生前整理のやり方をわかりやすく解説。始めるタイミングや進め方、必要な準備、注意点をまとめました。残された家族の負担を減らすためのポイントも紹介します。
「いつかはやらなければ」と思いながらも、なかなか手を付けられない生前整理。人生の棚卸として身の回りを整理することは、残される家族の負担を軽くし、安心して老後を迎えるためにも重要です。とはいえ、何から始めればよいのか、具体的なやり方がわからない方も多いでしょう。
本記事では、生前整理を始めるベストなタイミング、具体的な進め方、必要な準備、注意点まで詳しく解説します。実際に取り組む際のステップを知り、安心して一歩を踏み出しましょう。
生前整理とは?
生前整理とは、自分が元気なうちに持ち物や財産、資産に関する情報を整理し、必要なものと不要なものを分けておくことです。人生の終盤に備えて行う前向きな準備であり、身の回りの断捨離だけでなく、財産や相続に関する情報整理も含まれます。
一般的な片付けや断捨離との違いは、自分がいなくなった後の家族の負担を考慮するという点にあります。つまり、生前整理は単なる片付けではなく、将来のトラブル防止や家族への思いやりにつながる重要な作業なのです。
遺品整理との違い
生前整理とよく混同されやすいのが、遺品整理です。遺品整理は、本人が亡くなった後に家族が持ち物や財産を整理する作業を指します。
一方、生前整理は自分自身が主体となり、まだ元気なうちにするものです。
- 遺品整理:残された家族が行う。遺品の量や種類によっては大きな負担になる。
- 生前整理:本人が元気なうちに主体的に行う。どの品を残すかを自分で決められるため、家族間のトラブルも防ぎやすい。
このように、生前整理は自分の意思で選び取れる点が最大のメリットです。
生前整理をする目的
生前整理には大きく分けて、3つの目的があります。
1. 家族の負担軽減
人が亡くなった後、遺品整理には膨大な時間と労力がかかります。特に、衣類や家具、思い出の品などの整理(処分)は、家族にとって精神的にも大きな負担になります。生前整理をしておけば、残された家族は片付けに追われず、故人を偲ぶ時間を大切にできます。
2. 自分の人生の棚卸し
生前整理は、自分の持ち物や財産を振り返るきっかけになります。過去の思い出を整理し、本当に必要な物と手放してよい物を見極めることで、これからの生活をより快適にできるでしょう。結果として心の整理にもつながり、老後の暮らしをすっきりとした環境で過ごせるようになります。
3. 安心した老後を迎えるため
生前整理を進めておくことで、財産や重要書類の所在が明確になり、いざというときにスムーズに対応できます。また、遺言書やエンディングノートを作成することで、自分の希望を家族に伝えやすくなり、相続トラブルの予防にもつながります。安心して老後を過ごすために、生前整理は欠かせない準備といえるでしょう。
生前整理を始める3つのタイミング
生前整理はいつ始めても良く、タイミングは人それぞれです。タイミングとして最も多いのは60~70代ですが、それはなぜなのか、ほかのタイミングで始めるケースにはどのような理由があるのか、解説します。
最も多いのは60代〜70代
生前整理を始める人が最も多いのは、定年退職を迎える60〜70代といわれています。仕事や子育てから解放され時間的な余裕ができるため、人生を振り返りながら持ち物や財産を整理するのに適している時期です。
また、体力や判断力がまだしっかりしている年代でもあり、「何を残すか、何を処分するか」を自分の意思で決められる点も大きな理由です。
体力・気力があるうちに始めるとメリットがある
生前整理は想像以上に体力や気力を使う作業です。大量の荷物を片付けたり、思い出の品を一つひとつ見直したりするのは時間も労力もかかります。
そのため、体が動くうち、判断力がしっかりしているうちに始めることが重要です。早めに取り組むことで、無理なく少しずつ進められ、結果的に負担を軽減できます。「まだ早いかな」と思う段階で始めるくらいがちょうどよいタイミングといえるでしょう。
病気や介護がきっかけになるケースも
実際には、病気の診断や入院、親の介護を経験したことをきっかけに、生前整理を意識し始める方も少なくありません。突然の体調不良や予期せぬ出来事が起こると、「今のうちに整理しておこう」と考えるようになるのでしょう。
ただし、そのようなタイミングで一気に整理を進めようとすると、体力的・精神的に大きな負担となることもあります。やはり、余裕のある時期から少しずつ進めるのが理想的です。
生前整理を進める5つのステップ
生前整理は「何から手をつければいいのかわからない」と感じやすい作業です。そこで、順を追って進められるように、5つのステップに沿ってやり方を解説します。
ステップ1:持ち物の全体像を把握する
まずは、どのくらいのモノや財産があるのかを把握しましょう。
- 自宅の各部屋を整理し、持ち物を書き出す
- 預貯金や不動産、保険、証券などの金融資産を整理する
- 契約書や年金手帳、通帳などの重要書類の所在を確認する
この作業は、人生の棚卸でもあります。さらに、エンディングノートを活用すると、資産状況や希望を書き残すことができ、家族にとっても安心です。
ステップ2:不用品を整理・処分する
次に、不要なモノを手放していきます。判断に迷うときは、以下の基準が役立ちます。
- 1年以上使っていないもの → 処分の候補
- 思い出の品 → 写真を撮ってデータで残す
- 価値があるもの → リサイクルショップやフリマアプリで売却
また、大型家具や家電は自治体や回収業者に依頼するのがスムーズです。体力的に難しい場合は、生前整理業者や不用品回収サービスの利用も検討しましょう。
ステップ3:大切なモノを選び残す
不用品を処分したら、残したいモノを改めて選びます。
- アルバムや手紙など、家族にとって思い出になるもの
- 趣味の道具や大切にしてきたコレクション
- デジタルデータやSNSアカウントなどのログイン情報
特にデジタル遺品は見落とされがちです。パスワードやIDを紙に控えて、エンディングノートにまとめておくと安心です。
ここまで解説してきた「整理のコツ」は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
