死装束には故人の好きな服を選ぶこともでき、スーツや着物など多様な選択肢があります。 本記事では、死装束の選び方や注意点、避けるべき服装や副葬品について詳しく解説します。 死装束選びに迷っている方、故人らしい見送り方を考えたい方におすすめです。
死装束とは、故人が旅立つ際に身につける服のことです。かつては白装束が一般的でしたが、近年ではスーツやドレス、着物など、故人の好きだった服を選ぶ方も増えています。
とはいえ、どんな服でも良いわけではありません。素材によっては火葬できないこともあり、選び方に迷ってしまう方もいるでしょう。
本記事では、死装束としてよく選ばれる服や、選び方のポイント、避けるべきアイテムについて詳しく解説します。故人らしい服で見送りたいと考えている方、納棺時の服装に不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
死装束に好きな服を着せてもOK
死装束とは、故人が旅立つ際に着る服のことで、納棺のときに着せられるものです。本来は「経帷子(きょうかたびら)」という白装束を用いるのが一般的ですが、近年では故人の好きだった服を選ぶ家族、生前に自分で死装束を選ぶ人も増えています。
ただし、どんな服でも良いわけではなく、火葬に適さない素材をはじめ避けた方が良いものもあります。 具体的なNGアイテムは記事後半で、そのアイテムの代用品とあわせて紹介します。
そもそも死装束とは
死装束は故人があの世へ旅立つ際に身にまとう装いのことで、冥界への旅路にふさわしい姿に整えるという意味があります。もともとは死後の世界でも困らないようにとの願いが込められたもので、旅支度のような意味合いも持っています。
中でもよく知られているのが「経帷子(きょうかたびら)」と呼ばれる白装束です。白は死や清浄を象徴する色とされ、無垢な姿で旅立てるようにとの思いが込められています。経帷子は衿を左前にして着せるのが特徴です。
ただし、死装束の形式は宗教や宗派によって異なります。数珠や脚絆、手甲、頭陀袋などを一緒に身につける場合もあります。地域の風習や宗教・宗派の考え方によって装いに違いがあるため、不安な方は葬儀社に相談しましょう。
一般的な死装束である経帷子や副葬品として身に着けるもの、宗教ごとの死装束の違いについて知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
死装束(しにしょうぞく)とは?必要な理由や着せ方、宗教ごとの違い
経帷子以外の、よく着せられる死装束
死装束は経帷子が基本とされる一方で、近年では故人らしさを大切にした服装を選ぶケースも増えています。ここでは、経帷子以外によく選ばれている服装について紹介します。
スーツ
男性であれば黒や紺のスーツ、女性であればシンプルなフォーマルスーツなどがよく選ばれます。ネクタイやワイシャツ・ブラウスなども整えて納棺され、パリッとした印象を与える装いです。
仕事熱心だった方や、生前スーツ姿が印象的だった方に選ばれることが多いです。また、格式を重んじたい遺族にとっても、スーツは落ち着きと品のある選択肢として支持されています。
ドレス
上品なワンピースやドレスは、女性の死装束としてよく選ばれています。死装束として身に着けるドレスは「エンディングドレス」と呼ばれ、ウエディングドレスのような華やかなものが多いです。中でも淡い色合いのものや、シンプルで飾りすぎないデザインが好まれる傾向にあります。
華やかな場が好きだった方や、最期も美しく送り出したいという遺族の思いから選ばれることが多いです。結婚式やパーティーでよく着ていたお気に入りのドレスを用いる場合もあります。
着物
和装に親しんでいた方には、着物を死装束として選ぶケースもあります。訪問着や色無地、小紋など、派手すぎない上品なものが選ばれることが多く、帯や小物も合わせて納棺されます。
生前、茶道や華道をたしなんでいた方、和の文化を大切にしていた方に好まれる装いです。遺族が用意した思い出の着物を選ぶことで、故人らしさを大切にできます。
お気に入りの洋服
カジュアルなニットやシャツ、ワンピースなど、生前よく着ていた服を死装束として選ぶ方もいます。着慣れた服で眠るように旅立ってほしいという、遺族の願いが込められた選択です。
いつもの姿で送り出したいという気持ちから、普段着が選ばれることもあります。特に、自分らしい最期を望んでいた方におすすめで、生前に「この服で見送ってほしい」と希望を伝える方もいます。
死装束の選び方
故人に好きな死装束を着せる場合、見た目だけでなく着せやすさも大切です。ここでは、納棺時に着せやすい死装束の選び方を紹介します。
サイズにゆとりのある服を選ぶ
納棺の際、故人の身体に無理なく死装束を着せるために、サイズに余裕がある服を選びましょう。体にぴったり合った服だと、関節が動かしづらくなってしまい、着せるのに苦労するかもしれません。
選ぶ際は、普段よりワンサイズ上のものや、全体的にゆったりとしたシルエットの服を選ぶと安心です。特に肩や腕まわり、腰回りに余裕があるかを確認しておきましょう。
