「亡くなる」という言葉の意味やニュアンス、正しい言い換え言葉をご存じですか?「亡くなる」以外にも「逝去」や「死亡」など死を表現する同義語はたくさんあります。適切な類語の使い分けや使ってはいけない場面、使用シーンごとの例文などを解説します。
「亡くなる」は、「死」を表す言葉のなかでも柔らかさや敬意を込めた表現として、多くの場面で使われています。他に死を表す言葉として「死亡」「死去」「逝去」「他界」など多くのバリエーションがあり、状況に合わせた使い分けが必要です。
この記事では、「亡くなる」がもつ意味やニュアンス、言い換え表現、使用シーンなどをご紹介します。親族・友人・ビジネス別の訃報連絡例文を身に着けて、いざという時に役立てましょう。
「亡くなる」とは?
「亡くなる」という言葉の意味や表現の種類、使用できる状況などについて解説します。
「亡くなる」とは「死ぬ」の敬語的表現
「亡くなる」とは「死ぬ」という行為や状態を表す言葉のひとつです。死という直接的な表現による衝撃を、死の文字をなくした表現で緩和させて敬意を込めて伝えるような場面で用いられます。
たとえば「父親が昨晩に亡くなった」とか「取引先の部長が亡くなった」のように、家庭内や親族、友人知人だけでなく、ビジネス上のやり取りにも使える幅広い表現です。
「死ぬ」という言葉とはほぼ同義ですが、敬語的表現として「亡くなる」を使ったほうがソフトに伝えられて相手への配慮も示せます。
「亡くなる」の使用シーン
亡くなるという言葉はこれら3つの場面で使用されています。
(1)身近な人との日常会話
家族や友人などの身近な人の訃報を伝える際や日常会話のなかで死について触れる際に使用します。
(2)ビジネス上のやり取り
社内報や取引先への連絡などで用いられ、公的で比較的お堅い文脈のなかでも使用できます。
(3)公的資料などで言及
メディアや新聞記事、ニュースなどで「死亡」よりも柔らかい印象を与えたい時に使われます。
「亡くなる」は言い換え表現がたくさんある
「亡くなる」と同様に死を表現する言葉はたくさんあります。これらは宗教や慣習、相手への敬意、その時の状況などによって使い分けます。
同じ意味を持つからと安易に誤った言い換えをしてしまえば思わぬ失礼につながる恐れがあるため、言い換え表現を一通り理解しておく必要があるでしょう。
亡くなるの言い換え表現の意味
ここからは「亡くなる」を言い換える表現の、それぞれがもつ意味やニュアンスを解説します。使い方を誤らないためには、敬意の度合いや使用シーンなどにも注意が必要です。
死亡
死という事実をもっとも客観的で公的に伝える響きがあり、法的な文書や医療現場の記録、事故や事件の報道など、感情抜きで死を正確で確実に伝える際に使われます。「交通事故で〇人が死亡」「死亡診断書」など。
死去
「死ぬ」の改まった表現で、新聞やニュースの報道に頻繁に使われています。「弊社社長の〇〇が昨日死去いたしました」など。
他界
この世から別世界へ旅立つという叙情的な意味があり、宗教的かつ文学的イメージの強い言い換え表現ですが、日常会話でも割とよく使われています。「父親が先週他界しました」など。
永眠
永遠の眠りにつくという荘厳で柔らかな印象のある表現です。お悔やみや追悼の文面、喪中はがきなど、静かな印象を醸したい時に適しています。「〇〇様は〇月〇日に永眠されました」など。
逝去(せいきょ)
相手を敬う意味合いを強く含み、公的な場やビジネスシーンでもよく使われる表現です。なお「ご逝去」とすると二重敬語にあたると言われていましたが、すでに広く浸透した表現になっているため、むしろ耳慣れていて丁寧な印象を与えてくれます。「大女優の〇〇さんが一昨日逝去されました」「ご逝去の訃報に接し、ご冥福をお祈りします」。
急死
病気や事故などによる突然の死でよく用いられますが、受け手側にとっては衝撃が強い表現です。突然亡くなったことを強調したい場合に使用します。「昨晩突然倒れ、その30分後に急死されたそうです」など。
急逝(きゅうせい)
意味は「急死」と同義ですが「逝」という字があることで文章が少し改まった印象を受けるため、ビジネスシーンや報道で使われやすい表現です。若くして亡くなられた方へも使うため、高齢者の死に対して使うことはあまりありません。「先日お会いした際は血色がよかったので、急逝の知らせを聞いて驚きました」など。
息を引き取る
