葬儀のお返しには、参列へのお礼を伝える「会葬御礼」と、香典へのお礼を示す「香典返し」があります。本記事では葬儀のお返しの品物の選び方や渡す時期、マナーまでわかりやすく解説。香典返しの基本をしっかり知りたい方に向けた記事です。
葬儀に参列してくれた方へのお返しには、「会葬御礼」と「香典返し」の2つがあります。どちらも弔問や香典に対して感謝の気持ちを伝えるための大切な慣習であり、故人や遺族の心遣いを形に表すものです。
とはいえ、どのような品を選び、いつ渡せばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。「香典返しは半返しが基本」と聞いても、実際の相場やマナーがわかりにくいと感じることもあるかもしれません。
本記事では、会葬御礼と香典返しの違いや渡すタイミング、品物選びの基本マナーまで詳しく解説します。初めて葬儀のお返しを準備する方や、失礼のない対応をしたい方は、ぜひ参考にしてください。
葬儀に来てくれた方への2つのお返し
葬儀に参列してくれた方には、感謝の気持ちを伝えるためのお返しを行います。一般的には「会葬御礼」と「香典返し」の2つがあり、それぞれ目的や渡す時期が異なります。この違いを理解しておくことで、失礼のない丁寧な対応ができます。
会葬御礼
会葬御礼とは、葬儀や告別式に参列してくださった方へ、弔問への感謝を伝えるための品物です。香典の有無にかかわらず、葬儀に足を運んでくれたすべての方にお渡しします。
品物はお茶やタオル、ハンカチなど、「消えもの」と呼ばれる消耗品が一般的です。高価なものではなく、感謝を示すささやかな贈り物として選びます。葬儀当日に受付で直接渡すのが基本で、あらかじめ人数分を用意しておきます。
会葬御礼は、短い時間でも弔問に訪れてくれた方へ「お越しいただきありがとうございました」という気持ちを伝える大切な習慣です。
香典返し
香典返しは、香典をいただいた方に対して感謝の意を込めて贈るお返しです。いただいた金額の一部を品物でお返しするもので、一般的には「半返し」と呼ばれる慣習に沿って選びます。
香典返しは会葬御礼とは異なり、香典を受け取った方のみに贈ります。品物にはお茶や海苔、洗剤、タオル、カタログギフトなどが多く選ばれます。
香典返しには、相手への感謝と同時に「無事に忌明けを迎えました」という報告の意味もあります。そのため、葬儀当日に渡す場合と、四十九日の忌明けに送る場合があります。香典返しを渡すタイミングについて、詳しくは後述します。
会葬御礼と香典返しは両方渡す
会葬御礼と香典返しは、目的が異なるため両方を用意するのが一般的です。葬儀当日には参列への感謝として会葬御礼を渡し、後日あらためて香典返しを送ることで、二重の感謝を丁寧に伝えられます。
香典返しを葬儀当日に渡す「即日返し」の形式をとる場合もあります。その場合でも、会葬御礼は別途用意しておきましょう。
香典返しの金額は「半返し」が一般的
香典返しの金額は、いただいた香典の「半返し(二分の一)」から「三分の一返し」を目安とするのが一般的です。地域や宗派によって多少の違いはありますが、この範囲で選べば失礼になることはほとんどありません。相手の気持ちに見合った品物を選ぶことが大切です。
香典返しは高価すぎても相手に気を遣わせてしまい、安すぎても感謝の気持ちが伝わりにくくなります。いただいた金額や相手との関係性を考慮しながら、心のこもったお返しを選びましょう。
半返しをしなくてもいいケース
すべての香典に対して半返しをする必要はありません。相手との関係や香典の性質によっては、金額を抑えたり、お返し自体を控えたりする場合もあります。
たとえば、近親者や家族など、ごく親しい間柄の方から多めの香典をいただいた場合は、形式的なお返しをせず、心のこもったお礼状だけを送ることもあります。また、3万円以上の明らかに高額な香典をいただいたときは、金額の3分の1程度を上限にする方が無難です。
香典返しを渡すタイミング
香典返しには、葬儀当日に渡す場合と、忌明け後にあらためて送る場合の2つのタイミングがあります。地域の風習や遺族の意向によってどちらを選ぶかが異なりますが、それぞれに意味とメリットがあります。
お通夜や葬儀当日に渡す「即日返し」
即日返しとは、お通夜や葬儀当日に、香典を受け取ったその場でお返しの品を渡す方法です。近年はこの形式を選ぶ家庭が増えています。
即日返しの最大のメリットは、後日の手配が不要になる点です。四十九日後に個別に品物を送る手間を省けるため、遺族の負担を軽減できます。また、参列者にとってもすぐにお返しを受け取れるため、双方にとって効率的です。
