神式葬儀(神葬祭)は仏式葬儀と異なる点があるため、初めてなら戸惑うはずです。神式葬儀の基本的な流れや特徴的儀式(神棚封じ・玉串奉奠)、服装マナー、玉串料の表書きや金額、お悔やみ言葉などを解説します。これらを抑えておけば安心して神式葬儀に臨めるでしょう。
「神式葬儀」と聞いても、どのような流れで進み、仏式葬儀と何が違うのかわからない方も多いのではないでしょうか。
神式葬儀は神道の考え方に則って行われる葬儀形式です。仏式とは儀式の内容や道具、使用する言葉などの基本マナーが異なるため、知らずに臨むと会場で困惑してしまうでしょう。
本記事では、神式葬儀(神葬祭)の意味や特徴、流れや注意ポイント、また玉串奉奠の方法や玉串料の目安、服装など、神式葬儀で役立つ情報を解説しますので、ぜひ最後までご覧いただき不安や疑問を解消してください。
神式の葬儀「神葬祭」とは?
神式葬儀は神道の考え方に基づいた葬儀形式であり、神葬祭(しんそうさい)と呼ばれます。日本では仏式葬儀が大多数のためお葬式は仏式が一般的ですが、その他は神式葬儀やキリスト教式などです。
神道の考え方では、人は亡くなると「祖霊神(それいしん)」として家の神様に合祀されると考えられます。こうした考え方に基づく葬儀全般を「神葬祭」と呼び、臨終から火葬後の「帰家祭(きかさい)」まで、それぞれ段階的な儀式を行うのが特徴です。
神道は日本に古くから存在する宗教の一つであり、神式特有の儀礼や用語を理解してマナーを覚えておくことで、急遽神式葬儀に参列する場合でもスムーズに対応できるでしょう。
神式葬儀と仏式葬儀の違い
神式葬儀と仏式葬儀の6つの違いについて解説します。
(1)呼び方の違い
- 仏教の葬儀:仏式葬儀
- 神道の葬儀:神式葬儀または神葬祭(しんそうさい)
(2)儀式の中心
- 仏式:読経と焼香
- 神式:神職(神主)が祝詞(のりと)を奏上、参列者は玉串奉奠(たまぐしほうてん)
(3)葬儀を行う場所
- 仏式:自宅や斎場、寺院
- 神式:自宅や斎場(神社では行わない)
(4)祭壇の違い
- 仏式:位牌や遺影、焼香台などを設置し、僧侶が読経を行う
- 神式:神饌(しんせん)や幣帛(へいはく)を供え、神職(神主)が祝詞(のりと)を奏上
(5)お悔やみや用語の違い
- 仏式:「南無阿弥陀仏」や「ご冥福をお祈りします」
- 神式:「御霊(みたま)が安らかに鎮まりますように」という表現が一般的で、仏式用語は使用しない
(6)供養・法要の違い
- 仏式:四十九日や回忌(一周忌・三回忌・七回忌・十三回忌など)で供養
- 神式:五十日祭や式年祭(一年祭・三年祭・五年祭・十年祭など)で供養
神式葬儀の基本的な流れ
神式でも仏式と同じく、お通夜にあたる日から翌日までの2日間にわたって葬儀が執り行われます。神式葬儀の基本的な流れは以下のとおりです。
臨終〜帰幽奉告〜枕直しの儀〜納棺の儀
臨終から納棺の儀までの流れを解説します。
臨終・帰幽奉告
帰幽奉告(きゆうほうこく)とは、故人がご逝去されたあとに神棚に向かって「故人が神のもとへ帰幽しました」と報告する儀式です。
枕直しの儀
ご遺体を安置する枕元を清めて整える簡略的な儀式です。
神棚や祖霊舎の扉を閉めて半紙などの白い紙を貼って封印(神棚封じ)し、忌明けの五十日祭まではそのまま貼っておきます。
納棺の儀
ご遺体を棺に納める儀式です。
仏式葬儀で「納棺師」が行うのと同様に、神式でも専門家や遺族がご遺体を丁寧に棺へと移します。
【神葬祭1日目】通夜祭・遷霊祭
通夜祭と遷霊祭は以下のような儀式です。
通夜祭
仏式でいうお通夜にあたり、ご遺体を安置した祭壇の前で神職が祝詞(のりと)を奏上(そうじょう)し、地域によっては通夜振る舞い(食事会)が行われます。
ご家族やご親族は、仏式のお焼香にあたる「玉串奉奠」を行って故人の霊を慰めます。
遷霊祭(せんれいさい)
ご遺体に宿る御霊を、霊璽(れいじ)という木製の札へと遷す儀式です。
霊璽は 仏式の位牌に相当するもので、御霊代(みたましろ)とも呼ばれます。
【神葬祭2日目】葬場祭〜火葬祭・埋葬祭〜帰家祭〜手水の儀〜直会
葬場祭〜火葬祭・埋葬祭〜帰家祭〜手水の儀〜直会のそれぞれについて解説します。
葬場祭(そうじょうさい)
仏式の葬儀にあたる儀式で、神職が祭壇で祝詞を奏上して玉串奉奠などを行います。
ご遺族や参列者も順番に玉串奉奠を行って拝礼します。玉串とは、榊(さかき)の枝に紙垂(しで)を付けたお供え物です。
火葬祭・埋葬祭
火葬場へ移動して荼毘(だび)に付し、そのあと墓地で遺骨を納めるときに埋葬祭を行います。このとき神職が簡単に祝詞奏上を行いますが、神職が同行しない場合もあります。
帰家祭(きかさい)
火葬祭・埋葬祭が終わって自宅に戻ったあと、儀式終了を報告して故人の霊を家へ迎え入れる儀式です。
手水の儀(ちょうずのぎ)