ファスナーの少ない服を選ぶ
ファスナーは一見便利ですが、納棺時には引っかかって動かしにくかったり、無理に動かすことで故人の肌や衣類を傷めてしまったりすることもあります。
選ぶ際は、前開きでボタンが少ないものや、かぶりで着せられるシンプルなデザインの服を選ぶとスムーズです。伸びる素材との組み合わせなら、さらに着せやすくなります。
ストレッチ素材のズボンを選ぶ
下半身は特に動かしにくいため、ストレッチ性のある素材を選ぶといいでしょう。動きに合わせて生地が伸びることで、無理なく足を通せます。
ウエスト部分がゴムになっているズボンや、柔らかいジャージ素材のものがおすすめです。ファッション性よりも、伸縮性や締め付けの少なさを優先して選ぶと良いでしょう。
死装束で着せられない、身に付けられないもの
故人の好きだったものを身につけさせてあげたいと思うのは自然なことですが、火葬の際には避けるべきものもあります。ここでは、火葬に適さないものと、その代用品について紹介します。
ライターなどの爆発物
火葬炉の中で爆発の危険があるため、ライターやスプレー缶、小型の電池類などの爆発物は一切納棺できません。予想外の事故や火葬炉の損傷を引き起こす恐れがあるため、必ず外しましょう。
ただ、タバコが好きだった故人のために、ライターを入れてあげたい方もいるでしょう。この場合、紙に包んだタバコの葉を少量入れたり、マッチ1本を添えるなど、安全に配慮した形で代用しましょう。事前に葬儀社へ相談しておくと安心です。
ガラスや紙など火葬炉の故障につながるもの
ガラス製品や分厚い紙類は高温で処理しきれず、炉の内部に残って故障の原因となります。解け残ったガラスが遺骨に付いてしまうこともあります。
特に写真立てやビン類、厚手の台紙などは避けなければなりません。故人が生前かけていたメガネなども、外しましょう。
思い出の写真を納めたい場合は、燃えやすい薄い紙に印刷したものを入れると良いでしょう。写真の代わりに手紙を添える方法もあります。
革製品や金属など燃え残るもの
ベルトや靴、時計、アクセサリーなどの革や金属製品は高温でも完全には焼けず、遺骨と一緒に残ってしまいます。これらは納棺前に外さなければなりません。
形見として持たせたい場合は、同じような素材を模した、代用品を使うこともできます。近年では、紙で作られた腕時計やネックレスなどもあります。紙製品も燃え残りやすいため、入れられないかもしれませんが、気になる方は葬儀社に相談してみましょう。
プラスチックなどの燃やすと有害なもの
プラスチックや合成樹脂の製品は、燃やすと有害物質を発生させる恐れがあり、火葬時には入れられません。おもちゃや装飾品の一部に含まれていることも多いため、注意が必要です。
故人の愛用品がプラスチック製だった場合は、それに似た色や素材感の布で作ったものを添えるといった工夫ができます。気持ちを形にする方法はさまざまなので、無理のない範囲で考えましょう。
死装束に好きな服を着せる際の注意点
死装束に好きな服を着せることは可能ですが、選ぶ際にはいくつかの注意点があります。形式やマナー、周囲への配慮を忘れずに、服選びを進めましょう。
着物は衿を左前にする
着物を死装束として着せる場合、衿を左前にすることが大切です。これは生者とは逆の着せ方で、亡くなった方にだけ行う作法です。右前のままでは「間違った着せ方」となり、非常識という印象を与えてしまいます。
左前にする理由は、仏教の考え方に由来しています。生きている人とは異なる世界に旅立つという意味が込められており、故人を見送るうえで欠かせない所作とされています。
家族や親族と相談する
故人にどんな死装束を着せるか、自分だけで決めてはいけません。他の遺族や親族にも、それぞれの想いがあります。自分だけで決めてしまうと、後で「相談してほしかった」と思われるかもしれません。
家族や親族と話し合い、気持ちを共有しながら決めることで、納得のいく形で故人を見送れるでしょう。
葬儀社に相談・確認のうえで決める
着せたい服が決まっていても、実際に納棺できるかどうかは火葬の条件や施設のルールによって異なります。必ず葬儀社に相談し、その服を着せられるかどうか確認しましょう。
確認を怠ると、当日に変更を求められ、希望どおりの服を着せられないかもしれません。納得のいくお見送りをするために、葬儀社と相談しながら準備を進めましょう。
死装束は好きな服を着せられるが、何でもOKなわけではない
死装束には経帷子を用いるのが一般的ですが、近年では故人の好きだった服を着せて送り出すケースも増えています。生前に自分で死装束を選ぶ方もおり、最期の姿にその人らしさを込めたいという思いが反映されています。
ただし、すべての服や持ち物が火葬できるわけではありません。素材によっては、棺に入れられないものもあります。また、家族や親族の意向を無視して進めると、思わぬトラブルにつながることもあります。
安心して見送るためには、葬儀社とよく相談しながら、家族とも気持ちを共有して決めることが大切です。
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