形式不備を防ぎ、相続トラブルを避けたい方のために、遺言書の作成を司法書士に依頼するメリット・費用・流れをわかりやすく解説します。

遺言書は、自分の意思を確実に残し、家族の将来を守るための重要な書類です。しかし法律上の要件は複雑で、形式の不備や記載ミスがあれば無効になることもあります。そこで頼りになるのが、登記や相続手続きに精通した司法書士です。

本記事では、司法書士に依頼するメリット・費用の目安・手続きの流れ・選び方を詳しく解説し、失敗のない遺言書作成をサポートします。

司法書士が遺言書に関わる役割とは？

遺言書は相続人や遺産の分け方を明確にし、将来の争いを防ぐための大切な文書です。

しかし、法律で定められた形式要件を満たしていなければ無効となる可能性があり、正確かつ確実な作成が求められます。ここで頼りになるのが、登記や相続手続きに精通した司法書士です。

司法書士は登記の専門家です。さらに、相続・遺言に関する幅広いサポートもできます。遺言書作成に関して、司法書士は以下のような業務を担います。

遺言書の原案作成

司法書士は被相続人の意向をヒアリングし、相続法の要件に沿った原案の作成ができます。相続人や遺留分（法定相続人に最低限保証された遺産の取得分）への配慮、将来の争いを避けるための分割方法などのアドバイスもしてもらえます。

形式チェックと内容精査

自筆証書遺言や公正証書遺言の要件に沿っているか、記載ミスや不備がないかを確認します。特に自筆証書の場合、日付や署名の形式、添付書類など細かなミスが致命的になるため、専門家のチェックが重要です。

相続登記への対応

遺言書が執行された後の不動産相続登記も、司法書士が一括して対応できます。遺言書の作成から相続時に必要となる手続きまでワンストップで依頼できるのは大きなメリットといえるでしょう。

公正証書遺言や法務局保管制度のサポート

公証役場との事前打ち合わせ、証人手配、必要書類の収集などを代行します。自筆証書保管制度を利用する場合も、書類作成や申請手続きのサポートが可能です。

司法書士と他の士業との違い

遺言書作成は司法書士だけでなく、弁護士、行政書士、税理士にも依頼できます。しかし、それぞれの仕業は得意とする分野が異なります。司法書士、弁護士、行政書士、税理士がそれぞれどのような得意分野を持っているのか見ていきましょう。

司法書士

司法書士は、遺言書作成から相続登記まで一貫して対応できるのが特徴です。争いが想定されないケースや、登記・書類作成・形式確認をまとめて任せたい場合に、最も適した専門家といえるでしょう。

弁護士

弁護士は遺産分割協議や相続争いなど、紛争対応に強い特徴があります。相続人同士で揉めている場合や訴訟が想定されるケースでは、弁護士が適任です。

司法書士について詳しく知りたい方はこちら

遺言書は弁護士に作成依頼すると安心！メリットや費用相場まとめ

行政書士

行政書士は書類作成に特化していて、遺言書の文案作成が可能です。

ただし、登記や紛争対応はできません。比較的費用は安めですが、業務範囲は限定的です。

税理士

税理士は相続税の申告や節税対策に強いのが特徴です。遺言書作成そのものよりも、財産評価や税務面での助言を中心にサポートしてもらいましょう。

遺言書作成を司法書士に依頼する4つのメリット

遺言書は、自分の死後に財産をどのように分けるかを指定できる大切な書面です。しかし、法律上の形式や内容に不備があると無効になるリスクがあります。

そこで登記や相続手続きに精通した司法書士に依頼することで、安心感と効率性を得られます。遺言書の作成を司法書士に依頼することで得られるメリットを、4つお伝えします。

形式や要件の不備を防げる

自筆証書遺言や公正証書遺言には、民法で定められた厳格な要件があります。日付の書き方、署名、押印、遺留分への配慮など、細かなミスでも遺言書が無効になる恐れがあります。司法書士に依頼するとこのような不備を防げます。

必要書類の取得や手続きを代行してもらえる

遺言書作成には、戸籍や住民票、不動産登記簿などの取得が必要です。司法書士はこれらの書類収集や申請を代理できるため、自分で役所や法務局に出向く手間が省けます。

登記や公証役場との調整まで対応してもらえる

公正証書遺言を作成する場合、公証人との事前打ち合わせや証人手配、必要書類の確認・送付が必要です。司法書士にはこれらをまとめて依頼でき、相続発生後の不動産相続登記までスムーズに進められます。

弁護士より安価に対応してもらえるケースが多い

同じ遺言書作成業務でも、弁護士より司法書士の方が費用を抑えられるケースがほとんどです。

遺言書作成を司法書士に依頼する3つのデメリット

遺言書の作成を司法書士に依頼するとさまざまなメリットがある一方で、コストや依頼範囲には注意が必要です。遺言書の作成を司法書士に依頼することで起こりうる、3つのデメリットをお伝えします。

費用かかる

遺言書は、自分で作成すれば無料で済みます。しかし、司法書士に依頼すると報酬が発生します。一般的に、自筆証書遺言の原案作成で4万～6万円、公正証書遺言の原案作成で5万～8万円ほどが目安とされています。

争いが想定される場合は不向き

相続人同士の争いが予想される場合は、司法書士は不向きです。ほかにも、遺留分侵害額請求などの法的トラブルへの対応は司法書士の管轄外です。このように、争いごとが想定される場合には、弁護士への依頼が適しています。

