊前ではなく御仏前 |
| 神道 | ・御霊前 ・御玉串料 ・御榊料 ・御神饌料 など |
| キリスト教（カトリック） | ・御霊前 ・御花料 ・献花料 ・御ミサ料 など |
| キリスト教（プロテスタント） | ・御花料 ・忌慰料 ・献花料 など ※御霊前はNG |
| 無宗教 | ・御香典 ・御香料 ・御霊前 ・御供料 など |
宗教ごとに使える表書き
相手の宗教・宗派がわからない場合は「御香典」が無難です。
宗教ごとの水引
香典袋の水引にも気を配りましょう。宗教ごとに使える水引は次の表のとおりです。
| 宗教 | 水引 |
| 仏教 | 黒と白、銀と白、黄と白 |
| 神道 | 銀または白黒 |
| キリスト教 | なし（付けても良い） |
宗教ごとの水引
香典袋の選び方
香典袋にはいくつかの種類があり、どれを使うべきかは包む金額により異なります。金額ごとの香典袋の選び方は、次の表のとおりです。
| 金額 | 香典袋の種類 |
| 3,000～5,000円（一般参列者） | 水引が印刷のもの |
| 1万～2万円 | 白無地の封筒に白黒の水引 |
| 3万～5万円 | 白無地の封筒に白黒または双銀の水引 |
| 6万円～10万円未満 | 中金封の封筒に双銀の水引 |
| 10万円以上 | 大金封の封筒に双銀の水引和紙製の香典袋に双銀の水引 |
金額ごとの香典袋の選び方
香典の包み方・渡し方
香典袋は袱紗（ふくさ）に包んで持ち歩き、受付で渡します。香典袋の包み方と渡し方を解説します。
香典袋の包み方
香典袋は袱紗（ふくさ）に包んで持ち歩きましょう。袱紗は香典袋やご祝儀袋を包むための布です。お通夜や葬儀などの弔事では、黒やグレー、藍色などの寒色系の袱紗を使います。紫の袱紗は弔事と慶事の両方で使えるため、1枚あると便利です。
香典袋を袱紗で包む方法は次のとおりです。
- 上から見てひし形になるよう、袱紗を裏向きにして置く
- 袱紗の右角を持ち、香典袋の左端に合わせて中央に折る
- 同じように、下、上の順に上下を折る
- 同じように左角を持ち袱紗を折り、右端にはみ出した部分を裏面に折り込む
香典の渡し方
香典はお通夜や葬儀の受付で渡します。受付では「この度は誠にご愁傷さまでございました。どうぞご霊前にお供えください」のように、お悔やみの言葉を述べて渡しましょう。
香典を渡す際は、香典袋を袱紗（ふくさ）から取り出します。その後、袱紗を手早く畳み、畳んだ袱紗に香典袋を乗せて渡しましょう。
香典は新札ではなく古札で包もう
香典は新札ではなく、古札で包みましょう。「法事では新札を包んでも良い」という考え方もありますが、いろいろな考え方の人がいるため、古札を包んだ方が無難です。
香典には新札を避ける以外にも、お札の入れ方や避けるべき金額、香典袋の書き方など、気を配るべきマナーがたくさんあります。本記事ではその中でも、基本的なマナーを端的に解説しました。いつでも復習できるよう、ぜひこの記事をお気に入り登録して、困ったときに役立ててください。
