扱いのマナー、そして宗派や地域による違いなど、法要を前に知っておきたい情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、塔婆に関する疑問や不安が一気に解消できるでしょう。
法事で塔婆が必要だと聞いた際に「塔婆ってどんな意味がある?」「塔婆はいつ立てるのが正解?」「塔婆料の相場や目安はいくら?」と、初めての方は戸惑うのではないでしょうか。
塔婆を立てる目的は「追善供養」であり、故人の成仏を願って現世から善行や功徳を積んで故人を供養をすることです。
この記事では、塔婆(卒塔婆)の役割や費用相場、包む金額や渡すタイミングおよび渡し方などの正しいマナーなど、知っておくと安心できる情報を詳しくご紹介します。
塔婆・塔婆供養とは何か
塔婆の読み方や由来、意味、または塔婆を立てる目的や期間などについて解説します。
塔婆とは?読み方や意味
塔婆の読み方は「とうば」で、その由来は仏教において故人やご先祖様の供養をするために立てる木の板が起源とされます。「卒塔婆(そとば)」という表記がありこちらが正式名称とする見解もありますが、現代では塔婆とほぼ同じ意味として認識されています。
塔婆という言葉は、サンスクリット語の「ストゥーパ」に由来しているというのが通説です。木の板のシルエットはお釈迦様の遺骨を納めた仏塔の形状を簡略化したもので、供養の対象として立てるようになったのが塔婆のはじまりです。
塔婆を立てる目的
塔婆を立てる主な目的は「追善供養」にあります。追善供養とは、故人の成仏を願い、現世から善行や功徳を積んで供養をすることです。
死後の世界での故人の処遇は善行をどれだけ積んだかによります。そして塔婆を立てることは善行とされており、故人の死後であっても遺族が塔婆を立てて善行を積めば、その善行が故人へ及ぶといわれます。
地域や寺院の習慣によっては、四十九日や各種法要の際に必ず塔婆を立てるように勧められることがあります。
塔婆を立てる期間
塔婆を立てるタイミングや何回忌まで立てるかは、家族や地域・宗派の習慣によって異なります。一般的には以下の法要や行事の際に供養として立てる方が多いです。
納骨式 | 納骨のタイミングで故人の霊を供養し、追善の気持ちを表すために立てることがあります。 |
年忌法要 | 一周忌や三回忌、七回忌などの法要にあわせて立てるのが一般的です。最近では、三回忌以降は省略する場合もありますが、地域性や菩提寺の方針などによって異なります。 |
お彼岸(春・秋) | 彼岸の中日や彼岸法要などに合わせ、追善供養として塔婆を立てるケースがあります。 |
お盆の施餓鬼会(せがきえ)法要 | お盆期間中に行われる施餓鬼法要で、家族の供養の一環として塔婆を立てることも多いです。 |
「何回忌まで塔婆を立てるか」は明確な決まりはなく、寺院や地域の慣習を尊重して家族で相談し決定するのがよいでしょう。
塔婆に書いてあること
塔婆には一般的に以下のような内容が書かれています。
戒名(法名)や年忌 | 供養対象となる故人の戒名や法要の回忌・名称など |
命日 | 故人が亡くなった年月日 |
宗派の題目や経文 | 南無阿弥陀仏や南無妙法蓮華経など(日蓮宗や法華経系の宗教) |
梵字(ぼんじ) | 関連する菩薩や仏を象徴する梵字 |
塔婆を立てた年月日 | 塔婆を建てた日付(法要を実施した年月日) |
施主名 | 塔婆を建てた人(施主)の名前 |
これらの文字は、寺院で僧侶や専門業者が書くのが一般的ですが、記載を間違わないためにも申し込みの際に「誰の供養か」「何回忌か」「施主名」を正確で確実に伝えましょう。
塔婆料(塔婆代)やお布施、金額目安について
塔婆料やお布施とそれらの金額の目安について解説します。
塔婆料の意味
塔婆料とは、塔婆を立てる際に寺院へ納めるお金です。その意味は、塔婆の作成にかかる費用や供養をお願いするお布施が含まれたものとして扱われることも多いです。
お布施とは、あくまで僧侶の読経や供養に関して感謝の「気持ち」を表す謝礼なので、明確な料金表が存在しない場合がほとんどでしょう。
塔婆料の目安
塔婆料の金額は寺院や地域によってもまちまちですが、1本あたり3,000~5,000円程度が一般的です。ただし、都市部の有名寺院などの場合はさらに高いことがあるため、あらかじめ菩提寺や寺院に相談して相場を確認してから包むとよいでしょう。
塔婆料の調べ方
塔婆料をどの程度包んで渡すべきか悩む方は多いはずですが、わからない場合は自己判断で適当な金額を包むのではなく、まずは寺院に確認することをお勧めします。たとえば、法要の前や申し込み時に「塔婆料はいくら納めればよいでしょうか?」と尋ねれば、丁寧に教えてくれます。