神道の作法のひとつで、葬儀の節目節目で手や口を塩と手水で清めて清浄を保つための儀式です。
水の浄化力によって心と体の穢れ(けがれ)を取り去る禊(みそぎ)が簡略化されたものといわれます。
直会(なおらい)
すべての儀式が終わったあとで、参列者へのお礼も兼ねた会食の席を設けることがあります。仏式でいう通夜振る舞いや精進落としと同様の意味があります。
【神式葬のあと】のご供養(法要)
神式のご供養は仏式のような読経はなく、五十日祭や式年祭などの節目に故人の霊を慰める行事を行います。
五十日祭とは
神式の「五十日祭」は仏式の「四十九日法要」にあたる儀式で、行うのは故人が亡くなった日を1日目として数えた50日目に行います。儀式の目的は、故人の霊を祖先の神々と一緒にお祀りするためです。
式年祭とは
仏式の年忌法要に相当する行事で、一年祭・三年祭・五年祭など霊璽を通して故人に祈りを捧げます。
地域や神社によって内容が多少異なる場合があるため、神職や葬儀社に相談しながら進めましょう。
神式葬儀の特徴的な儀式
神式葬儀の特徴的な儀式である「神棚封じ」や「玉串奉奠」について解説します。
神棚封じ
神棚封じ(かみだなふうじ)とは、家の中に神棚がある場合に、忌明けまでは神棚を閉じて白紙や半紙を貼って封印します。このれ儀式は、故人を失った悲しみを神に伝えて死の穢(けが)れを神棚に及ぼさないために行うとされます。
一般的には「忌明け」や「五十日祭」までは白紙を貼って封じておき、祭の際に神棚封じを解きます。
玉串奉奠
玉串奉奠(たまぐしほうてん)とは、玉串を神前に供えて二礼二拍手一礼(または一礼一拍手)を行い、故人の霊を慰めると同時に神々へも祈りを捧げる儀式。玉串奉奠は仏式でいう焼香にあたり、以下のような作法で行います。
(1)玉串を両手(右手は枝、左手は葉先)で受け取って遺族へ一礼
(2)玉串を時計回りに90度回転させ体の正面に立てて祈念
(3)玉串を180度回転して根元を祭壇側へ向けて両手で置いて捧げる
(4)玉串を捧げたら二礼、しのび手(音を立てない拍手)を二拍、深く一礼
(5)数歩下がってから遺族へ一礼して席へ戻る
玉串料(神式葬儀の香典)を用意する
仏式葬儀の「香典」に相当するのが「玉串料」です。弔問や葬儀参列の際は玉串料としてお金を包みます。
玉串料の目安
金額は故人との関係性や地域によって異なりますが、一般的には以下が一つの目安です。
故人との関係 | 玉串料の目安 |
家族:両親 :祖父母、兄弟姉妹 | 5〜10万円3〜5万円 |
配偶者家族 | 1〜5万円 |
親族 | 1〜3万円 |
上司 | 5千〜1万円 |
友人・知人 | 5千〜1万円 |
取引先 | 5千〜1万円 |
近所の人 | 3千〜1万円 |
あくまで目安なので、地域の風習や家族構成などを考慮して決定しましょう。
香典袋の水引装飾と表書きの文言
水引き:結び切り、黒白または双銀(銀一色)
表書き:御玉串料、御霊前、御榊料などが一般的
裏書き:喪主が分かるように氏名と住所を記入
神職や神社関係者へのお礼
神葬祭を執り行った神職や神社関係者へ、御礼などの表書きを用いて別途謝礼を包む場合があります。
香典返しについて
神式でもお礼の品を贈る習慣がありますが、仏式ほどの厳密なルールはありません。
忌明けや五十日祭が終わったあとに品物を贈るケースが一般的です。表書きは「粗品」「志」として、のし紙に黒白もしくは双銀の水引をかけます。
神式葬儀では仏式とのマナーの違いに注意
仏式と異なる神式葬儀のマナーについて解説します。
数珠は使わない
仏式の葬儀で必ず用いる数珠(念珠)ですが神式では使いません。
服装は喪服
神式も仏式と同様に黒の喪服を着用するのが基本です。靴下やストッキング、ネクタイ、バッグ、靴なども光沢のない黒で統一し、肌の露出を少なくします。また、殺生を連想させる革製品やキラキラと反射するアクセサリーを避け、結婚指輪以外のアクセサリー類は外しておくのが基本マナーです。
お悔やみの言葉を言わない
挨拶の際のお悔やみの言葉ですが、以下のような仏式用語は使わないため注意が必要です。
「お悔やみ申し上げます」
「ご冥福をお祈りします」
「ご愁傷さま」
「冥福」「成仏」「供養」などの仏教用語
代わりに「御霊(みたま)の安らかなることをお祈りいたします」「御霊(みたま)の平安をお祈りいたします」など、神道的な表現を使いましょう。
(まとめ)神式葬儀(神葬祭)と仏式葬式との違い、流れやマナーを知ろう
神式葬儀(神葬祭)では仏式葬儀とは大きく異なる用語や儀礼があります。しかし、基本的な流れを押さえ、玉串奉奠や神棚封じなどの特徴的な儀式を理解し、玉串料の表書きや金額の目安、神職へのお礼なども事前に確認して準備しましょう。
お悔やみの言葉や数珠は使用せず、地域や家のしきたり、神社や葬儀社の方針があるため、適切なマナーを見極めて臨んでください。