ただし、参列者全員に同じ品物を渡すため、金額に応じた個別対応はできません。高額の香典をいただいた方には、後日あらためて別途お礼を送るケースもあります。
即日返しを選ぶ場合は、日持ちのする食品やタオルなど、誰にでも喜ばれる品を選ぶと安心です。
四十九日の忌明けに送る「忌明け返し」
忌明け返しは、故人の四十九日法要を終えたあとに、香典をいただいた方へ感謝の気持ちを込めて送る方法です。もともとはこちらが主流で、「無事に忌明けを迎えた」という報告を兼ねたお返しとなります。
忌明け返しの特徴は、いただいた金額に応じて品物を選べる点です。香典帳を確認しながら、一人ひとりにふさわしい品を選べます。手間はかかりますが、より丁寧な印象を与えられるでしょう。
一般的には四十九日法要を終えた概ね1か月以内(遅くとも)に発送し、お礼状を添えて送るのがマナーです。遠方の方や葬儀に参列できなかった方へも、改めて感謝を伝える機会になります。
香典返しにおすすめの品物
香典返しは、相手の気持ちに対する感謝を形で表すものです。そのため、誰にでも受け入れられやすく、後に残らない品物が好まれます。ここでは、香典返しに適した品物を紹介します。
消耗品
香典返しの定番といえるのが、日常生活で使える消耗品です。お茶や洗剤、タオルなどは実用性が高く、相手に負担をかけずに受け取ってもらえます。
特にお茶は、種類も価格帯もさまざまで、香典返しとして根強い人気があります。また、タオルや石けんなども「清める」「悲しみをぬぐい去る、包み込む」といった象徴的な意味を持つことから、弔事のお返しにふさわしい品です。
誰に贈っても使いやすく、好みに左右されにくいため、多くの家庭で選ばれています。
飲食物
飲食物も香典返しでよく選ばれる品の一つです。特に、海苔やお菓子、コーヒー、調味料など、日持ちのする食品が人気です。
「不幸を残さない」という考え方から、食べてなくなるものは弔事と相性が良いされています。包装やデザインも落ち着いた色合いを選ぶと、弔事にふさわしい印象になります。
カタログギフト
最近では、カタログギフトを香典返しに選ぶ方も増えています。相手が好きなものを自分で選べるため、好みや年齢層を問わず贈れる点が大きな魅力です。
香典返し専用のカタログギフトも多く、落ち着いたデザインや弔事向けの品物がそろっています。掲載商品は食品や日用品のほか、名産品や体験ギフトなどもあり、幅広い選択肢から選べます。
感謝の気持ちを伝えながら、相手が本当に喜ぶ品を選んでもらえる、現代的なお返しの形といえるでしょう。
香典返しで選んではいけない品物
香典返しでは、感謝の気持ちを伝えることが大切ですが、品物の選び方を誤ると相手に不快な印象を与えてしまうことがあります。弔事にはふさわしくない品物もあるため、避けたほうが良いものをあらかじめ知っておくことが大切です。
生鮮食品
果物や肉、魚といった生鮮食品は、香典返しには不向きです。日持ちがせず、相手の受け取りタイミングによっては傷んでしまうおそれがあるためです。
また、生鮮食品(肉や魚など)は、仏教の「殺生禁断」の教えに反するとされ、弔事にはふさわしくありません。。お祝い事や季節の贈答では喜ばれる品でも、香典返しでは避けるのがマナーです。
香典返しには、常温で保存でき、誰にでも受け入れられやすい日持ちのする品物を選ぶのが安心です。
縁起物
鯛や昆布、紅白まんじゅう、だるまなどの「縁起物」は、祝い事を連想させるため香典返しには適していません。これらは「喜びを分かち合う」意味を持つ品であり、弔事とは正反対の意味になります。
香典返しは「無事に忌明けを迎えました」という報告と感謝の気持ちを込めて贈るものです。縁起を担ぐ品ではなく、落ち着いた印象の実用品や食品を選ぶのが基本です。
現金や金券
現金や商品券、ギフトカードなどの金券類も香典返しには不向きです。金銭を直接返す行為は「香典を返す」という意味になり、せっかくの弔意を打ち消してしまうと受け取る側に感じさせるでしょう。
金額が明確に伝わってしまうのも、現金や金券を避けるべき理由です。「現金や金券なら相手の好きなものを買ってもらえるから」と思うのであれば、相手が自由に選べるカタログギフトを贈る方が、丁寧で失礼のない対応になります。
香典返しのマナー
香典返しは、品物選びだけでなく、贈る際のマナーも大切です。特に、かけ紙の表書きやお礼状の書き方は、弔事ならではの決まりがあります。形式に沿って丁寧に準備することで、相手に失礼のない形で感謝の気持ちを伝えられます。