最後の呼吸が止まる瞬間を表現する言葉で、死にいたる場面の状況を描写した言い回しです。親族らの看取りの状況など具体的に伝えたいような時に使われます。「家族に見守られながら安らかに息を引き取りました」など。
あの世へ行く
死という言葉を使わない遠回しで丁寧な表現ですが、日常会話などでも使用するやや砕けた表現でもあります。現世に対比する「あの世」という語感であるため、宗教的要素やスピリチュアルなニュアンスを含んでいます。「人は死ぬとあの世へ行きます」「母親は長い闘病生活の末にあの世へ行きました」など。
くたばる
俗語的で口語的かつ皮肉を込めた冗談の意図もあり、親しい友人同士の乱暴な言い回しやジョークで使われることがほとんどです。法事や弔事などフォーマルな場面では使ってはいけません。「時の人だったアイツも最後は塀のなかでくたばったらしい」など。
旅立つ
人生という旅路を終えて別の場所へと華やかに出発するといった、詩的で文学的な表現です。死を受け入れるしかない遺族の悲しみを和らげる表現としても使われます。「〇〇さんは本日未明に闘病の苦しみから解放されて旅立たれました」など。
天に召される
キリスト教的なニュアンスを含む宗教表現であるものの、日本語表現としても広く使われています。「兄は昨日、その短い一生を終え天に召されました」など。
昇天
魂が天に昇るイメージがあり宗教や信仰が感じられる表現で、実際に葬儀や教会関連の案内などで見られます。「信徒は、彼が昇天したと信じています」など。
崩御(ほうぎょ)
天皇や皇后、皇太后など、最高位の崇高な地位にある方が亡くなったことを指す最高敬語であり、一般の方に使うのは不適切です。「天皇陛下が崩御されたとの報道がありました」など。
入滅(にゅうめつ)
釈迦をはじめとした高僧や僧侶が死ぬことを指す仏教用語であるため、僧侶や仏教関係者以外には用いません。「高名な住職が先日入滅されました」など。
薨去(こうきょ)
皇族や三位以上の貴人が亡くなることを指す尊敬語。「崩御」ほどの最高位の方が対象ではありませんが一般の方には用いない表現です。「皇族の一員であられる〇〇様が薨去されました」など。
身罷る(みまかる)
罷るという古語には、死ぬや行く、退出するという意味があります。つまり、身罷るとは身があの世へ行くすなわち死ぬことを意味していますが、現代ではあまり使用されない表現です。「先日、母親が身罷りました」など。
使用シーンごとの「亡くなる」を使った例文
ここでは、「亡くなる」を使った訃報連絡やお悔やみの言葉で使用できる例文やポイントを、使用シーンごとに紹介します。
故人の親族へ訃報を伝える場合
<例文>
突然のご連絡で失礼いたします。実は私の父が昨晩亡くなりました。まだ気持ちの整理がつかず動揺しておりますが、お通夜と葬儀の予定が決まり次第、改めてご連絡いたします。
<ポイント>
親族同士では「亡くなる」を用いるのが自然です。近しい間柄であれば回りくどい表現ではなく状況をシンプルに伝えましょう。
故人の友人へ訃報を伝える場合
<例文>
先日わたしの父親が亡くなりました。もし都合が合えば〇日のお通夜に来てもらえたら嬉しいです。
<ポイント>
親しい友人へはカジュアルでも問題ありませんが、相手の気持ちに配慮する必要はあります。友人からのお悔やみやサポートの申し出がしやすいように、式の日程や場所を早めに共有しておくとよいでしょう。
ビジネス上で訃報を伝える場合
<例文>
弊社の部長〇〇が、〇月〇日の深夜に亡くなりましたのでご報告申し上げます。生前のご厚情に深く感謝するとともに、お通夜や葬儀の日程が決定次第ご案内いたします。
<ポイント>
ビジネス文書や社内メールなどでは、簡潔かつ敬意をもって伝えるのが基本マナーです。「亡くなる」は改まった相手に対しても使いやすいですが、必要に応じて「死去」や「逝去」を使い分ける場合があります。
「亡くなる」の類語や言い換えはシーンや相手によって選ぼう
「亡くなる」は「死ぬ」に比べて柔らかい表現であり敬意も含まれるため、一般的で広く使われている言葉です。
同じ死を表す言葉には「死亡」「死去」「他界」「永眠」「逝去」「急逝」などがあり、皇族など高位者へは「崩御」や「薨去」など最高敬語を用います。
故人の親族や友人であれば「亡くなる」が使え、公的場面やビジネスシーンでは「死去」「逝去」など改まった言葉が適する場合もあります。
訃報を伝える場面では最適な言葉選びが重要ですが、相手の心情に寄り添った穏やかで丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。