終活とは人生の最期に備える取り組みであり、中でも相続準備は遺される家族の安心に直結します。本記事では財産整理や遺言書、生前贈与の基礎から具体的な進め方まで解説。相続への不安を減らしたい方や家族に迷惑をかけたくない方に役立つ内容です。
終活とは、人生の最期に備えて、生前に身の回りや気持ちを整理する取り組みです。その中でも相続準備は、残された家族が安心して生活できるようにするために欠かせないものです。
「相続のことを考えるのはまだ早いのでは?」と感じる方も多いかもしれません。しかし、何も準備をしないままでは、家族に思わぬ負担やトラブルを残してしまうことがあります。
本記事では、終活で取り組みたい相続準備について、基礎知識から具体的な方法までわかりやすく解説します。相続への不安を減らしたい方、家族に迷惑をかけたくないと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
終活における相続準備の重要性
終活の大きな目的のひとつは、残された家族が安心して暮らせるよう備えておくことです。その中でも相続に関する準備は特に重要です。財産の分け方や手続きを何も決めないままにすると、家族の間で意見が食い違い、思わぬトラブルに発展することがあります。
実際に、家庭裁判所で扱われる遺産分割に関する調停や審判の件数は約1万2,000件と高い水準にあり、相続をめぐる争いは誰にでも起こり得る問題だとわかります。特に「相続財産が少ないから大丈夫」と思っていても、不動産の分け方や預金の取り扱いなどで揉めてしまう例は少なくありません。
終活の段階で相続準備を進めておけば、自分の意思を家族にしっかり伝えられ、将来の不安を和らげられます。家族に余計な負担をかけず、感謝の気持ちを形として残すことにもつながります。
相続準備のために知っておきたい基礎知識
相続の準備を進めるうえでは、まず基本的な知識を押さえておくことが欠かせません。エンディングノートと遺言書の違いや、誰が相続人になるのかといった制度の仕組みを理解しておけば、実際の手続きをより安心して進められます。相続準備に取りかかる前に知っておきたい基礎を解説します。
エンディングノートや遺書と、遺言書の違い
エンディングノートや遺書は、自分の思いや希望を家族に伝えるための手段ですが、法的な効力はありません。たとえば「葬儀は家族だけで行ってほしい」「形見分けはこのようにしてほしい」といった希望を残すには有効ですが、その内容が相続の場で強制力を持つわけではありません。
一方で、遺言書は法律に基づいた正式な書面であり、相続において法的な効力を発揮します。たとえば「長男に自宅の不動産を相続させる」と記していれば、その内容に従って遺産分割が行われます。ただし、形式が整っていないと無効になることもあるため、作成方法には注意が必要です。
つまり、エンディングノートや遺書は家族への思いや気持ちを伝えるもの、遺言書は相続の分け方を法的に決めるものという違いがあります。両方をうまく活用することで、家族に思いを伝えつつ、トラブルのない相続を実現できます。
法定相続人と受遺者の違い
相続に関わる人には、大きく分けて「法定相続人」と「受遺者」がいます。法定相続人とは、法律で定められた相続人のことで、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹などが該当します。誰が相続人になるかは法律で決まっており、自分の意思で変えることはできません。
一方、受遺者とは遺言書によって財産を受け取る人のことです。たとえば、法定相続人ではない孫や、長年世話になった友人、寄付先の団体なども、遺言書に記載すれば受遺者として財産を受け取れます。
この違いを理解していないと、「法定相続人以外に財産を残したい」と思っても、実現できないままになってしまいます。誰に、どのように財産を残したいのかを考える際には、法定相続人と受遺者の違いをしっかり意識しておきましょう。
遺留分
遺留分とは、法定相続人のうち一定の人に保障されている「最低限の取り分」のことです。たとえ遺言書で「全財産を特定の人に相続させる」と記されていても、他の相続人が遺留分を主張すれば、その部分は請求できる仕組みになっています。
