相続と贈与の違いをメリットやデメリットとあわせて解説します。相続税・贈与税の仕組みや使い分けのポイントまでわかりやすく紹介します。
相続も贈与も、どちらも財産を他者に引き継ぐ方法です。しかし、その発生時期や課税制度、必要な手続きは大きく異なります。特に税金の違いは、将来の節税や家族のトラブル回避に直結します。そのため、しっかり理解しておくことが重要です。
本記事では、相続と贈与の定義から違い、税制面での仕組み、メリット・デメリットを解説します。
相続と贈与の定義
相続と贈与の違いを理解する前に、まずはそれぞれの基本的な定義を理解していきましょう。
相続とは
相続とは、亡くなった方の財産や権利・義務を、法律で定められた相続人が引き継ぐことです。相続の対象となるのは不動産・預貯金・株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払い金などのマイナスの財産も含まれます。
相続の開始は被相続人の死亡によって自動的に発生します。相続人は遺言があればその内容に従い、遺言がない場合は法定相続分に基づいて遺産を分けます。相続手続きには、戸籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議、相続登記、相続税の申告などがあり、期限や法律上の要件が定められています。
贈与とは
贈与とは、生きている間に自分の財産を他人に無償で譲り渡す契約です。贈与は当事者双方の合意によって成立し、不動産であれば登記、預貯金であれば名義変更などの手続きが必要になります。贈与には、毎年110万円まで非課税となる暦年贈与や、将来の相続財産に組み入れて相続税で精算する相続時精算課税制度など、税制上の特例が存在します。
また、婚姻や教育資金、住宅取得資金の贈与には一定の非課税枠が設けられており、これらを活用することで節税や円滑な財産移転が可能になります。
相続と贈与の主な5つの違い
相続と贈与は、どちらも財産を他人へ移すという点では共通しています。しかし、その発生のタイミングや手続き、税金の仕組みには大きな違いがあります。相続と贈与の主な違いを5つ解説します。
1.発生時期
1つ目の違いは、発生時期です。
相続は被相続人の死亡によって自動的に開始します。本人が望んだかどうかに関わらず、法律上当然に発生するのが相続の特徴です。
それに対して贈与は、生前に当事者同士の合意で行う財産移転です。契約によって成立するため、当人の意思が明確に反映されます。
2.税金
2つ目の違いは、かかる税金です。
相続には相続税、贈与には贈与税がそれぞれ課されます。
相続税には「基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」があるため、一定以下の遺産には課税されません。
贈与税は年間110万円までの基礎控除しかないため、相続に比べると課税されやすい仕組みです。そのため、無計画に贈与をすると高額の贈与税を負担するリスクがあります。
【参照】
3.手続き
3つ目の違いは、必要な手続きです。
相続の場合は、戸籍の収集や相続人の確定、遺言書の有無の確認、遺産分割協議など、複雑な手続きが必要です。不動産がある場合は相続登記、預貯金がある場合は金融機関での手続きも伴います。
それに対して贈与の場合は、贈与契約書を作成し、不動産であれば登記、預金であれば名義変更により成立します。相続よりもシンプルですが、贈与税の申告が必要になるケースが多い点に注意が必要です。
4.財産評価
4つ目の違いは、財産評価です。
相続税では、財産は相続開始時の時価に基づいて評価されます。路線価や固定資産評価額を基準に計算するため、不動産の評価額が市場価格より低くなる場合もあります。
それに対して贈与税の場合、財産は贈与時点の時価で評価されます。相続税よりも高い評価になる場合が多く、結果として税負担が重くなるケースもあります。
【参照】国税庁|財産評価
5.課税対象や控除制度
5つ目の違いは、課税対象や控除制度です。
相続は相続人全員に基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用される一方、贈与は受贈者1人あたり年間110万円の基礎控除しかありません。
ただし、贈与には住宅取得資金や教育資金の非課税制度、相続時精算課税制度などの特例があり、上手に活用すれば節税につながります。
相続と贈与のメリット・デメリット
相続と贈与は、それぞれにメリットとデメリットがあります。節税や財産承継のトラブル防止を考えるうえで、両者の特徴を理解しておくことが重要です。
相続は税負担が軽く済むケースが多い一方、相続人同士の争いに発展しやすいのがデメリットです。贈与は争いを防ぎやすく計画的に財産を移せますが、税負担が重くなりやすい点に注意が必要です。
つまり、税金重視なら相続、円滑な承継や生前の意思反映を重視するなら贈与、と覚えておくと良いでしょう。
相続のメリット・デメリット
まず相続におけるメリットとデメリットを見ていきましょう。
【メリット】
- 基礎控除額が大きいため、多くの場合は相続税がかからない
- 遺言や遺産分割協議によって、公平性を保ちながら財産を分けられる
- 相続人間で協力して手続きを進められるため、贈与よりも税務リスクが少ない
【デメリット】
- 相続開始は本人の死亡後にしかできないため、生前に自由なコントロールが難しい
- 相続人同士の意見が合わないと、遺産分割協議でトラブルに発展する可能性がある
- 不動産や事業承継など大きな財産がある場合、相続税が高額になるリスクがある
贈与のメリット・デメリット
次に、贈与のメリットとデメリットを見ていきましょう。
【メリット】
- 生前に自分の意思で財産を譲渡できるため、相続争いを防ぐ手段になる
- 毎年の暦年贈与や特例制度を活用すれば、計画的な相続税対策が可能
- 教育資金や住宅取得資金など、ライフイベントに応じて必要な支援ができる
【デメリット】
- 相続に比べて基礎控除額が少なく、贈与税の負担が重くなりやすい
- 贈与契約が形式的だと実際には贈与と認められないと税務署から否認されるリスクがある
- 相続時精算課税制度などを安易に利用すると、将来の相続時に逆に税負担が増える可能性がある
相続と贈与は目的に応じて賢く活用しよう
相続と贈与はいずれも財産を移転する手段です。しかし、発生のタイミング・税金・手続きの仕組みに大きな違いがあります。
そのため、将来の財産承継を考える際はどの財産を、誰に、どのタイミングで渡すのが最も適切かの見極めることが大切です。特に不動産や多額の資産がある場合は、相続税と贈与税の両方を比較検討し、専門家のアドバイスを受けながら計画を立てると安心です。
相続と贈与の違いの正しい理解は、節税だけでなく家族の将来の安心につながります。目的に応じて賢く使い分け、円滑な財産承継を実現しましょう。
相続と贈与、どちらの方法で財産を遺すべきか迷う方は、専門家に相談すると安心でしょう。あんしん祭典では、相続や贈与などに詳しえ司法書士をご紹介しています。