税務面の対応はできない

相続税の計算や節税対策は税理士の領域であり、司法書士では対応できません。相続税が発生する可能性がある場合は、税理士と連携する必要があります。

司法書士に遺言書作成を依頼する流れ

司法書士に遺言書の作成を依頼すれば、相談から完成までスムーズに進められるよう段階ごとにサポートしてもらえます。一般的にどのような流れで司法書士への依頼手続きを進めるのか、解説します。

1．相談・ヒアリング

まずは司法書士事務所にて相談・ヒアリングをしてもらいます。

相談段階では、遺言書作成の目的、財産の内容、相続人の構成、遺贈の希望などを詳しくヒアリングします。争いの有無や相続税が発生する可能性も確認し、最適な遺言形式（自筆証書・公正証書・秘密証書）を提案してもらえます。

2．必要書類の収集

どのような内容をどの形式で作成するかが決まったら、遺言書作成に必要な書類を収集します。遺言書作成に必要な主な書類は、以下のとおりです。

• 戸籍謄本
• 住民票
• 財産の一覧（不動産登記簿、固定資産評価証明書、預貯金残高証明など）
• 相続人や受遺者の住所・氏名がわかる資料

これらの書類取得は司法書士に代行してもらえます。

3．遺言書原案の作成

次に、ヒアリング内容と収集した資料をもとに、司法書士が遺言書の原案を作成します。ここでは、法律的に有効となる形式の確認はもちろん、遺留分や将来のトラブル防止を考慮した分割方法を盛り込んでもらいます。

4．内容の確認および修正

原案ができたら依頼者に提示し、内容を細かく確認します。修正や加筆が必要な場合は、この段階で調整します。

「専門家が作った内容に、あまり口出ししない方が良いかな」と思ってしまう方もいるかもしれません。しかし、遺言書は大切な遺志を遺すための文書です。納得いくまで相談しましょう。

5．公正証書遺言の場合：公証役場との調整

公正証書遺言を選ぶ場合、司法書士が公証人との事前打ち合わせをします。証人の手配、必要書類の送付、当日のスケジュール調整までを代行するため、依頼者は当日に公証役場へ行くだけで手続きが完了します。

6．自筆証書遺言の場合：保管制度の利用支援

自筆証書遺言を選ぶ場合、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用すると紛失や改ざんのリスクを減らせます。司法書士に依頼している場合は、書類の形式確認や申請手続きをサポートしてもらえます。

7．遺言書完成・保管

すべての手続きが終わると、遺言書が完成します。保管方法についても司法書士がアドバイスし、将来の相続発生時にスムーズに執行できる体制を整えます。

司法書士を選ぶ5つのポイント

遺言書の作成を司法書士に依頼する際は、誰に頼むかで手続きのスムーズさや安心感が大きく変わります。ここでは、依頼先選びで押さえておきたいポイントを5つ解説します。

1．遺言・相続案件の経験が豊富か

司法書士には登記業務を中心に幅広い分野があります。そのため、遺言や相続に特化した実務経験が豊富な事務所を選べるかが重要です。実績が多い司法書士は、遺留分や相続人同士の関係性、財産の性質に応じたアドバイスでき、将来的なトラブル防止につながります。

あんしん祭典では相続関連の実績が豊富で、的確なアドバイスができる司法書士を紹介できます。相続に詳しい司法書士を探している方は、ぜひ一度ご相談ください。

2．他の士業との連携体制があるか

遺言書作成には相続税の計算や争いへの対応など、司法書士の業務範囲を超える問題が出る場合があります。税理士や弁護士とスムーズに連携できる司法書士なら、税務や紛争対応までワンストップでサポートしてもらえます。

3．費用体系が明確か

報酬が不明確だと、後から追加費用が発生してトラブルになる場合があります。相談前に報酬額・実費・公証役場費用などの見積もりを明確に提示してくれる事務所を選びましょう。

4．コミュニケーションの取りやすさ

遺言書は、依頼者の人生設計や家族への想いを反映する重要な書類です。丁寧に話を聞き、専門用語をかみ砕いて説明してくれる司法書士が相手なら、安心して相談を進められます。

5．アフターフォローの有無

遺言書は作成後に内容の変更が必要なケースがあります。また、相続開始後の執行や登記が必要になる場合もあります。作成だけでなく、その後のサポートや更新にも対応してくれる司法書士を選ぶと安心です。

司法書士なら登記関連まで一括して遺言書作成を依頼できる

遺言書は、自分の意思を形にし、家族の将来を守るための重要な書類です。しかし、法律上の形式や内容に不備があれば無効となり、かえって相続トラブルを招く恐れもあります。

司法書士に依頼すれば、形式チェックや原案作成、必要書類の収集、公正証書の手配、保管制度の活用まで一括してサポートしてもらえます。争いが想定されないケースや相続登記を含めて依頼したい場合には特に適しており、費用面でも弁護士より安価な傾向にあります。

依頼先を選ぶ際は、遺言・相続の経験、他士業との連携体制、費用の透明性、相談しやすさ、アフターフォローの有無をチェックしましょう。しかし、自身で司法書士を見つけるのは難しいでしょう。あんしん祭典であれば、相続の関連の実績を多数持っている司法書士を紹介してもらえます。選定基準に迷うことがある方は安心でしょう。