遺留分を持つのは、配偶者・子ども・直系尊属(両親など)で、兄弟姉妹には認められていません。割合は、法定相続分の2分の1が基本となります。たとえば子どもが2人いる場合、遺言で長男に全財産を相続させると書かれていても、次男は自分の遺留分を請求する権利を持っています。
遺留分を理解しておくと、偏った遺言内容によるトラブルを防げます。誰にどれだけ財産を残すかを考える際には、このルールを前提に計画することが大切です。
遺留分については、こちらの記事でより詳しく解説しています。
遺言書と遺留分を徹底解説!最低限の取り分と請求方法・対策まで完全ガイド
相続準備でまず取り組みたいこと
相続の基礎知識を押さえたら、次は具体的な準備に取りかかりましょう。相続は「いつかやればいい」と思って先延ばしにしがちですが、元気なうちに始めておくのが大切です。
ここでは、終活の中で優先的に進めたい相続準備を紹介します。財産の整理や遺言書の作成、生前贈与の活用などを進めていけば、将来のトラブルを防ぎながら自分の思いを確実に残せます。
財産の棚卸しをする
相続準備の第一歩は、自分の財産を正確に把握することです。預貯金や不動産、株式や投資信託といった金融資産はもちろん、貴金属や骨董品などの動産も整理しておきましょう。見落としがちな借金やローンといった負の財産も相続対象になるため、忘れずに記録することが大切です。
財産を一覧表にまとめた「財産目録」を作っておくと、相続人が確認しやすくなります。財産の全体像が見えることで、遺言書を作成するときや分割方法を検討するときにも役立ちます。自分自身にとっても「どんな財産を持っているのか」が明確になり、老後の生活設計にもつながります。
遺言書を作成する
遺言書は、自分の意思を法的に反映させるための最も有効な手段です。遺言書がない場合は法律に従って財産が分けられますが、その過程で相続人同士の意見が食い違い、トラブルに発展することも少なくありません。遺言書を用意しておけば、誰にどの財産を相続させるかを明確にでき、家族の負担を大きく減らせます。
遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、書き方を誤ると無効になる恐れがあります。公正証書遺言は公証人が関与するため確実性が高く、相続手続きもスムーズに進みます。秘密証書遺言は内容を知られずに保管できますが、実務上は利用が少ないのが現状です。
自分に合った遺言書の形式を選び、正しい手順で作成することが相続準備の大切なステップになります。
それぞれの遺言書について詳しく知りたい方、どの遺言書を選べば良いのかわからない方は、こちらの記事をお読みください。
遺言書にはどんな種類がある?自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いと選び方
生前贈与を検討する
相続が発生する前に財産を移転する「生前贈与」は、相続準備の有効な方法のひとつです。あらかじめ財産を渡しておくことで、相続時の財産総額を減らせるため、相続税の負担を抑えられる可能性があります。また、早い段階で財産を譲り渡せば、受け取った人が教育費や住宅購入などの資金に活用できるメリットもあります。
代表的な方法に「暦年贈与」があり、年間110万円までであれば贈与税がかからずに財産を移せます。子や孫への教育資金・結婚資金に活用できる非課税制度も用意されています。これは、結婚や子育てのための資金を一括で贈与する場合、1,000万円まで贈与税が非課税になる制度です。
ただし、生前贈与は税制の仕組みや手続きが複雑なため、安易に始めると意図しない課税が発生する場合もあります。検討する際は税理士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
相続人や分割方法を考える
相続準備では、誰が相続人になるのかを確認し、財産をどのように分けるのかを考えておかなければなりません。法定相続人は法律で定められており、配偶者や子ども、両親、兄弟姉妹などが該当します。自分が想定していた人が必ずしも相続人になるとは限らないため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