ステップ4:財産・相続に関する整理
生前整理の重要なポイントが、財産や相続に関する準備です。
- 預貯金口座の一覧を作成する
- 不動産の名義や登記内容を確認する
- 加入している保険や年金の種類を把握する
- 借入やローンの有無を明確にしておく
さらに、財産分与の希望がある場合には遺言書の作成を検討しましょう。自筆証書遺言、公正証書遺言などがありますが、法的効力を確実にするには専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
遺言書について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
遺言書にはどんな種類がある?自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いと選び方
ステップ5:家族への情報共有
整理した内容は、必ず家族や信頼できる人に共有しましょう。自分だけが把握していても、いざというときに情報が伝わらなければ意味がありません。
- エンディングノートを残す
- 重要書類の保管場所を伝える
- 遺言書を作成した場合は保管先を明示する
「まだ先のこと」と思っていても、家族への思いやりとして早めの共有が大切です。
生前整理をスムーズに進める4つのコツ
生前整理を始めたからといって、すぐにやり切れるものではありません。スムーズに進めるためにはいくつかのコツを押さえておくことが重要です。生前整理をスムーズに進める4つのコツをお伝えしていきます。
無理せず少しずつ進める
生前整理を始める際に意識したいのは、一度にすべてを片付けようとしないことです。大量の物を一気に整理しようとすると、体力的にも精神的にも大きな負担となり、途中で挫折してしまうでしょう。
そこでおすすめなのが、作業を細かく分けて進める方法です。たとえば「今日はこの引き出しだけ」「今週は洋服だけ」のように小さいゴールを設定することで、達成感を得ながら無理なく続けられます。
家族や専門業者など、第三者の手を借りる
生前整理は一人で抱え込む必要はありません。家族と一緒に進めれば、思い出を振り返りながら作業でき、心の整理にもつながります。さらに、大型家具や家電など体力的に難しいものは、専門の生前整理業者や不用品回収サービスに依頼するのも有効です。
財産や遺言書といった法的な整理は、自分だけで判断せず、司法書士や行政書士などの専門家に相談すると安心して進められるでしょう。
「親に生前整理をしてほしいけど、どうやって切り出そう」と悩んでいる方、生前整理をする本人ではなく子どもの立場でこの記事を読んでいる方は、こちらもチェックしてみてください。
親の終活で子どもが手伝える6つのことと、嫌がられない切り出し方
思い出の品は写真に残す
アルバムや手紙、趣味のコレクションなど、捨てるには惜しいけれど保管場所に困る物も少なくありません。そんなときは、写真に撮ってデータとして残すのがおすすめです。デジタル化すれば物理的なスペースは減らせますし、家族と共有することで思い出を残せます。
一度に完璧を目指さない
生前整理は一度やって終わりではなく、人生の変化に合わせて何度でもできます。誕生日や年末など、節目のタイミングに整理し直す習慣をつければ、常に身の回りをすっきり整えられるでしょう。
生前整理で注意すべき4つのポイント
生前整理は、自分らしい人生の締めくくりを準備する大切な作業です。しかし、進め方を誤るとトラブルや後悔につながることもあります。ここでは特に注意したい4つのポイントを押さえておきましょう。
家族に相談せず勝手に処分しない
自分の持ち物だからといって、すべてを独断で処分してしまうのは避けましょう。思い出の品や家族との共有財産を勝手に手放すと、後々トラブルの原因になりかねません。処分に迷うものがあれば、一度家族に相談し、気持ちを共有しながら進めると良いでしょう。
高額な契約や詐欺に注意する
近年は、生前整理サービスをうたう業者が増えています。しかし、中には高額な費用を請求したり、不当な契約を結ばせたりする悪質なケースも報告されています。業者に依頼する場合は、複数社から見積もりを取り、契約内容をしっかり確認しましょう。不安があれば、消費生活センターなど公的な相談窓口に確認することも有効です。
遺言書作成時の法的ルールを守る
財産整理の一環として遺言書を作成する際には、法的なルールに従う必要があります。たとえば、自筆証書遺言には全文を自筆で書く必要があり、日付や署名、押印が欠けていると無効になることもあります。
また、相続人の遺留分を侵害するような内容にすると、争いの火種になることもあります。確実に有効な遺言書を残すためには、司法書士や公証人など専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
プライバシー情報の取り扱いに気をつける
パソコンやスマートフォンに残っているデジタルデータやSNSアカウントも、見落とされがちなポイントです。写真やメール、IDやパスワードといったプライベートな情報は、適切に整理しておかないと家族が困る原因になります。不要なデータは削除し、必要な情報はエンディングノートなどにまとめて管理しましょう。
生前整理を始めることは、自分と家族への未来準備
生前整理は、自分の持ち物や財産を整理するだけでなく、残された家族の負担を軽減し、自分自身が安心して老後を迎えるための大切な準備です。「まだ早い」と思うくらいの段階から、少しずつ始めることで、無理なくスムーズに進められます。不要なものを手放し、本当に大切なものを残す作業は、自分の人生を見つめ直す機会にもなります。
さらに、エンディングノートや遺言書を活用して情報を整理しておけば、家族に想いをしっかりと伝えられるでしょう。
生前整理や終活は、決して後ろ向きな作業ではありません。むしろ、これからの暮らしをより快適にし、未来の家族への思いやりを形にできます。少しずつでもかまわないので、思い立った日から始めてみてはいかがでしょうか。
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