かけ紙のかけ方、書き方
香典返しには、品物にのし紙ではなく「かけ紙」をかけるのが一般的です。水引は黒白または双銀の結び切りを用い、「一度きりでよい」という意味を持たせます。のし(飾り)は付けません。
表書きは宗教や地域によって異なりますが、仏式では「志」と書くのが一般的です。神式やキリスト教では「偲び草」と書きましょう。水引の下には、送り主である喪主の姓名または家名を記します。
また、かけ紙の掛け方には「内掛け」と「外掛け」があります。郵送する場合は包装の内側にかけ紙をかける「内掛け」を、手渡しの場合は包装の外側からかけ紙をかける「外掛け」を選びましょう。
お礼状の書き方
香典返しには、品物とともにお礼状を添えるのが丁寧です。お礼状には、葬儀の際にいただいた香典や弔問への感謝の気持ち、そして無事に忌明けを迎えたことの報告を簡潔に記します。
文面は、あまり感情的にならず、淡々とした丁寧な表現を心がけます。季節の挨拶や時候の言葉(頭語・結語)や句読点(句点「。」、読点「、」)を入れず、形式に沿って整った文体でまとめるのが望ましいです。
句読点を使わないのは、文章を区切る句読点が「縁が切れること」を連想させるためです。読点(、)の代わりにスペースを用いると、文字が詰まった感じがせず読みやすくなります。
また、忌明け法要を終えた日付を記すことで、弔事が一区切りついたことを伝えられます。
お礼状の例文
このたびはご丁寧なるご厚志を賜り 誠にありがとうございました。
おかげをもちまして〇月〇日に四十九日の法要を滞りなく済ませることができました
つきましては 生前のご厚情に対する感謝のしるしとして 心ばかりの品をお贈りいたします
本来であれば直接お伺いしてご挨拶申し上げるべきところではございますが まずは書中にてお礼申し上げます。
香典返しに関するよくある質問
香典返しは多くの人にとって慣れないことが多く、判断に迷う場面も少なくありません。ここでは、実際によくある3つのケースを取り上げ、それぞれの対応方法を解説します。
香典返しを辞退されたら?
香典返しを辞退された場合は、無理に品物を贈る必要はありません。相手の厚意を尊重し、感謝の気持ちはお礼状で丁寧に伝えましょう。お礼状の中で「ご厚意をありがたく頂戴いたしました」と記し、感謝の気持ちを明確に伝えるとよいでしょう。
もし辞退の意向が曖昧な場合は、相手に気を遣わせない程度の簡素な品を贈るのも一つの方法です。いずれの場合も、「感謝を伝えること」が最も大切です。
会社から香典をもらった場合は?
会社名義で香典をいただいた場合は、個人宛てとは扱いが異なります。「会社名」もしくは「会社名+社長名」で香典をいただいた場合、福利厚生の一環として香典が渡されているため、香典返しをする必要はありません。お礼の手紙や電話も不要です。
ただし、上司や同僚など、個人として香典を包んでくれた場合には、ほかの方と同様に香典返しを渡します。会社全体と個人のどちらからいただいたのかを確認し、適切に対応しましょう。
連名で香典をいただいた場合は?
香典を連名でいただいた場合は、人数に応じてお返しの方法を変えるのが望ましいです。家族や夫婦の連名であれば、人数を考慮した金額の品物を1つ送り、代表者に渡す形でも問題ありません。
一方で、友人2~3名の連名で香典を受け取った場合は、一人ひとりに香典返しをします。1人あたりの香典額を計算し、その3分の1~半額程度の品物を、一人ひとりに返しましょう。
職場やグループなど多数の連名で、1人あたりの金額が少額な場合、あるいは個人名がわからない場合もあるでしょう。このような場合は、皆で分けられるような個包装の菓子やコーヒーなどを、代表者や職場宛てに贈るのがおすすめです。
香典返しはマナーを守って、いただいた金額に応じた品物を贈ろう
香典返しは、故人を偲んで弔意を寄せてくれた方への感謝を形にする大切なものです。相手に失礼のないよう、金額の目安や品物の選び方、渡すタイミングなど、基本的なマナーを押さえておくことが大切です。
地域の風習や宗派によって細かな違いはありますが、最も大切なのは「相手の気持ちに丁寧に応えること」です。半返しを基本としながら、相手との関係性や状況に合わせて柔軟に判断しましょう。
どのような品を選べばよいか迷うときは、専門店や葬儀社の担当者に相談するのもおすすめです。あんしん祭典でも、香典返しの品物選びの相談を承っています。品物やお礼状の手配も可能です。