特に不動産は分割が難しい財産の代表です。自宅を売却して現金で分ける方法や、相続人のひとりが取得して他の人には代償金を支払う方法、共有名義にして利用する方法など、いくつかの分け方があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、家族と話し合って最適な方法を検討する必要があります。
自分の希望や考えを整理し、家族と共有しておけば、将来の遺産分割協議がスムーズに進むでしょう。
専門家に相談する
相続準備を自分だけで進めるのは難しいです。財産の種類や家族の状況によって最適な方法が変わるため、専門家に相談することで安心して進められます。
弁護士は、相続トラブルや遺産分割協議の代理など、争いごとに強い専門家です。司法書士は不動産の名義変更や相続登記をサポートしてくれます。税理士は相続税の申告や節税対策の相談に適しています。このように、それぞれの専門分野によって役割が異なるため、相談内容に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。
専門家の力を借りれば、法律的にも税務的にも正しい手続きができ、家族に残す負担を最小限にできます。
相続とあわせて考えたい終活のポイント
相続準備は大切ですが、それだけに集中して、他の終活をおろそかにしてはいけません。葬儀や保険、介護など、老後の生活や家族への配慮も含めて総合的に考えることで、より安心できる備えができます。ここでは、相続準備とあわせて意識しておきたいポイントを紹介します。
エンディングノートを活用する
エンディングノートは、家族への思いや希望を自由に書き残せるノートです。法的効力はありませんが、葬儀の希望や医療・介護に関する意思、財産や交友関係の情報などを整理して伝えられます。
相続の観点では、「遺言書の有無」「財産の概要」「誰に相談してほしいか」といった情報を記録しておくと、家族が迷わず行動できるようになります。形式が決まっていないため、自分の言葉で気軽に残せるのもエンディングノートの大きなメリットです。
遺言書とあわせて用意しておくことで、法的にも気持ちの面でも、自分の死後に家族をサポートできます。
保険や葬儀費用とのバランスを考える
相続準備を進めるうえで忘れてはならないのが、保険や葬儀費用とのバランスです。いくら相続財産があっても、すぐに使える現金が不足していると、葬儀や当面の生活費の支払いに困るかもしれません。
生命保険は受取人を指定することで、相続財産とは別に速やかに支払われるため、葬儀費用や相続税の納税資金として活用しやすいです。また、葬儀費用をあらかじめ見積もり、必要に応じて積み立てておけば、家族の負担を軽減できます。
相続の分け方を考えると同時に、実際に家族が必要とする資金をどう確保するかを意識して準備することが大切です。
葬儀費用の積み立てには、互助会も活用できます。互助会とは何か、どんな人におすすめなのかは、こちらの記事で解説しています。
終活も相続準備も家族への思いやり
終活における相続準備は、残された家族が安心して暮らせるようにするための大切な取り組みです。財産を整理し、遺言書を作り、生前贈与や保険を活用することで、トラブルを防ぎながら自分の意思を確実に伝えられます。
また、エンディングノートを通じて気持ちを残したり、家族に伝えるタイミングを工夫したりすることも、準備の一部として欠かせません。相続の知識を身につけ、計画的に備えることが、家族への思いやりにつながります。
とはいえ、相続準備は大変です。まずはエンディングノートを作ったり、葬儀について考えてみたり、もっと気軽にできることから始めたい方も多いでしょう。
そこでおすすめなのが、LINEで気軽に終活をはじめられる「終活トータルサポート」です。エンディングノートのプレゼントをはじめ、さまざまな終活コンテンツを無料でご利用いただけます。相続や遺言に関するアドバイスももらえます。
葬儀社であるあんしん祭典が提供するサービスなので、葬儀の相談にも、プロの目線からアドバイスができます。ネットで調べてもわからない「お葬式にかかるリアルな費用」を教えてもらえるのは、他の終活サービスと比べても大きなメリットです。
30秒で簡単に登録できるので、興味のある方は、まずはお気軽にお試しください。