また、納骨式といった一度に複数の塔婆を立てる儀式や世帯ごとに塔婆を申し込む場合などでは、まとめて納めるのか一世帯ずつ分けて納めるのかなど寺院の流儀に合わせるとよいでしょう。
塔婆料を取り扱う際の作法
塔婆料を納める際の表書きや封筒、渡すタイミングや渡し方について解説します。
塔婆料は白無地の封筒で渡す
塔婆料を包む際は、不祝儀用の金封ではなく白無地の封筒に入れるのが一般的です。市販の「御布施」などあらかじめ印字された封筒でも問題ありませんが、ひととおりの表書きのマナーや書き方は覚えておきましょう。
色がついたものや郵便番号欄がプリントされたもの、長辺側を横開きする洋封筒などは避けましょう。
塔婆料の表書きの書き方
塔婆料の表書きの書き方は以下のとおりです。
表書き | 「卒塔婆料」「卒塔婆代」「御塔婆料」などと書きます。地域によって異なるため、菩提寺に確認すると安心です。 |
中袋(内袋) | 中袋を使う場合は、表面に金額を、裏面に住所と氏名を小さめに、通常の墨の濃さの筆で書きます。 |
裏書(外袋がある場合) | 施主の住所・氏名・金額を記載しますが、金額は書き換えられない複雑な文字(金五千円→金伍阡圓)で書きます。中袋を使わない場合は、封筒の裏面に施主名と金額を書きます。 |
塔婆料は袱紗(ふくさ)に包む
正式には、袱紗に包んで持参するのがマナーとされています。塔婆料の封筒を袱紗に包む理由は、金封や封筒を汚したり折り目をつけたりしないなど、相手に対して丁寧な心配りを示すためです。特に格式を重んじる寺院で法要を行う場合は袱紗を使いましょう。
塔婆料を渡すタイミング
塔婆料は、法要がはじまる前もしくは終わった後のいずれかのタイミングで渡すのが一般的です。寺院によっては法要前の受付時に受け取ることが決まっている場合もあるため、事前に手順を確認しておくとスムーズです。
塔婆の本数
塔婆を立てる本数に関して明確な決まりがないのが実情です。亡くなった方一人につき1本立てるのが一般的ではありますが、法要に合わせて施主や親族がそれぞれ1本ずつ立てるケースなどもあります。
寺院や地域の習慣、また菩提寺の住職とも相談しつつ決めるのがよいでしょう。
法事に際して塔婆について知っておくべきこと
塔婆について知っておくべきこととして、以下のことがあります。
塔婆の入手方法
塔婆は、法要の1~2週間前など期間に余裕のある時期に申し込んでおくのが基本です。特にお盆やお彼岸の時期は寺院も塔婆の作成依頼が集中します。そのシーズンの受注時期を定めている寺院もあるため、時期は早めに確認して申し込みを済ませておきましょう。
塔婆を挿す塔婆立て
お墓の背面や横に「塔婆立て」という金具や受け口がある場合は、そちらに挿して立てます。塔婆のサイズが法事ごとにまちまちにならないように、あらかじめ塔婆立てのサイズや設置状況を確認しておきましょう。
塔婆の処分方法
古くなった塔婆や法要後に不要になった塔婆の扱いに困る方も多いでしょう。
寺院で引き取ってもらうのが一般的ですが、お焚き上げをして供養してくれる寺院もあります。
もしもお墓に立てたままで長期間放置しているような場合は、朽ちて壊れて倒れたり景観が悪くなったりする恐れがあるので注意しましょう。
塔婆が要らない場合
・浄土真宗では塔婆は必要ない
・塔婆を不要とする地域(九州)もある
浄土真宗の教義上は塔婆を立てる習慣がありません。また、地域によっては(特に九州地方など)塔婆を立てる文化があまり浸透していないうケースもあります。
もし菩提寺が浄土真宗もしくは地域の慣習として塔婆供養を行わないような場合は、用意する必要はありません。
ただし、親族や親戚の意向も考慮する必要があるため、たとえ浄土真宗であっても他の宗派の親族が塔婆供養を望むような場合には、親族間で話し合って合点を見つけるのが望ましいでしょう。
早めの確認と相談で不安解消!正しい塔婆供養への備えを万全に
塔婆は、故人の追善供養を表す大切な存在です。いつ立てるのか、何回忌まで行うのか、費用はどのくらい包めばいいのか、処分はどうするのかといった疑問は、地域や寺院、そして宗派によってさまざまな違いがあります。
ポイントは早めの確認と相談です。法要の前に菩提寺へ連絡して、塔婆料の相場や申し込みの期限、納め方など事前の確認が重要です。
宗派の教義や地域の慣習に配慮しつつ、故人やご先祖様をしっかり供養できるように、塔婆を立てて善行を行いましょう。